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片割れの意味

夕方、やっと分離した時には、もうかなりの時間が経っていた。

…本当なら離れたくない。

それが、二人の気持ちだった。

何しろ、元々一つの命なのだ。

それがそれぞれに分かれて、それぞれが人格を持っただけなのだと悟ってしまった。

だからこそ、十六夜は維月の気持ちにより共感し、真っ先に理解しようとする。

それは、しごく当然のことだったのだ。

元々が一つなので、命を繋いだからとお互いに情愛のような、体を交わすような感覚はない。

とりあえず、やっと元に戻ったという、安心感と安定感だけがあった。

他の命と繋いだ時とは、そこが違った。

恐らく、そういう感覚は体の方で補う形なのではないかと維月も十六夜も思った。

二人は、今初めて命を繋いでいたのに、なのでそんな情交の後の気恥ずかしさとか、そんなものは全くない状態で、話し合った。

「…十六夜、対ってそういうことだったのよ。」維月は、堰を切ったように言った。「元々一つだったのに、二つに分かれた命だったの。だから、天媛様はあんなにハッキリと、私と十六夜が対で、お父様とは対ではないと言い切られたのだわ。私達、一つの命から分かれてできていたのよ。」

十六夜は、頷いた。

「命を繋ぐって、ああいう感覚かって構えてたのに、他と全然違った。他はアレをしてるような感覚だったのに、お前とはそんなの全くなくて、ただ元に戻ったって安心するっていうか、安定するっていうか、そんな感覚でさ。知らなかった…そりゃ愛してる愛してない関係なく具合悪くなるわ。だって、半分失うんだもんよ。」

維月は、何度も頷く。

「ほんとに。お父様をもっと支えて差し上げないとと思ったわ。元々一つだった命が、永遠に失われて戻ることが無くなってしまったのよ。天黎様と天媛様が、お母様を最後まで残そうと悩んでおられたのも、やっと理由が分かった感じ。」

二人は、頷き合った。

それが片割れであり、同じ体を共有する命ということなのだ。

そもそもが、月の表と裏など、ヒントが盛りだくさんだったのに、今まで気付かなかったのが不思議なぐらいだった。

維月は、息をついた。

「対って、そんな簡単なことでは無かったのね。私、結構安易に維心様も対かもとか思ってたけど、元々の発祥の仕方が違うわけでしょう。生まれてからどうにかなるものではないのよ。維心様との絆も…だから、対という言葉を使っていたけど、そうではないんだわ。敢えて言うなら、運命上の対っていうか。」

十六夜は、顔をしかめて頭をガシガシと掻いた。

「あーなんかややこしい。考えるのはお前に任せて、とりあえずオレ達が二つに分かれた命ってことが分かっただけで今回はいいだろ。お前がそういう考えるようなとこ全部持ってったから、オレ考えるの苦手になったってわけだし。しゃあないわ、お前ができるんだからオレはいい。」

維月は、顔をしかめた。

「ちょっと、少しは考えてよ。何でもめんどくさがって。命のことよ?分かったんだから良かったけど、同じ性質を分け合った所もあるんだからね。別に私が全部持って行ったわけじゃないってば。」

十六夜は、また寝椅子に転がった。

「わーったわーった。でももう疲れたから寝る。繋いでる時は別にどうもなかったけど、離れる時のストレス半端ねぇだろ。もう夜だしさ…」と、目を閉じかけて、ハッとした顔をした。「あ、そうだ、お前アレやる?オレと命繋いだらどんな感覚だって楽しみにしてたのに、そういう感覚なかったのにがっかりしてただろ。忘れて寝るとこだった、奥行く?」

命を繋ぐと全部伝わって全部見える。

維月は、真っ赤になって十六夜を叩いた。

「もう!なんでそんなにデリカシーないのよ、分かってるんだったらさりげなくもっとムード盛り上げて誘ってよ!そんなだから滅多に体を繋いだりしないのよ!もう!」

十六夜は、困ったような顔をした。

「えー?おい、今更だぞ?一番多いのは維心だろうけど、維心は未だにムードがどうの気にしてるのか。」

維月は、プンプン怒って横を向いた。

「維心様は毎回とっても艶やかでいらっしゃるわ。お父様だって…」と、息をついた。「…そう、今回のこと、維心様になんてお話ししようかと思ってて。龍の宮に戻ってから、陰の月を出さないように気を遣って、そういうことを絶対に他の誰ともしないで来たのに、今回私にはそれしかないと思っていたから、陰の月を使ったでしょう…理解してくださるかしら。夫として愛してるのは、維心様だけなんだけどな。私の力って、なんで陰の月なんだろ。他に何か無かったのかしら、十六夜のそういう欲のところを全部私が持って来てるわけでしょう?」

