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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
179/433

第179話 蓮遥祭、決勝トーナメント

予選が終わったあと、光田高校はホテルの食堂で部員全員揃って食事を取り、それぞれがそれぞれの自由時間を楽しんだ。

試合出場メンバーと栞代は、次の試合に向けて、いろいろと話し合っていた。

栞代は「弓道は、相手の作戦を基本的には考えず、いつもの自分を出すことだけ考えるから、一見楽なようだけど、その分、キツイことありますね」

と今更ながら弓道の怖さを感じているようだった。


保護者も同じホテルに宿泊はしていたが、大会期間中ということで接触は遠慮していたが、杏子の祖父だけは、どこかで会えないかとホテルをうろついては祖母に連れ戻されていた。


準々決勝:光田高校 vs 神屋杜高校

初戦の相手、神屋杜高校。数字上の実力差はわずかだったが、光田高校には明確な戦う理由があった。

「瑠月と一緒に立つ」――三年生全員で的前に立つ、これが今大会の光田の目標だった。

それが光田高校の願いだった。メンバーは予定通り、三年生トリオ。瑠月、沙月、冴子。

瑠月は全試合出場、あとの二つの枠を、3人でまわす。


近的で全国4位の実績のある瑠月は、遠的に舞台を変えても、丁寧な練習の結果を見事に発揮する。3本の的中。


第二射手・沙月

本格的な練習量が不足しているのは否めなかった。それでも、1本の的中。

「まあ、こんなもんかな」沙月が苦笑いを浮かべる。


第三射手・冴子


冴子が射位に立つ。部長としての責任感が射に表れる。沙月が外したあとはカバーできたが、沙月の的中後に続くことは出来なかった。それでも、2本的中。


結果:光田高校6本 vs 神屋杜高校4本

決勝の舞台はやはり予選とは違う。緊張のため、的中数は減らしたものの、なんとか次へと駒を進めることができた。


光田高校の勝利が決まった瞬間、観客席からも安堵の声が漏れる。これで最悪でも3位は確定。初出場で3位以上は、見事な結果だ。


瑠月の表情には、次戦への静かな闘志が宿っていた。


準決勝:光田高校 vs 鳴弦館高校


そして迎えた準決勝。相手は予選18本的中で2位通過の鳴弦館高校。高校総体では、下馬評を覆し、まさに全員で掴み取った勝利だった。競射を三周りし、持てる力の全てをつぎ込んだ。勝てた最大の要因は、残念だが、篠宮かぐやの極端な不調である。

対して光田高校はエースの杏子を欠いたが、全員の結束力で勝った、まさに光田高校のベストゲームといえるものだった。


「今度は杏子も一緒。全力で戦える」

冴子の言葉に、チーム全体の気持ちが引き締まった。

相手の篠宮かぐやも、どうやら絶好調のようだ。


試合序盤から一進一退。光田高校は、総体の流れを大事にし、冴子を落ちに、瑠月を大前に、杏子を中。順番も今回は毎試合変更したが、順番も含め、光田高校も全力で勝利を掴みに行った。


互いに勝利へ向う気迫の中、最終4射めで、光田高校は見事に全員的中、横皆中を出して鳴弦館高校に追いつく。

互いに9本ずつの的中。

競射へ。


「競射になった...」


高校総体に続いての競射決着。互いに緊張感と高い技術を発揮する。

一周め、二周めは、なんと互いに皆中をだし、一歩も譲らない。

だが、三周め。どうしても勝ちたい、という執念の差だったのか。

瑠月と沙月が外して、的中は杏子の一本。


対して鳴弦館高校は、主将の鷹匠、そして篠宮が決めた。


鳴弦館高校が、高校総体の雪辱を果たした。


試合後


「負けた...」

杏子の目に涙が浮かんだ。しかし、それは悔しさだけではなかった。


「でも、今回は全力で戦えた」

瑠月が杏子の肩に手を置く。


「確かに篠宮かぐやが別人だったが、それでも、どこか相手の気迫に負けていたのかもしれない」

冴子も清々しい表情だった。


「総体のときは、篠宮かぐやの不調で勝たせてもらった感じだったけど、今回は本当にがっぷり四つで戦えたし、凄かったよ」

沙月が振り返る。


「鳴弦館、ほんとに強かったなあ。篠宮かぐや、すごかった。完全に復調してた」

栞代が感嘆の声を上げる。


光田高校は3位が確定。悔しさはあったが、満足感もまた大きかった。


通りすがりの篠宮かぐやが、杏子に

「やっぱり遠的でもすごいな。決勝も見ていてくれよ。打倒麗霞だっ」

と力強く宣言した。


決勝:鳳城高校 vs 鳴弦館高校


光田高校のメンバーは、観客席から決勝戦を見守った。

ここ10年の女子弓道界で中心となっている二校。特に蓮遥祭では圧巻で、鳳城高校が参加してから、今年で4年連続で決勝対決となっている。


決勝まで進み、互いに最後の力を振り絞る。


結果

鳳城高校11本 vs 鳴弦館高校10本


鳳城高校の優勝が決まった。4連覇だった。


「やっぱり鳳城高校は強い...好調だった鳴弦館でさえ、届かなかった。あと1本の差だったけど、そこが本当に強い。」

杏子がつぶやく。


「的場アナスタシアと圓城花乃、そして雲類鷲麗霞。伝説の『鳳城の四季』が抜けても、この強さ。どれだけ選手層が厚いんだ。しかも、三年で引退するのは圓城花乃だけだからな」

冴子が呟く。


「鳴弦館も惜しかったけどね。かぐやちゃん、最後まで全部当ててたのに」

瑠月が言う。


「栞代、この宿題は任せたからな」

冴子の言葉に、栞代が頷いた。


「でも、これで終わりなんだね」

沙月が呟くと、杏子がはっとしたように三人を見つめた。


「すぐに新人戦が始まる。気を抜いてるヒマはないな」

栞代が話の方向を変えた。

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