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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
127/180

第127話 部内試合

県大会を前にした部内試合。


迷っていたつばめも、参加することになった。

参加メンバーは、冴子、沙月、栞代、杏子、紬、あかね、まゆ、つばめ、真映。この9人で、5人の団体戦のメンバーと、1人の予備メンバーを決める。


まず、立ち順の抽選が行われた。今回は、3人ずつ。


あかね、冴子、紬。

栞代、まゆ、真映。

つばめ、沙月、杏子。


この3組で行われることになった。


まず、あかね、冴子、紬。


緊張が伝わってくる。


あかね ××〇×

冴子  〇×〇×

紬   ×〇〇×


そして次、


栞代 〇〇×〇

まゆ ××××

真映 ××××


つばめ ×〇〇×

沙月  〇×〇×

杏子  〇〇〇〇


結果

4本(皆中) 杏子

3本 栞代

2本 冴子、紬、つばめ、沙月

1本 あかね

0本 まゆ、真映


選考のための試合で数多く矢を引くことによって、順当に実力が計れるだろう。

または、通常の練習の結果からコーチが決定する方法もある。

その方法ももちろん取り入れることは可能だ。マネージャーのまゆ、一華は全ての練習の結果を記録している。

どの方式も間違いではないし、実力を重視して選ぶということが、結果を出す一番の方法でもあるだろう。


しかし。


拓哉コーチの信念として、試合形式の結果で選ぶ、ことを決めていた。

徹底した実力主義。

冷酷なようだが、これが一番平等だと信じていた。

つまり、そこにはコーチや顧問の恣意的な目が入ることがないのだ。

人間は絶対に客観的にはなれない。選抜、という形式を取れば、そこには必ず贔屓が入る。意識しなくても。これは出したい人間を選抜する、ということだけではなく、逆の方向に働くこともある。

コーチはそのことを経験上、身に染みて分かっていた。



あかねは1本的中。

最初の順番といしこともあり、緊張感も相当だったに違いない。


その結果が出た瞬間、胸の奥に重いものが落ちた。

コーチの信念もあるが、光田高校は戦術的な交代はほぼ行われない。

地区予選では予備メンバーだった自分が、今回はひとつ順位を落とした。

特に地区予選では、一発勝負なので、予備メンバーが出場することはまずない。

それは県大会でも変わらないが、少ない可能性だからこそ、予備メンバーとしては1番手の位置が必要だった。


「私……」

そう呟き、続く言葉は、必死に飲み込んだ。


試合後、まゆがそっと隣に座った。

「頑張ったね、あかね」

その言葉に、あかねは視線を伏せた。

「……頑張っただけじゃ、あかんねん」

「でも、頑張らなかったら、悔しいとも思えなかったよ」

まゆはそう言って、あかねの肩に手を置いた。

その温もりが、少しだけ胸を軽くした。

「まゆ」

「はい?」

「杏子たちは、必ず県大会を突破してくれる」

「うん」

「インターハイには、絶対に出るぞ」

「うん」


高校総体の前には、また出場者を決める部内試合が行われる。

その時点での最強チームを作る。

その瞬間には、今日のこの結果は、既に過去の結果だ。


あかねは、絶対にこの悔しさは忘れない。そう誓った。




真映は0本。

試合になると、なぜか当たらない。

練習では当たるのに、試合になると手が震える。

「……私、もしかして本番に弱いんかな」

誰に言うでもなく呟く。

でも、その小さな声を一華が拾った。

「大丈夫、真映。真映がきちんと努力しているの、わたし知ってるよ。」

「え?」

そう言って、下を向く真映に、一華、練習ノートを見せた。

「ほら、練習ではこんなに当たってる。だから、自信を持って」

「・・・・」真映は黙って一華を見つめた。

「じゃ、今度杏子さんに、コツ教えて貰おうよっ」

そう言って一華は真映の背中を叩いた。

「よし。そうだな。私はやればできる子だ」

日本代表レベルのこの切り換えの早さは、絶対に武器になる。

一華は自信を持ってそう思った。


全ての矢が放たれ、結果が発表された。


つばめは、地区予選で既に個人戦への出場資格を得ている。コーチと話し合った結果、団体戦は予備メンバーとして登録することになった。県大会の団体戦の予選が、そのまま個人戦の予選を兼ねる。

つばめが出場すれば、地区予選で獲得したその出場資格が上書きされ、県大会での団体予選の結果が優先されてしまう。もしも成績を落とせば、個人戦への出場資格を無くしてしまう危険性があった。

その危険は引き受ける必要はない、というのがコーチの意見で、つばめもそれを受け入れた。


団体戦メンバー:杏子、栞代、冴子、紬、沙月。予備メンバー:つばめ。あかね。


そして、立ち順がコーチから発表された。地区予選とは一部入れ換えた。


立ち順:栞代、沙月、冴子、紬、杏子。


それぞれが、これからは、それぞれの位置で矢を重ねる。

それぞれの呼吸、クセなどを掴み、団体戦ならではの流れを習得していく。

新たなチームとして、県大会へ向かうために。


今回も残念ながら、的中はならなかったまゆの元へ、瑠月がそっと近づいて、なにか話していた。


そしてコーチに、

私にも、弓を引かせてください、

と申し出た。


年齢が上であることが有利に働く、という連盟の考え方だが、それは決して間違っては居なかった。

だが、瑠月のように、家庭の事情で仕方なく2年入学が遅れた場合、同様の規約「高校生活3年まで」「同一学年では1回のみ」という制限はクリアしているだけに、無念の思いがあった。


拓哉コーチも、高校を通じて正式に連盟に特例を申し出ていたが、この日までに認められるという連絡は無かった。


悔しい思いを胸に、瑠月が的前に立つ。


一射。二射。三射。そして、最後の一射。


すべてを綺麗に的にまとめた。


皆中。


確かに年齢が上ということで有利な面もあったかもしれない。


しかし、瑠月の努力を知っている弓道部の全員が、悔しい気持ちを押し殺し、精一杯の拍手を贈った。


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