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ぱみゅ子だよ~っ 弓道部編  作者: takashi
2年生
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第107話 皇楓

瑠月の決意


新年度が始まってしばらく経った光田高校弓道部。新入生の練習が徐々に形になっていく中で、皇楓は、瑠月の目に特別に映っていた。

彼女は部内唯一の初心者。全く弓道を経験したことがない楓が、一からその世界に飛び込む姿に、瑠月はかつて自分が初心者だった頃を少しだけ思い出していた。


「瑠月さん、本当に皇さんの面倒を見るの?」

冴子が声をかけたのは、練習後の片付けが終わった頃だった。


「うん。冴子がつきっきりで教えるのもいいけど、他にもやることがあるでしょ?部長だから、やることもいっぱいあるし。私が見るほうが効率的かなって。」


瑠月はそう言いながら、少し目を伏せた。冴子には自分の本当の気持ちが分かっているだろうと思いつつ、それをあまり表に出したくなかった。


(今年の公式戦にはもう出られない。だからといって、ただ道場にいるだけでは、みんなの邪魔になるかもしれない…。)


瑠月は、自分が今後どう弓道部に関わるべきか悩んでいた。昨年の全国大会で個人4位に入った実績がある彼女には、部員たちから絶大な信頼が寄せられている。それでも、公式戦に出られない自分が練習場所を占有するのは、どこか申し訳ない気がしていたのだ。


瑠月の引退話と部員たちの反応


数日前、瑠月は思い切って、みんなに自分の気持ちを相談した。


「私、練習場所のこともあるし、そろそろ引退しようかと思うの。

勉強もしようかなって思うし」


その言葉を聞いた瞬間、道場内は一瞬静まり返り、次の瞬間には冴子が猛然と反対の声を上げた。


「何言ってるの、瑠月さん!そんなのダメに決まってるでしょ!

ほんっきで勉強したいの?」


「でも、私がいることで場所が足りなくなるかもしれないし、公式戦にも出られないから――」


「そんなこと関係ない!」

冴子がまっすぐ瑠月を見つめ、声を張り上げた。

「引退するなら、私と沙月と一緒の時にしてよ。同じ学年なんだから、一緒に過ごすのが当たり前でしょ!ずっと一緒にやってきたんだから!」


沙月もすぐに「いったい何言い出すんだよ、瑠月さんは。意味分かんないわよ」と続けた。


その後も杏子や栞代、さらには1年生までが「瑠月さんには居て欲しい」と口々に言い、結局、瑠月の引退案は即座に却下された。


(みんな、本当に私のことを大事に思ってくれてるんだな…。)

その時、瑠月は胸の奥に温かいものが広がるのを感じた。


「勉強教えてもらわないと、わたし、赤点取っちゃうっっ」

あかねが、必死で叫んでいた。


皇楓への指導を決意


それでも、どこか遠慮の気持ちを拭えない瑠月は、自分にできる役割を探していた。そんな中で、楓の姿が自然と目に留まった。


彼女が一生懸命に袴を着る練習をし、弓を持つ手がぎこちなく震えているのを見たとき、瑠月はふと気づいた。


(初心者の楓ちゃんには、私がついてあげたほうがいい。経験者のつばめや真映と一緒だと、どうしても気後れするはず。そこはちょっと気を配ってあげないと。これなら、みんなに迷惑をかけずに役に立てるかもしれないし。)


瑠月は、冴子に自分から申し出て、楓の指導役を引き受けた。


1年生たちの反応


瑠月が1年生全員の指導を担うことになったのは、自然な流れだった。楓に付き添う姿を見ていたつばめや真映が「私たちも瑠月さんに教わりたいです」と言い出したのだ。


「だって、瑠月さん、全国4位の人でしょ?そんな人に教えてもらえるなんて、贅沢すぎる!」

真映が目を輝かせて言うと、つばめも頷いた。


「瑠月さんって、教え方も優しくて分かりやすいんです。」


1年生たちが自分に寄せる信頼に、瑠月は少しだけ照れくさそうに微笑んだ。


楓の心情


一方、楓も瑠月に深い感謝を抱いていた。


「瑠月さん、本当に優しいなあ。」楓は心の中でそう思いながら、瑠月の指導を受けるたびに少しずつ弓道の基本を覚えていった。

最初は何をするにも震えてばかりだった楓も、瑠月の「ゆっくりでいいよ」という言葉に安心して練習できるようになった。


(私みたいな初心者にも、こんなに丁寧に教えてくれるなんて…。絶対に上手くなりたい!)


楓は瑠月の指導を受けるたびにそう強く思うのだった。


新たな役割


瑠月は1年生の指導を通じて、自分の役割を見つけていった。


(公式戦には出られないけど、私にもできることがある。みんなの成長を見守るのも、弓道部の一員として大事なことだよね。)


それに、コーチからも言われたけど、基礎練習を見ることは、自分のためにもなった。


人の射型を注意して見ることは、本当に勉強になる。

杏子にずっとわたしの射型のチェックをお願いしていて、申し訳ない気持ちもあったけど、これも大事な練習だったんだ。


目標がないと思っていたわたしに、コーチはまた、目標をくれた。段位だ。参段を目指せと。これは、高校生にとっては、かなりハードルの高い目標らしい。そこを目指せ、と。




その日の練習後、楓が小さく「ありがとうございました」と頭を下げると、瑠月は優しく微笑んだ。


「明日も一緒に頑張ろうね。」


こうして瑠月は新入生たちにとって頼れる存在となっていった。


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