異世界から来た(自称)美少女
ラノベチックにしたら、前回と雰囲気まるっと変わっちゃったけど、ギャグシーンはこんなノリで行こうと思います。
あの謎の少女との激闘から数週間。俺、ユーリは、精鋭部隊の新たな隊長に任命された。あの日、タイチョはなんとか一命を取り留めたが、もう二度と剣を振るうことはできない体になってしまった。
「お前だけが頼りだ、あの日以来魔族どもの侵攻はさらに激しくなっている」
病院のベッドの上で、タイチョは俺の手を握る。
「分かっています、出来る限り早く部隊を再編成し、そして奴を……」
俺は、タイチョ元指揮官とあの日散っていた仲間たちに誓う。それだけが、今の生きる理由だった。
部隊の再編成のため、各地を回り、士官学校や冒険者ギルドなどにも顔を出していたある日、奇妙な知らせが届いた。
「異世界から転生してきたという少女を捕らえた」
なんだそれは、怪しいにも程がある。だが、何か引っかかるものを感じた俺は、その少女が捕らえられているという牢へ向かった。
薄暗い牢獄の中で、少女は怯えた様子で縮こまっていた。見たこともない珍妙な服装に身を包み、肩までかかる黒髪をなびかせた、可憐な少女。だが、どこか奇妙な雰囲気を漂わせている。
「あの、ここから出して下さい! 出してくれたらちょっとサービスします! あ、エッチなのはだめです!」
少女は俺の姿に気が付くと、懇願するように訴えた。
その情けない声とわけのわからない交換条件に、何も光るものは感じなかった。どうやら俺の勘違いだったようだ。
「なぜそんなことをせねばならん……それに、お前にそんなことをされても何の魅力も感じない」
そして、俺は冷たく言い放ち、踵を返そうとした。しかしその時だった。少女の言葉が俺の足を止める。
「さ、さっきのは冗談です! 本当は私、この世界を救いに来たんです! あの女の子のことも知っています!」
俺は驚き、少女の方を振り返った。
「あの化け物を……知っているのか?」
「はい、彼女を倒せるのは、異世界から来た私だけなんです!」
少女の言葉は、あまりにも突拍子もないものだった。だが、藁にもすがる思いの俺は、わずかな可能性に賭けることにした。
翌朝、俺は、彼女を家族として受け入れ、何かあれば全責任を負うという条件で少女を釈放してもらった。
「助けてくれてありがとうございます! 私の名前はリリアです。これからよろしくね、ユーリお兄ちゃん♡」
リリアと名乗った少女は、無邪気な笑顔を見せた。
「お兄ちゃんなんて呼ぶな、気持ちわるい」
俺は、吐き捨てるように呟いた。
すると、リリアはショックを受けた表情で固まる。
「え? このどこから見ても美少女の私にお兄ちゃんって呼ばれて気持ち悪いって……それはないわー。お兄ちゃん大事なものが付いてないんじゃないの?」
「は?」
俺が凄むと、リリアは「ヒッ……」と、軽く悲鳴を上げ、その口を閉じて大人しくなる。
「はぁ……」
この少女が本当に世界を救う鍵となるのか。半信半疑ながらも、やはりリリアに特別なものを感じるという直感を信じる。
俺たちは、牢獄を後にし、街へと歩みを進めた。