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通常業務

そうやって、皆がいつも以上に楽しみにしていた、節分は終わった。

維月達、上位の妃が、宮の中を屋根のない輿に乗って移動していたのを目撃していた王や妃達も居て、早速に他の宮でも、それは流行り出したようだ。

妃達や侍女達の負担が、一気に軽くなったとかなり好評だった。

炎嘉や焔、志心からは約束通り、装飾品と花、白檀が送られて来た。

他の宮からも、多くの加工は龍には敵わないと、宝石の原石やら、鋼材などが送られて来て、それを如何様にも加工させて欲しいということらしかった。

翠明の宮からは、柑橘の木々が山程送られて来た。

様々な種類の柑橘で、龍の宮にはなかった物が、これからは宮で育てられるので維月も嬉しかった。

その他公明、駿、漸、渡、樹伊、仁弥、塔矢からも金やら銀、それに鋼材や宝石などが送られて来て、やはり良いように使ってくれということらしかった。

職人達がとても喜んでいたので、何ができて来るのか、それは楽しみになった。

皆、その土地でしか出ない鋼材やらが一番いいと思ったのだろう。


そんなこんなで返礼合戦も終わり、駿の所へは紅蘭が、高彰の所へは恵鈴が輿入れし、また上位の妃は増えることになったのだった。

「お祝いに、万華をひと揃えお贈り致しました。」維月は、維心に報告した。「あちらからも返礼のお品が参っております。」

維心は、息をついた。

「何かやったら返礼返礼と、特に良いと申すのにの。そのために蔵を見せたのよ。別に困っておらぬし、むしろ物が多くて困っておるから持って行けと言いたかったのにの。」

維月は、言った。

「維心様、そこは対等なご関係でございますから。あちらも借りを作りたくないのでございます。維心様がそのおつもりがないのは分かりますが、臣下ではないのですから。返してくださるのですし、よろしいではありませぬか。」

維心は、息をついた。

「そんなものかの。」と、維月を見た。「ゆえに主は、あのように無理な物を要求したのだの。」

維月は、苦笑した。

「…はい。私が欲しいと申したのだから、こちらにはないと思われて、あちらもご気分を良くなさいます。大抵の物は揃ってしまう宮でございますので、あのように珍しい物を欲しいというよりなかったのですわ。でも、炎嘉様がくださった装飾品は、仰っておられた通り素晴らしい出来ですわ。次の宴には、必ず着けて参ろうかと。」

維心は、頷いた。

「確かにあれは良い出来だった。そうよ、あれに合わせて着物を仕立てよう。」と、侍女を見た。「仕立ての長をこれへ。」

維月は、え、と維心を見上げた。

「え、また着物ですの?たくさん手を通しておらぬものがありますのに、新しく仕立てなくても…。」

維心は、首を振った。

「万華が余っておるではないか。あのままでは、あやつも織る甲斐がないであろう。とにかく、次の宴の着物を仕立てさせる。」

言い出したら聞かない。

維月は、仕方なく頷いた。

「分かりましたわ。」

維心は、ため息をつく維月の肩を抱いた。

「我には何も欲しいと申さぬのに。何なり申せ。志心の白檀で香を合わせるのなら、香壺はどうか?特別に作らせる。」

維月は、それを聞いてハッとした。

維心は、他の王達には欲しいと言っておきながら、自分には何も言わないと少し拗ねていたのだ。

…欲しいと言わなくても、何もかもあるから。

維月は、なので言った。

「…維心様、欲しい物とて、私が欲しいものは、物ではありませぬの。」

維心が、眉を上げる。

「…領地内に新しい温泉でも掘って欲しいか?」

だからそれも先回りしてやってくださっておるから、領地内の温泉は飽和状態なのよ。

維月は、首を振った。

「いいえ。」と、維心の頬に触れた。「私が欲しいのはその御身。維心様ご自身でないと私に与える事は叶いませぬ。毎日お側に置いてくださらねば、拗ねてしまいますわよ?」

維心は、眉を跳ね上げた。

「我の?」と、維月を抱きしめた。「それなら毎日与えておるのに。まだ足りぬのか?」

維月は、フフフと微笑んだ。

「そんな貴重なものを毎日与えられておって、更にほかをなど思うたこともありませぬ。御身どころか心まで求めておるのですから、これ以上強欲になれるでしょうか。私は満たされておるので、維心様には求める物などないのですわ。」

