第5話(1)
歓迎会のお陰で、随分都並班のみんなと仲良くなった気がする。特に相棒となった三条とは悪くない感じだ。そもそも三条は気が利くうえに人との距離が近い。俺の相棒にしたのは都並さんの采配だろうが有難かった。
空き巣事件には新たな事件は起っていなかったが、周期的に言うとそろそろだ。俺たちは警備課と協力してパトロールを強化した。
「風間、おまえが言ってた空き巣事件の報告書、送ってもらったぞ。おまえのアドレスに転送したから見ておけ」
「はい、都並さん、ありがとうございます」
俺は数ヶ月前、別管区で起こった空き巣事件の報告書を閲覧できるよう、都並さんにお願いしていた。未解決事件なので、報告書を閲覧するのは担当部署が嫌がる。これが縄張り意識なんだろうけど、正直誰の得にもならない。合同捜査にすれば、もっと早く解決するだろうに。
「僕にも見せてください」
「もちろん。たくさんの目で見た方がいいに決まってる。この班の共有フォルダに入れておくから、目を通しておいてくれ」
「はいっ」
三条だけでなく、班の全員にシェアをする。そういうことが大事なのにしたがらない。刑事ってのは意外にプライドが高いのだろう。俺がこうしてシェアしてみても、全員が見るとは限らない。
別の管区で多発していた空き巣は、空き巣というよりほとんどが居空き。つまり夜の事件だった。居空きの場合、長い時間費やすわけにはいかない。家の中を知り尽くしているかのごとく短時間で効率的に金銭を手に入れる必要がある。
――――多くを望まず、わかりやすいところから奪っている。この情報を彼らはどこで得ているんだろう。
彼ら……と言うのは、複数犯だと考えるのが妥当だからだ。一人の可能性は低いというのが二つの管区で一致しているところだ。
居空きは住人が寝ているはずの深夜に忍び込むので、居ることを前提に盗みを図る。それと比較するのもなんだが、空き巣は居ないと考えて中に入るので、居合わせた時の衝撃は大きい。
どっちが盗みに入るのにいいのかはわからんが、犯人が捕まったら聞いてみたいものだ。俺ならば居空きの方がやりようがあっていい気がする。
でも、今回の犯人たちは俺らの管区では空き巣の方が多くなっている。相応の下調べが必要だろうから、土地勘としてはこっちの方が地元なのかもしれない。
「おーい、風間、パトロール頼むわ」
都並班の中堅コンビ、佐々木、杉本ペアが見回りから帰ってきた。次は俺たちの番だ。はあい、と三条が返事をする。
「了解です」
俺もそう応じ、二人そろってフロアを退出した。




