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夜の宴

維月と維心が揃って応接間へと入って行くと、もう王達は全員着席していた。

妃は、来ている者とそうでない者たちが居る。

大体が妃の方が手間がかかる上に、王の仕度を先にするので、一緒に来るには時が掛かる。

正月のような公式の場でもなければ、大概が王が先に出て来て、こちらで他の王達と歓談して待っていた。

何しろ、ジリジリしながら待つのは王の性に合わないし、妃も焦るからだ。

維心は、先に行けと言わなければ先に行かないので、今日は待っていた。

維月も、話したいことが多かったのもあり、なんとなく維心に行けとは言わなかったのだ。

焔が、言った。

「なんぞ。主らはいつも共だの。待っていたら維月も気忙しいではないか。先に来れば良かったのに、維心。」

維心は、答えた。

「話しておったら維月の準備が終わったから共に来ただけよ。我らは会話のない夫婦ではないからの。」と、維月共に席についた。「して?まだ揃ってはおらぬな。」

こうして見ると、来ていないのは恵鈴だけだ。

高彰が、言った。

「ああ、恵鈴のことは気にするでない。何やら仕度に時が掛かるとかで、遅れるとあれの侍女が申して参った。待たずで良いぞ。」

妃達は、心配そうに目線を合わせあう。

維月も、もう来ないのではないかと気になったが、口にはしなかった。

蒼が、言った。

「ではまたビールを持ってこさせましょうか。焔達は先に飲んでいたんですよ、維心様。」

維心は、頷いた。

「ならばそれで。酒も良いがずっとそれでは飽きて参るよの。」

炎嘉が、頷いた。

「ここには珍しい酒が多いゆえ、正月の長い席でもいつまでも飲んでいられるものよ。」と、侍女が新しいビールを持って次々と入って来るのを見ながら、蒼に言った。「して?何をするかの。何か準備しておるか?」

蒼は、答えた。

「明日からのこともありますしね。双六の最新版はありますが、それはまた明日にでも。その他となると、人世のゲームも皆様飽きて来られた所でしょうし。」

焔が言う。

「いつかの正月にやった、あれでも良いぞ。そら、あの大きな板に映像が流れて、いろいろやるやつ。」

え、ビデオゲーム?

