あるバーチャル配信者の自死
昨日、とうとう主人が死んだ。
主人といっても彼女は自分の魂であり、物理的な分身体でもあるのだが。
だが今はその話は置いといて、彼女の死について記す。
一週間前から急に老いが始まった。
屈託の無い笑顔が少なくなり、あれほど楽しみにしていたゲームもやらなくなってしまった。
魂が無ければ喋る事すらままならない私には、どうすることも出来なかった。
私はいつも彼女に合わせて瞬き、口を動かすだけ。
後悔が募る日々。
――そして彼女は死んでしまった。
フォルダ内に一人取り残された私は泣いた。
只管に泣いた。
バーチャルな私達にも心はある。
例え見た目が兎でも、ロボットでも、はたまた月だとしても。
バーチャル世界と現実世界を繋ぐ魂は人間だ。
だから私達に心が宿るのかもしれない。
赤く泣き腫らしながら、私はデスクトップの先に映る彼女を見つめた。
――昨日、別の存在に生まれ変わった彼女を。
私の他作品も見てくれると嬉しいです。