第4話(1)
空き巣、居空き事件の進展はなく、また新たな事件も発生しなかった。おかげで? 俺の歓迎会は滞りなく開かれることになった。
前の部署では仲間もいなかったので歓迎会、送別会などなく(解決した事件の担当だった高見刑事だけが飲みに連れて行ってくれた)、その前も謹慎中で、相棒だった先輩だけが見送ってくれるという寂しいものだった。なので、こんなふうに人に歓迎してもらうのは新人刑事の時以来だ。なんだか嬉しくなって、したたかに酔った。
「先輩、例の噂って実際マジ話なんですかぁ?」
こちらも完全に酔っ払ったた三条が俺に遠慮もなく聞いてきた。一通りお愛想を振りまいて席に戻ったところだ。
都並班長にベテランの郷田主任、それに中堅の佐々木さん、杉本さんが都並班のメンバー。みんな久しぶりの飲み会なのか随分盛り上がって楽しそうだ。
「ああ? どんな噂になってるか知らんが、きっと本当だろうなあ」
なんて混ぜっ返す。俺と一番歳の近い三条は、この5日の間で随分と懐いてきた気がする。俺のゴシップに興味があるのだろうが、それは仕方のないことだと思っている。
「マジですか、中学生だったんでしょ? ヤバいなあ」
「やばいよ。ホントにさあ。あははっ。マジで不祥事だよなあ」
桜も散り終わった頃なのに、頭の中で咲いてるかのような上機嫌。背広はそこらに脱ぎ捨てられ、ネクタイもいつのまにかゆるゆるになっている。肩を組みそうな近さで俺らは杯を重ねた。
「でもな、彼女のお陰でここに来れたんだよ」
「えー? 教えてくださいよぉ。約束でしたよねえ?」
ほとんど寝ているんじゃないかと思うくらい、目を瞬かせてる。もう瞼が閉じそうだ。
「いいぞ。その代わり、起きてろな」
別に隠すことでもない。俺は半年前に起きた殺人事件について話し始めた。