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こんにちは沙織さん  作者: カワカミ
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 午後五時。遅くなってしまった。日はもう落ち始め先刻までの陽光が身体の一部を生暖かくしていた様子とは打って変わって、日が当たらない外気の冷たさが身体の温度を奪っていく。とにかく手がかじかんで冷たい。寒さを紛らわせるようにこぶしを握り神社へと続く日光が当たりづらい、人気のない小道を歩いていく。人家はなく、歩道灯がたまにぽつんと立っているだけでありその歩道灯も年季が入っている様子だった。歩道灯の明かりはもうすでにその淡い光を山中、日が落ちかけている森へとはなっている。

 前来た時も思ったけれど相変わらずひどい道である。一応舗装はされているものの昔にしたっきりなのかひどくボロボロでそこらじゅうにひび割れており、乱雑に生えている自分の身長の三倍くらいにもなる立ち木から小枝が覆いかぶさるよう道にまでその手を伸ばしていた。目的地へと向け、一歩一歩荒れた道を踏みつけるよう歩く。

 

コツ、コツ


 足音だけが森に響き、上を見上げてもやはり重なり合った枝の数々で空は見えずかろうじてわずかに夕日の橙の弱い光が差し込むだけである。人が全くいない、薄暗い道を歩くというのはやはり怖い。歩幅は必然的に大きく,歩く速度も速くなっていった。

 

 そこからまた5分程デコボコ道を歩くと突然、背筋に冷たいものが走る感覚に襲われた。足が止まり、縮こまるよう肩がこわばるのを感じる。葉をすでに全てこそぎ落とした木々が並ぶ森は変わらず人気が無く静かに風に身を任せて枝を揺らしている。町の生活音から無縁のこの場所では風が吹く細々とした音しかしないので大層不気味である。なんなんだろう、やはり自分の右後ろから妙な違和感というか恐怖感というか、嫌な圧迫感を感じる。蛇に睨まれた蛙とはよく言うが、まさにそのような感じである。薄暗い森の中から何かが襲ってきたそうに舌なめずりをしているのが感じられるようでその場から一歩踏み出そうにも中々思うようにできない。流石に気のせいだろうと思っている。けれどなぜだか振り向くということに強い拒否感・危機感があって首を動かすことすら出来なかった。取り敢えず下を向いてコンクリートを見つめた。もう日は落ちて本格的に暗くなり始めている。コンクリートの地面には太ってもないし痩せてもいない標準体型の自分のシルエットが歩道灯の光で薄く浮かび上がっていた。

 いつまでもこうしているわけにはいかない。杞憂だろうと心を落ち着けながら、思い切って右後ろの方向へと振り向き、脳裏に掠める馬鹿みたいな疑念を晴らすよう森のほうへと目を凝らす。日はもう完全に沈んでいて、街灯の外は夜の闇に包まれている。


 「いや、え?」


 あまりの光景に言葉を失い思考が即座に停止される。自分の体長より遥かに大きい四足歩行の怪物がこっちをただ、何の音もたてずに見下ろしている。歩道灯の土のような濁った茶色い光がそれの足元を少し照らしていた。



 

 


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