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落ち着いた空気

碧黎は、維月と天黎が話しているのを聞きながら、自分は蒼を訪ねた。

よく考えたら十六夜が、自分の不調を気取って蒼をあの空間から引っ張り戻してこの方、碧黎自身は蒼と話していない。

蒼が会合から居間へと戻ったのを気取っていたので、碧黎は蒼を訪ねて居間へと足を踏み入れた。

蒼は、驚いた顔をしたが、頭を下げた。

「碧黎様。」

碧黎は、会釈した。

「蒼。もう、折り合いがついたようだの。我がそれどころではなく、放置してしもうてすまなんだな。十六夜が気取ってくれて良かったことよ。」

蒼は、頷いた。

「はい。よく考えたら、オレ華鈴が死んだ時に悟ったのにって思って。不死になったんだから、みんなを見送らなきゃいけないのに。わがままでした。」

碧黎は、頷いて椅子に座った。

「良い子よ。もう記憶を消さねばならぬかと案じておったが、己で立ち直ったの。また少し命が成長したようよ。主はきちんと学んでおる。主なりにの。」

蒼は、苦笑した。

「他の月の眷属と比べたらまだまだですけど。でも、碧黎様はもう大丈夫ですか?維月と一緒に居なくて。」

碧黎は、頷いた。

「もう大丈夫よ。結局、陽蘭も我であり、己の半分を失ったゆえの衝撃であったようで。今は問題ない。また十六夜からも、話はあるだろうて。詳しくは今は我から言わぬ。」

己の半分…?

蒼は思ったが、頷いた。

「…十六夜から聞いておきます。」と、視線を宙に向けた。「…あれ。珍しい、天黎様が出てきてる。維月となんか話してますね。感情がどうの話してる。」

碧黎は、頷いた。

「その通りよ。我も見ておる。天黎は、どうやら感情があるように皆を真似て演じておっただけで、実際には何も感じておらぬと言い出してな。維月が案じて、天黎の求めに応じて感情の…レクチャー?というものをすると申しておった。月の宮に戻っておるうちにな。」

蒼は、驚いた顔をした。

「え、最近感情表現豊かだって思ってたのは、全部演技だったんですか?!」

碧黎は、頷いた。

「そうなのだ。それで余計に孤独を感じて、焦っておったようで。維月は見過ごせなんだようよ。我が見ておるゆえ、無理はさせぬつもりよ。主は案じることはない。」

蒼は、頷いた。

「天媛と命を繋ぐのが早いとは思いますけどね。だって、天媛は理解しているでしょう。でも、月の眷属にとって、それは重いことですし、やりませんよね。」

碧黎は、息をついた。

「そうだの。意識がそれを特別なことだと認識しておるゆえ、どうしても簡単には考えられぬ。とはいえ、最終的にはそれが一番ぞ。十六夜が申すに、他の命相手ではいざ知らず、対であると命を繋いでもなんの感覚もなく、とりあえず元に戻ったという心地になるようぞ。まあ、そこは十六夜に聞け。」

蒼は、ますます驚いた顔をした。

「ええ?!十六夜は維月と命を繋いだんですか?!それって…碧黎様は良いんですか?」

碧黎は、苦笑した。

「良いも悪いも、結局それが一番自然なことであるゆえ。我が案じたような艶めかしい感覚などなく、あやつらはそのままで完全体と感じるだけで、だからお互いに愛着が増すとかないようよ。なのでこと、あやつらに関しては、我は特に何も思わぬよ。」

これは、十六夜にしっかり聴いておかねばならない。

蒼は、思った。

そこへ、杏奈の侍女がやって来て、頭を下げた。

「王。杏奈様が一緒にお茶でも、と仰っておいでですが。」

あれだけ面倒がっていた蒼は、あっさり侍女に頷いた。

「じゃあ、これへ。」それを聞いて碧黎が眉を上げると、去って行く侍女を目で追いながら、蒼は碧黎に言った。「…生きている間ぐらいは、きちんと向き合おうと思って。夜は…勘弁して欲しいかもですけど。」