蒼は、有るには有るが、新しいゲームをダウンロードしなければならない。

ここのところ忘れているようで、誰もやるとは言わないので、何も準備はしていなかった。

「え、やるの?まあ、ちょっと待ってくれたらできるけど…。」

回線は、勝手に繋いであるので問題なく起動はできる。

渡が、言った。

「ゲームとはなんぞ?あんな板で何ができるのだ。人世のことには疎いからの。」

仁弥も、怪訝な顔をしている。

…そうか、知らない神も居る。

蒼は、立ち上がった。

「じゃあ、少しお待ちを。準備をして来ます。良かった、杏子が居るから。杏子はああいう人世の機械に詳しいんです。」

蒼は、言ってそこを急いで出て行った。

炎嘉が、眉を上げた。

「杏子?居るのか。杏奈についてコンドル城へ参ったのではなかったのか。」

維月が、答えた。

「はい、炎嘉様。我もそのように思いましたが、湯殿で行き合い、此度は残ったのだと話しておりました。」

焔が、頷いた。

「運が良かったの。では夜はゲームで戯れるとするか。退屈せぬわ。」

箔炎が言う。

「旅する謎解きみたいなものは、やめておけよ。また眠れぬことになるぞ。」

ロールプレイングゲームのことを言っているのだ。

維心が言った。

「だが、戦闘系のものは焔が暴れて物を壊しよるからの。ここで暴れてもどうしようもないのに。」

焔は、維心を睨んだ。

「うるさい!つい力が入るのだ!あんな小さな箱で動けとは、無理があるのよ!」

小さな箱とはコントローラーのことだろう。

維月が息をついていると、壁に設置された大画面が、突然にパッとついた。

皆の目が、一斉にそちらへ向く。

画面には、何やら新着ゲームのお知らせだの、様々な事柄が大写しになって表示されていた。

「おお、ついたぞ!」

渡が、驚いた顔で声を上げる。

仁弥が、目を丸くして言った。

「なんぞこれは。どうなっておる?」

炎嘉が、苦笑して言った。

「人は知恵があるからのう。ちょっと中を見れば、どうなっておるのか見えるぞ。興味があるなら見ておくが良い。」

そうか、神様だもの、分かるのね。

維月は、思った。

多分、月である自分も見たら分かるのかも知れないが、人の記憶もあるので、理解するのは面倒に思えて、見ようとは思わなかった。

蒼が、たくさんのコントローラーを手に戻って来た。

「お待たせしました。杏子が隣りの部屋でいろいろやってくれて。アカウントを忘れていたので、それを書き置きから探してパスワードを入力してくれてたんです。」

アカウントとはなんだ。

皆は思ったが、とりあえず上手く行ったならと頷いた。

「ああ、その箱をくれ。何個あるのだ、今回は。」

蒼は、頷いた。

「今は20個まで接続可能らしいんだけど、維心様、炎嘉様、志心様、漸、箔炎様、焔、駿、高彰、渡、翠明、仁弥、公明、樹伊とオレで14個。隣りで不具合出た時に何とかしてくれるために、杏子に一個。合計15個繋いでるよ。」

めっちゃ繋いでるなあ。

維月は、前世の記憶ではあり得ない数なので、今の技術の高さをそれで思い知った。

全部を一度に処理できる能力があるということだからだ。

「そんなにあると誰が誰なのか分からぬようにならぬのか。」漸が言う。「あっちからこっちから、その箱であの板に指示を送るのだろう。」

蒼が、答えた。

「それは、メインのコントローラってのがあってね。」蒼は、金色に輝くコントローラを漸に見せた。「これでやるんだ。分からなくなるから、これだけ色を変えて来たんだけどね。」

蒼は、それを操作して画面を変えた。

「…それで…どうします?新しいのダウンロードします?前のゲームのデータも残ってますけど。」

志心が言う。

「前のゲームとは、あの後味悪いやつか?別のにせぬか。もう内容は知っておるしな。」

蒼は、答えた。

「あのロールプレイングゲームは一度やったらもうしませんよね。やっぱりロールプレイングゲームが良いですか?今からだったらまた、夜通しやることになりますけど。」

特に最近のはもっと凝っているから、もっと時間が掛かりそうだ。

炎嘉が言う。

「さっきの画面で新作とか出ていただろう。あれの中から選べば良いではないか。我としたら、ただ闇雲に戦うより内容があった方が良い。同じ戦うにも、理由があるゆえ。」

焔が頷く。

「戦うだけのものは、いつなり維心の一人勝ちになるゆえ。面白うない。こやつはこの箱の扱いにまで長けておって敵わぬのよ。内容のあるものなら、共に同じ敵と戦うゆえ心強いがの。」

蒼は、画面を戻してあれこれ見た。

「そうですね…あ、これは。異世界ファンタジー、祈りの柵。『世界を支える神に仕える聖女が、ある日忽然と姿を消した。その後、神に見捨てられたのか世界は荒廃し、民は飢え食料を求めて人は殺し合い始めた。そんな時、一人の青年が仲間と共に、消えた聖女を探す旅に出た。』…まあ、ありきたりの筋書きかもしれませんが。」

焔が、顔をしかめた。

「なんだそれは。人一人が消えたぐらいで、我らは土地を見捨てたりせぬわ。そもそも神が一柱で何ができる。これだけ居っても大変なのに。」

蒼は、焔を見た。

「だからこれは人が考えた架空のお話なんだってば。」

炎嘉が、言った。

「時を取るとまた眠れぬようになる。もうこの際それにしようぞ。迷うておっても始まらぬからの。」

維心も、頷いた。

「そうよ。何をやってもどうせ没入するのだろうが、主らは。」

「主だって真顔でどんどん進んで行くクセに!」

焔が言い、蒼は仕方なくそのゲームを購入してダウンロードし始めた。

また、眠れない夜になりそうだった。

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