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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
131/433

第131話 団体戦決勝

控室に戻った両校は、互いの健闘を讃えあっていた。


「地区予選の時とは、全く別のチームになってるやん」


前田霞が栞代に呆れたように話しかける。

「まさか、あの日の練習試合で立ち直ったの?」


「残念ながらそうなんだ。あの試合でまず一つふっきれてさ」


その後に、チームに見事に気持ちを伝えた瑠月の話をした。


「そうだったのね。地区予選でメンバーに居なくて、練習試合の時に見事過ぎて。びびってたんだけど、今日居なくて勝ったって思ったんだけどなあ」

前田がにやりと笑って続けた。

「決勝頑張ってよ。紀央(地区名)のレベルの高さを見せてやって。全国でもねっ。」


杏子と日比野は、互いに互いの部員に囲まれ、握手を交わしていた。


準決勝で川嶋女子に勝利し、海浜中央と決勝で戦う。

まるで去年の再現た。

去年の決勝も競射になった。ギリギリの戦いだった。


川嶋女子に勝ってほっとしていたら、絶対にやられることになる。


冴子はここで安心してはいけないと、部員たちに話していた。

次は決勝だが、まだ、何もなしとげていない。

部員たちもそれは分かっていた。しかも、去年はつぐみも居た。

今年は瑠月さんも居ない。

川嶋女子高戦で披露はピークに達していたが、それは相手も同じこと。

目標はまだ先にある。


会場で試合を見ていた真映が、にこにこして杏子に話しかけく。

「いや、おじいさん、めっちゃ凄かったよ。めっちゃ喜んでた」

「あれが、杏子の強さの秘密さ」

栞代が代わりに笑って応える。

「でも、ちょっと羨ましい」つばめがぼつりと言った時、準決勝のもう一つの試合を見ていた拓哉コーチが戻ってきた。


「コーチ、海中(海浜中央)は、どうでした? やはり乗ってますか?」

コーチは一つも表情を変えず、いつものクールな面持ちで伝えた。


「海中は1本差で破れた。決勝の相手は、橘南だ」

「えっ」冴子が驚きの声をあげた。


もちろん橘南も強豪高だ。だが、海浜中央は昨年度光田高校に破れた時、川嶋女子に劣らず衝撃を受け、今年への気持ちが強かったことは、いろんなところから聞いていた。


地区予選もチェックしてきたし、杏子をなんとか動揺させようと作戦も考えているという噂も聞いていた。

拓哉コーチに話しても、そこは全く相手にせず、いつも通り、だけ意識しろと、いつも通りの態度だったけれど。


冴子はチームに向かい、

「もちろん、橘南が強くて実力があったから、海中に勝てた。今年の皆中は相当打倒光田に燃えているという話だった。その海中を破って決勝に登ってきたんだ。よりいっそう、集中が必要だぞ」

全員の眼がそれに応えていた。

「杏子、大丈夫?」

冴子が声をかけると、「できることを、やるべきことをやりたいと思います」と、いつもの穏やかな調子で応えた。

「部長、杏子なら大丈夫ですよ。なんせ、神経通ってないもん。去年はつぐみはいったい何言ってんだろうと思ってたけど、つぐみの気持ちが痛いほど分かってきましたよ」

「そうね」冴子が応えると、全員が微笑んだ。「紬は、どう思う?」栞代がお決まりの言葉を投げかけると、

「それは私の課題ではありません」と、お決まりの言葉で締めくくられた。

全員が安心し、笑い声が漏れた。


緊張と緩和。行ける。冴子は確信した。


決勝戦は、去年は出場して無かった橘南。それは、今年にかけて実力を相当あげてきたということだ。そこには、相当の練習量があったことだろう。それは自信となってぶつかってくるはずだ。


去年、光田高校の快進撃は、ノーマークだったこと、そして知らないからこその力がでていた。橘南は決して侮れる相手ではない。いや、そんな相手など、存在しないのだ。


心配性の杏子の祖父は、安心することは無かったが、海浜中央高が負けたことに、イヤな予感がしていた。強豪高を破って勢いに乗っている。


光田高校のメンバーは、全員勝利を信じていたが、それが油断に繋がることは無かった。

一順目に全員的中させた。初の決勝で緊張していた橘南高は、3人が外し、リードを奪う。

そこからも安定していた光田高校。

開き直ったからといってあたるようになるほど、弓道は甘い競技ではないが、練習に裏打ちされた技術は、しっかりと発揮され、二順目からは、安定した結果を出した。


それでも、最初の差が縮まることは無かった。


15-12。光田高校が勝利。だが、一射めのリードで、余裕のある展開だったからか、最後の四射めを当てたのは、杏子一人だった。


試合が終わり、喜ぶメンバーに、拓哉コーチは、クールな表情を崩さず、まだまだ気持ちが足りない、と全員に伝え、喜ぶ姿は見せなかった。


目標は? と尋ねられた冴子は「全国優勝です」とはっきりと応えた。


こんなことでは、とても届かないな。的中数のことじゃない。それこそ、戦う姿勢だ。


だがコーチの姿が見えなくなると、瑠月から祝福の言葉をかけられ、試合会場の様子を伝えた。杏子の祖父が大変だった、という話しをすると、部員たちの雰囲気は一変した。


「ま、油断してる余裕はないってことだよ。でも、まあ、今日はちょっとぐらい喜んでいいだろ。」

冴子がそう言ってまとめた。


早く着替えておじいちゃんとおばあちゃんのところに行かないと。

「早く着替えておじいちゃんとおばあちゃんのところに行かないと。」

あれ?

「杏子、そう思ってるだろ?」栞代が満面の笑みで話しかけてきた。「今心の声が聞こえたわ」

「ま、着替えてみんなで行こう。な、紬、そう思うだろ?」


「そ、それは私の課題」

一瞬考えて続けた。

「・・・・・ですね。」



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