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同じ命

碧黎がクリステアの大聖堂へと戻って来ると、クリステアとアレクサンテリは、二人で大聖堂の台座に座り、話していた。

すっかり打ち解け合っていて、お互いに微笑み合いながら和やかに話している。

碧黎は息をついて、そこへ降りて行った。

「ヘキレイ。」アレクサンテリが気付いて言った。「どうであった?他にも誰か居ったか。」

碧黎は、二人の前に降り立って、頷いた。

「居った。この辺りは皆、一柱ずつで限られた土地を守っておるので、主らと同じ。だが、ずっと向こう、この土地の裏側に当たる場所に、多くの神が住む土地を見つけた。そこの、王のシアンという神と話して参った。」

クリステアが、口を押さえた。

「え、王?!まるで人のような…それほどに数が居るのですか?」

碧黎は、頷いた。

「その通りよ。我からしたら、ここの方が異常なのだ。たった一柱で全部を見るなど、土台無理な話であるのに。で、そのシアンに事情を話したら、アレクサンテリと話したいと申す。シアンはかなりの力を持つ神であるし、何より多くの部下を持ち、一柱ではない。アレクサンテリ、あやつに申して助けてもらうのだ。クリステアも、このままではいずれは立ち行かなくなる。」

クリステアは、頷いた。

「はい。あちらの土地が食料を生み出せぬので、こちらへ移って来る人々も最近多くなっておりました。仰る通り、このままではアレクサンテリの二の舞いになるだろうと、話しておったところなのです。神が見つからねば、我と二人で何とかするかと考えておりました。」

碧黎は、また頷いた。

「それも良いが、恐らく共倒れになる。クリステアの気は、アレクサンテリより少ないゆえな。たった二人柱ではのう…。」

アレクサンテリは、言った。

「ならば、シアンという神に話を。」と、クリステアを見た。「クリステア、シアンに話をつけて参る。そんなに多くの神が居るのなら、きっと助けてくれるはずよ。我が話して参るから。主はここで待っておれ。」

クリステアは、アレクサンテリの手を握って頷いた。

「はい。無理はなさらずに。待っているわ。」

アレクサンテリは頷いて、そうして浮き上がった。

「ヘキレイ、すまぬが案内を頼むぞ。それは遠いのだの?」

碧黎は、頷いた。

「そうだの。主には恐らく無理よ。遠すぎて辿り着くまでに気が尽きる。ゆえに、我が運んでやろう。」と、気でアレクサンテリを掴んだ。「そのままじっとしておれ。我なら一瞬よ。」

そうして、碧黎はその場からパッと消えた。

クリステアは驚いたが、不安げに二人が消えた場所を見つめて居たのだった。


…瞬間移動には多めに気力を持って行かれるな。

碧黎は、次に出現した場所で、そう思った。

自分の次元とは違い、何かが力を削ぐようだ。

考え込む碧黎の耳に、シアンの声が聴こえて来た。

「な、なんぞ?!いきなりに出て参った!」

碧黎は、ハッとして言った。

「…ああ、シアン。アレクサンテリを連れて参ったわ。存分に話すが良いぞ。」

アレクサンテリは、今の今までクリステアの大聖堂に居たのに、と、何が起こったのか分からずにキョロキョロとする。

「え、ここは?ヘキレイ、どういう事よ?」

碧黎は、面倒だなと答えた。

「だからここが裏側。目の前に居るのがシアンぞ。早う話せ、とにかく我は次元を越えておるゆえ、本体から気が補充できぬのだ。身に持つ気だけで動いておるから、あまりあちこちしたら気が無くなる。そうしたら一度帰って補充して来なければならぬようになる。面倒なので、さっさと済ませたい。」

シアンが、言った。

「なんだって、主のそれは身の内の気だけでやっておるのか?それでもそれだけの大きさの気であるとか…どういうことよ?」

碧黎は、息をついた。

「だから我は地なのだ。こちらの地のように、神が地上の気をどうにかする必要はなくて、地である我が皆の糧を生み出して、人も神も生かしておる。ゆえに気が大きいのは当然なのよ。」