十六夜は、うーんと言った。

「どうだろ。オレだって、お前相手だったらしたくなる時あるし、全部ってわけじゃねぇと思うけどな。それより、維心は気にしねぇみたいだったぞ。オレ、ここへ下りる前に維心と話したけど。」

え、と維月は眠そうな十六夜を見た。

「え、あなた維心様に話したの?!私に断りもなく?!」

十六夜は、欠伸をしながら答えた。

「えー?だってあいつ、お前がどうしてるって聞くからさ。ハッキリ言ったわけじゃねぇ、陰の月でって話したら、察した感じだよ。でも、落ち着いてたぞ?あいつもやっとオレ達と同じ考え方に染まって来た感じなんじゃねぇかなあ。」と、目を閉じた。「もう寝る。疲れたんだってば。」

そう言った途端、十六夜はすぐにいびきをかき始めた。

「え?ちょっと十六夜、寝るな!全部話してから寝てよ!」と、瞼を無理やり指で開いた。「十六夜ってば!」

十六夜は白目をむいているだけで、もう深く眠っていて返事をしなかった。

「もう!どうしていつもそうなのよー!」

そう言いながらも、同じ命なので維月にだって少なからず十六夜と似たところもあるのは自覚しているので、悪態をつきながらも、しようがないと十六夜は諦めて、そうしてその場を離れた。

…維心様と話さないと。

維月は、そう思っていたのだった。


維心は、山積した政務を維月が居ない事を良いことに、夜までいっぱいいっぱい入れて、多くこなして居間へと戻って来た。

この三日の間に溜まりに溜まった政務の量は半端なかったが、洪が居るので処理がそれは速くて維心に判断を仰ぐ時間が短いので、とても助かった。

目の前にさっさと情報を揃えて並べてくれるので、それをザッと見てサッと判断して次、と進められるので、ストレスなく処理できる。

…明日もこの様子で行けば、月の宮にも行けるかもしれない。

維心は、そう思いながら居間へと戻って来た。

誰も居ないのは知っているので、黙って扉を開いて居間へと足を踏み入れると、目の前で誰かが振り返った。

「…維心様!」

維心は、目を丸くした。

「い、維月?」と、急いで維月に近寄った。「どうした、戻って来たのか。」

誰も報告にこなんだが。

維心が思っていると、維月は首を振った。

「いえ、あの、月からコッソリ参りました。十六夜が、維心様にお話したと申すので…私の口から、しっかりお話しせねばと思いましたの。」

維心は、そのことか、と息をついた。

「…良い、気にする必要はないのだ。そもそもが元々、十六夜と分け合っておった時から同じような様子であったろう。今の意識は、昔とは違ってそんな関係に激昂するとか、そんな感情はないのよ。ただ、主があちらに夢中になって、我の事など忘れておったら案じられるがの。」

維月は、ブンブンと首を振った。

「そのような。維心様は私のただ一人の夫でありますのに。忘れるはずなどありませぬ。ただ…非常時に使える力が、私には陰の月の力しかございませず。あのような事になりまして、維心様にはご心労をお掛けしてしまったと思いましたの。」

維心は、苦笑した。

「それは…我とて少し、妬む心地はあるやもしれぬが、昔ほどではないゆえな。他の神なら強く妬みもしようが、月の眷族の事情はよう知っておる。ゆえ、此度の事は必要であるからだと思うておるよ。」

維月は、維心の手を握った。

「維心様…ですが、もう煩わしい想いはおさせしませぬので。それに、知った事実をお話ししておかねばと思うて戻りましたの。十六夜、私のことですの。」

維心は、眉を上げた。

「主らの?何か新たに分かったことがあるのか?」

維月は、頷いた。

「はい。先にお着替えを。お手伝いしますわ。それから、話ししましょう。」

侍女達が、維心が戻ったとわらわらと入って来ていたが、維月が居たのでびっくりした顔をしていた。

が、時々こんなことがあるので黙って待っているのを、感じていたのだ。

維心は頷いて、侍女達が持って来た着物に維月に着替えさせられながら、今更に新しい事実とはなんだろう、と、少し不安になっていたのだった。

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