維心は、微笑んだ。

「…そうか、ならば存分に。夜だけとは言わぬから。いつなり求めて良いのだぞ?」

維月は、維心の首に腕を回した。

「では、只今少しだけ、私にくださいませ。」

「仕方がないの。」維心は、維月に唇を寄せた。「主には敵わぬ。言いなりになってしまうわ。」

二人は、口付け合った。

やって来た仕立ての長は、中へは入れず扉の前でしばらく困っていたのだった。


そんなこんなで如月が過ぎ、弥生になった。

維月は月の宮の蒼に頼んで、維明が作り上げた、文官の試験問題を大量に刷ってもらい、それを最上位の王へと、維心に直接手渡してもらった。

弥生の会合は鳥の宮だったので、そこへ行く維心に、厳重に封をした厨子を持たせたのだ。

普通に送れなかったのは、臣下が中身を確認するかもしれないからだ。

それぞれの王は、それを軍の蔵へと収め、試験まで軍神に徹底的に管理させることになった。

試験は、弥生の七日、会合より五日後と決まっていた。

炎嘉が、言った。

「開は政務の合間に書庫にこもり切りぞ。他の臣下も序列に関わるゆえ、未だかつてないほどに書庫が大盛況のぎゅうぎゅう詰め、政務の資料を出すのも難しいほどに神で溢れておる。」

開は、炎嘉の重臣筆頭だ。

一応、軍神の真似事までできるほど優秀な男だったが、それでも試験を前にプレッシャーが半端ないのだろう。

維心も、頷いた。

「こちらも同じようなものぞ。全員が暇さえあれば書庫へ向かい、必死に知識の更新に努めておるようよ。そんな様子なので、呼んでもすぐには来られない位置に居る事が多くて、序列にそこまで拘らない下位の侍従達が代わりに聞きに参る事が増えておるな。まあ、試験まではそれを許しておる。普段あまり責任を取ることのない立場の侍従達が、率先して事務処理などに動いておって、あれらも学びになっておるようだし。」

志心は、言った。

「うちもよ。あれらは己の序列というより、神世の中での己の位置が分かってしまうとそちらに必死であるわ。我の顔に泥を塗ることになってはとそればかりのようで、毎日緊張でガチガチぞ。早う終わらせてやりたいと見ていて不憫になっておる。」

渡が、言った。

「みんな大変だの。うちは別に腕試しでもしてみたら良いわと軽い感じに言うたので、筆頭は険しい顔をしておったが他はあまり。」

仁弥が、渡を呆れたように見た。

「主がそんな風だから宮も適当なのではないのか。」

焔が言った。

「そういえば、こちらは問題を維明が管理しておるのだの。軍神達も、皆受けてみたければ受けてみよと申してあるとか。」

維心は、頷いた。

「そうよ。もちろん、軍神達はその剣の腕で序列が決まっておるし、直接に序列には影響せぬが、良い点数の場合は考慮するとしておる。義心も部下の知識のある無しが分かれば、使いやすいかと思うてな。」

炎嘉は、ふーんと考え込む顔をした。

「そうか…ならばうちも奥で管理するかの。我の結界で封をしておけば、誰も開く事はできぬ。」

維心は、手を上げた。

「我が封をしようか?」と、目の前の厨子に気を放った。「…これで、時になるまでは我の封は解けぬぞ。主らですら、中身を見る事はできぬ。どうよ?」

焔が、顔をしかめた。

「また主は。一度確認しておこうかと思うたのに。」

維心は、笑った。

「ならぬ。解答も入っておるし、皆が試験を受けておる時に見れば良いではないか。」

志心が言った。

「それで、採点は?各自でやるか。」

維心は、首を振った。

「全て解答用紙を回収したら、再び厨子に収めて月の宮へ送れ。蒼が全てやってくれることになっておる。不公平があってはならぬから。あそこには人世のコンピューターがあるからの。集計して順位を出すのもどこより速いのだ。ゆえに、大規模になるとなった時に維月に蒼に掛け合って、そのようになった。」

炎嘉は、言った。

「相変わらず維月は優秀だの。月の宮の利用の仕方をよう知っておる。何が得意なのか、分野で違うからな。やはり試験は人世のシステムなので、蒼が強いのだな。」

維心は、頷いた。

「そう。あそこには学校があるゆえな。慣れておるのよ。」

ならば問題ない。

王達は結果をもう楽しみにしていたが、臣下達は必死だったのだった。

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