シアンは、言った。

「なんとのう分かって参った。とはいえこちらも、結局は我ら神が地から湧き上がる気を吸い上げて、人に供給しておるだけで、我ら自身が生み出しておるのではないがの。」

碧黎は、眉を上げた。

「ほう?つまりは、地の気を振り分ける任を?」

シアンは、頷いた。

「そう。地からは滲み出るだけで、放置しておったらそのままそこに漂うばかりになる。それを、我らは己の糧としながら、人に食物という形でも振り分け、整理している任を負っておる。主のように、地に意識があるなら良かったが…そうではないから、我らがやらねばならぬわけよ。」

アレクサンテリが、言った。

「…知らなんだ。地が貧弱なのは、我の気が足りぬからなのだと。違うのか?」

シアンは、答えた。

「違う。見てみぬことには分からぬが、恐らく主の地では気の供給が少ないか、それとも人が多過ぎて追い付いておらぬかどちらかだろう。それなのに、主は己の身の内の気まで使おうとしたゆえ、恐らく力が足りぬで弱ったのではないのか。」

アレクサンテリは、そうだったのか、と呆然とした。

そして、ハッとして言った。

「…すまぬ、挨拶もなく。我はあちらの土地のアレクサンテリと申す。名を付けられたのもつい最近、地上に神は己のたった一柱だと思うて生きて来た。このヘキレイが来て、いろいろ知ったのだ。」

シアンは、頷いた。

「我はシアン。この地の神の王よ。ここには多くの神が居る。話をしておって思うたが、ここは地の気の供給が多いゆえ、神も多く生まれて生きて来られたが、そちらは少ないゆえに主だけだったのではないか?もしかして、かつては多くが居たとか。」

アレクサンテリは、首を振った。

「残念ながら、我には分からぬのよ。気が付いたら一柱で。回りには人しか居らなんだ。とはいえあちらの人々は、我に良くしてくれたゆえ。淋しいとは思わなんだが…ここ最近は、聖女と呼ばれる人ぐらいしか我に話し掛けて来ぬでな。孤独に感じておった。」

シアンは、驚いた顔をした。

「何と申した?人に主が見えるのか?」

アレクサンテリは、え、とシアンを見た。

「え、こちらは人から神が見えぬのか?そういえば、クリステアもそのようなことを。我の土地では、見えぬ人の方が少ない。ほとんどが見えていて、気を放つ術を使える。」

シアンは、ますます驚いた顔をした。

「術だって?こちらでは…人は非力で、気を放つなど誰にもできぬ。そもそも、気を認識しておる人が幾人居るか…。」

碧黎は、それを聞きながら思った。

つまりは、アレクサンテリの土地の人だけが異常なのだ。

こちらの人は、あれがデフォルトだと思ってこちらへ来たが、そうではないのだと分かった。

「…とにかく、アレクサンテリ。主はシアンと共に己の土地を知るのだ。他は何とかやっておるのに、主の地だけあんなことになっておる、理由がわかりそうではないか?」

アレクサンテリは、頷いた。

「そうだの。ヘキレイ、主には感謝する。ついさっきまで、我は絶望しておったのに。何やら先が見えて来たように思う。」

碧黎は、頷いた。

「ならば、シアンと共に主の地へ。シアン、主はアレクサンテリをあちらへ運べるか?」

シアンは、頷いた。

「恐らくは。しかしあちらに着いて、気を補充できぬとなれば戻れぬようになる。できたら行きは主に頼って良いか。帰りは我が己で戻るゆえ。」

碧黎は、息をついて手を上げた。

「ならばそのように。主らを運んだら、我は一度己の次元へ帰るわ。しかしあちらから見ておるゆえ、案じるでない。あちらから、鏡のようにこちらを見ることはできるのだ。行き詰まったら我を呼べ。」

シアンとアレクサンテリは、頷いた。

「ならばそのように。」

碧黎は、呟くように言った。

「…全く、迷い込んだ人を返したいだけなのに。大層なことになったものよ。」

そうして、三人はその場から消えた。

碧黎は、更に多くの気を持って行かれるのを、感じたのだった。

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