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ゲームの中の人

サイアとライラ、そしてメイアは、侍女に伴われて応接間へとやって来た。

そして、何やら威厳のある神たちに凝視されて、頭を下げて戸惑った顔をする。

蒼は、言った。

「ここに揃っているのは、この島を管理している上位の神の王の皆様だ。主らの世界のことを、聞かせて欲しいと呼んだのだ。」

サイアが、答えた。

「はい…。」と、顔を上げて、ハッとした。「あの…板の絵は?!」

ライラが、叫んだ。

「ここは、西のサイファではないか!どうしてサイファの絵がここに?!」

やはりか。

炎嘉が、口を開いた。

「これは、こちらの人が作ったゲームという遊戯の映像ぞ。絵ではなく、動くのだ。」と、コントローラであちこち動いて見せた。「恐らく、こちらの人の能力を持つ者が、それと知らずに主らの世界を形作ったものだと思われる。我らは今、主らに成り代わって消えた巫女を探しておるのよ。」

メイアが、言った。

「カタカナは読めるようになっております。あちらに、我らとここには居らぬ、仲間の名が。」と、顔を曇らせた。「こちらの人で、こんな魔法を使う者がいたとは。仲間達は…我らが消えて、今頃困っているでしょう。」

正確には魔法ではないが、ややこしくなりそうなのでそこは割愛した。

焔が、言った。

「で、主らのことは碧黎に任せるとして、主らはどこまで進んでおった?最初、大聖堂で巫女を探そうと皆で話し合ったよの。その後東に行ったのか、西へ向かったのか。」

サイアが、答えた。

「はい、我らは東の聖堂へ。そこで西のサイファに聖具があったと旅籠の主人に聞いて、西へ向かいました。今映っている、その街です。」

焔は、コントローラを操作した。

「フンフン、それでどこを調べた?」

ライラが答えた。

「そこの聖堂へ。そこで確かに聖杯を見つけましたが、そこには巫女は居らず。修道士が言うには、巫女は聖女としての能力に目覚め、神の仰るままに北へ向かうと言っていた、と。なので北へ進路を取り、北の街に到着しました。が、巫女の目撃情報はなく。さらに北かと山脈の方へ進路を取り…その時に、山賊に襲われて、我ら三人と、他の三人は別々に逃げました。山の中を闇雲に走り回っているうちに、気がつくと塔矢様の宮の近くに出ておりました。見たこともなく、聞いたこともない地名、地形にどうしたら良いのかと…今に至ります。」

やっぱりまんま、ゲームのままか。  

とはいえ、そこでこれらは離脱してしまっていて、仲間の三人も山賊から逃げ切ったのかも分からない。

炎嘉が、コントローラを手にした。

「とにかく、碧黎が何とかしてくれよう。ここは、ゲームを進めるとしようぞ。聖堂だの?行くぞ。」

やるのか。

蒼が驚いた顔をしているが、皆が急いでコントローラを手にする。

メイアが言った。

「あ、先に店で何か買って持って行った方が良いです。」皆がメイアを見ると、メイアは続けた。「修道士もこのご時世で、食うに困る生活をしています。タダでは情報をくれないのです。我らもなので、その時持つ食料を提供しなければなりませんでした。市場は午前中しか開いていないので…すぐに売り切れてしまうので…その日は夕飯を我慢せねばなりませんでした。市場が開いているなら、先に買いだめておく方が。」