碧黎は、微笑んで頷いた。

「良い心掛けぞ。」と、立ち上がった。「では、我は去ぬ。しっかり生きるが良い。」

碧黎は、スッと消えて行った。

蒼は、新たな心地でそれを見送ったのだった。


天黎は、維月を連れて自分の対へと向かい、そこの居間で維月と並んで座って、話していた。

「それで、目の色だの。」天黎は、言った。「今はどうか?」

維月は、頷いた。

「はい。今は青色でございますわ。つまりは、落ち着いていらして、特に強く何かを感じていらっしゃるわけではないようです。」

天黎は、頷いた。

「…我とて、全く何も感じておらぬとは思うておらぬ。ただ、その時浮かんだもやもやとした何かが、いったい何なのかを教えてくれる者が居らぬだけ。もちろん、あちらの空間でこちらを眺めているだけの時は、もっと何も浮かばなかったがの。それでも、時に同じようにもやもやしておった時はある。ゆえに、感情というものが無いわけではないと思うのだが…。」

維月は、頷いた。

多分、何事にもあまり動じないのは確かだが、時に何かを感じているのは確かなようだ。

それを、感情とは認識しておらず、単にもやもやと表現してしまっているので分かっていない。

維月は、問うた。

「ちなみに天黎様は、もやもやが浮かぶとどうされていましたか?こちらでもあちらでも。」

天黎は、答えた。

「…心地の良いものではないし、飲まれたら目が霞む気がしておるゆえ、乱れそうなもやもやは凪ぐように収めておる。一度、それを収めず暴走した時、何と申すか視界が限定的になり、聴こえるものもわんわんと煩く頭に入って来ず、極端な行動に出てしまい、天媛にもたしなめられた。我も後で後悔した。ゆえにそれから飲まれぬようにしておる。」

…それ、感情よね。

維月は思った。

「…それは感情ですわね。いつのことですか?」

天黎は答える。

「こちらに出て来るきっかけになった事件よ。主を黄泉へ強制的に向かわせようとしたあの時ぞ。あれよりこれらへ、出て来るきっかけになったろう?」

覚えている。

維月は、頷いた。

あの時、維月を中心にいざこざが起こり、碧黎ですら狂ってしまうと天黎が黄泉へ維月を引き摺り込もうとしたのだ。

結局、我に返ってそれはなくなったが、あの時は大変だった。

「あれは…憤り、ですわね。天黎様は怒っていらしたのです。怒りに飲まれて回りの言葉も耳に入らなかったのでしょう。ですが、我に返られましたでしょう?」

天黎は、少し考えた。

「…確かに。炎嘉の声が我の心に刺さったのだ。あまりにも的を射ていて、ぐうの音も出ないことに我に返った。あれが、憤りか。つまりは、怒りということだの。」

維月は、頷いた。

「はい。怒りには飲まれたら面倒な事しかありませぬので、天黎様のご判断は間違ってはおられませぬ。とはいえ、他の感情も、つまりは怒りではないものまで押さえてしまわれておるのではないでしょうか。なので、いつまで経っても感情を学べぬのですわ。他の感情も、味わってみぬことには、分かるものも分かりませぬ。困りましたわね…どう致しましょうか。全部抑えずに出してしもうて、その中に怒りがあると、天黎様はお力がお有りになるだけに大変なことになりそうですわ。」

天黎は、首を傾げた。

「そうだの、怒りのことは、あの時の感覚であるゆえなんとのう分かる。なのでそれを選んで抑えることは出来そうぞ。しかし違う色の怒りであったら、知らずに飲まれて面倒が起こるやも。我の力を唯一打ち消すのは、天媛の力であるゆえ、その時はあやつに頼むよりないか。」

天媛頼みか…。

維月は、不安はあったがそれしかないような気がして来た。

なので、頷いた。

「…ならば、それで。」と、天黎に頷きかけた。「天媛様に、先にお頼みしておきましょう。そうしたら、見ておいてくださるかと思います。」

天黎は、維月の手を握って頷いた。

「ならばそれで。」

するとそこに、声が割り込んだ。

「…無駄なことですわ。」

え、と維月が声の方を振り返ると、そこには落ち着いた見た目になった、聡子が立っていた。

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