維心は、頷いた。

「ならば先に市場ぞ!」そうして、維心はなんとなくサイアに似ている、キャラを動かした。「行くぞ!」

そうして、皆はサイア、ライラ、メイアの指示で動き始めた。

蒼は、遊んでいて碧黎が戻った時に拗ねなければ良いが、と思いながらそれを見ていたのだった。


碧黎は、難なくこちらの次元と繋がった痕跡のある次元を見つけ出した。

そして、そこへと次元の扉を使って渡ると、回りを見渡した。

何やら荒廃した様子で、あちらの次元とは様子が違う。

気の量も多くはなく、恐らくこの量では、ここに居る命達全てを養うのは無理だろうと碧黎は瞬時に悟った。

…神の気配がない。

碧黎は、あちらの世なら多くの神の気配を感じるのに、こちらにはたった一つしか感じ取れないのを怪訝に思った。

これだけの広さがあるのに、たった一柱ではこの荒廃状況も理解できる。

碧黎は、そのたった一つの気配を探って、山脈の方へと飛んで行った。


山脈は、また荒れていた。

木々は申し訳程度しか残ってはおらず、後は立ち枯れてしまっていた。

残っている木も何やら元気がなく、碧黎は思わず手を置いて、それに自分の気を分け与えた。

こんなことをしても、こちらの次元で碧黎の気ではそう長くはもたないのは分かっていたが、見捨てることができなかったのだ。

すると、木は目の前で見る見る力を得て、みずみずしい幹になって行った。

「…困ったことよ。原因が分からぬゆえ、こんなことしかしてやれぬがの。」

碧黎は、そう木に話し掛けた。

すると、声が聴こえた。

《…主は神か?》

碧黎は、声の方向を向いた。

「…神ではない。」と、その声の方向が、自分の探って来た相手の居場所だとそちらへ向かって飛んだ。「主に話があって来た。別の次元を世話しておる命の一つ。」

声の出所を探って飛ぶと、そこには人が建てたであろう、石造りの建物があった。

古いもののようで、ほとんど崩れかけていてツタも絡まり、草に埋もれようとしている。

この辺りだけ、やたらと草木が生い茂っていて不自然だった。

…この中か。

碧黎は、その入口付近へ降りて行った。


入口らしい場所から中を伺い、入って行こうとしていると、中から若い女が出て来た。

人にしては美しい女で、長いほとんど白の金髪を後ろでまとめて、簡素な服を着ている。

女は、頭を下げた。

「私は、神にお仕えする巫女のアリアでございます。我が神がお呼びです。どうぞ、中へ。」

碧黎は、頷いてその後ろについて、その建っているのが不思議な建物へと、入って行った。


かなり奥へと進むと、神の気配は強くなった。

最奥の開けた部屋へと入ると、そこは半円形のかなりの広さの場所で、正面に台座のような物があり、その後ろに大きな彫像が立ってこちらを見下ろしていた。

その姿は男のような女のような、中性的なものだが、恐らく人が崇めるための神の姿なのだろう。

台座の上には、その彫像よりはいくらか男性的な、人型が胡座をかいて座ってこちらを見ていた。

「…主が、ここの神か。」

相手は、頷いた。

「人はそのように。」

碧黎は、頷き返した。

「我は、碧黎。別の次元の地の精霊と申すと、主らには分かりやすいか。地、自体に宿る命で、あちらの命の全ての面倒を見ておる存在ぞ。」

相手は、眉を上げた。

「地の精霊?」と、顔をしかめた。「精霊にしては力が大き過ぎる。我よりさらに大きな力を感じる…それこそ、この地を飲み込むほどの大きな力ぞ。」

碧黎は、苦笑した。

「だから主らに分かりやすいように申したまで。我はただの精霊ではないし、それにここの命でもない。ここでは我は、異質な存在ぞ。」

神は、息をついた。

「…そうか。」と、碧黎を見上げた。「我の他にも神が居ったと喜んだのに。主はここの神ではないと申すか。」

碧黎は、頷いた。

「その通りよ。長くはここに居られぬ。我にはあちらの地の命を育む責がある。主がこちらの命の世話をする責があるようにな。」

神は、息をついた。

「…して。その別の次元の命が、我に何の用よ。主の力には遠く及ばぬのに、手助けなどできぬぞ。」

碧黎は、本題を口にした。

「…主の管轄の命が、我の管轄へ来てしもうておるのだ。ゆえ、引き取ってもらおうとこちらへ参った。別に何も言わずにこちらへ送っても良かったが、原因が分からずではまた来るやもしれぬからの。分かっておるのが3つ。覚えはないか。」

神は、嫌そうな顔をした。

「ああ、何やら我を引き戻そうとしておる奴らか。面倒ゆえ、適当に追い払った。次元まで越えておるとは思わなんだが。それらのことなら、世話を掛けるがそっちで世話してくれぬか。こちらは見ての通り手一杯でな。主の気の量なら、3つぐらい養えるだろうが。」

碧黎は、眉を寄せた。

「もちろん、我ならあれぐらい面倒を見れるが、そんなことではないのよ。我の気では、あやつらを養うことはできぬ。腹は満たされるが、気の性質が違うゆえ遅かれ早かれ死ぬだろう。ゆえに返したいと思うておるのだ。皆帰りたがっておるしな。」

神は、面倒そうに手を振った。

「ああ、どうせこちらに戻っても死ぬよりないのだ。糧の量が足りぬ。人は増え過ぎておるのだ。我一人でどうせよと申す。我とて、できるだけ励んだわ。しかし、一人きりでは限界がある。なのに人は節操なく増え続けて、こちらのことなどお構い無しぞ。ここで太古に少人数で暮らしておった時が懐かしいわ。」

なんと無責任な。

碧黎は、憤って言った。

「それが我らの存在意味ぞ。役目を放棄して生き残る未来など我らにもないぞ。その命、何もせずで永劫続くと思うておるわけではあるまい。我らとて、また期限を切られることがある。そんなことも分からぬのか。」

神は、唇を噛む。

アリアが、言った。

「お待ちくださいませ。」アリアは、睨む碧黎に怯むことなく続けた。「我が神は、ご努力なさいました。気を消耗し過ぎてお姿すら危うくなられても、何とか地上を豊かにと皆に力を分け与えて…しかしながら、皆を養うための糧を生み出すには、膨大なお力が必要です。ついに神のお命さえ危ぶまれて参り、私が申しましたの。もう、そのようにたった一人で励まれることはないのだと。私の言葉に応じて、お姿をこちらへお隠しになりました。私のせいなのです。」

確かに、この神一人の気では全てを養うのは無理だっただろう。

碧黎は、チラと神を見た。

神は、ただ黙って視線を下に向けていた。

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