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第31話 大切な人の大切な人になるために ②

学校に着き、教室に入るともうすでに千歳の姿があった。


「千歳、おはよう」

「…………」

「……千歳?」

「…………」


昨日のうちに何があったのかは分からないが、千歳はまともに挨拶すら返してくれなくなってしまった。


それからというもの、千歳は一度も言葉を交わさないどころか目すら合わせてくれず気付けば昼休憩になっていた。


もちろん、授業中は千歳に何か嫌われるようなことをしたのか、昨日のことを全て思い出していて集中することなどできなかった。


そして、答えを出すことはできなかった。


「美月は分かってたみたいだけど……ほんとなんでだよ……」


机に突っ伏し、んーと唸っていると、前に人の気配がしたのでぱっと顔を上げる。


「れん、大丈夫か?」

「翔……」


正体は翔だった。すごく心配そうな顔をしている。


「大丈夫大丈夫……」

「ホントか? なんか悩みでもあれば相談乗るぞ?」

「ありがとう。今は大丈夫だよ」

「おっけー。いつでも相談乗るからな?」


そう言って教室から出ていった。


親友のありがたみを噛み締めながら教室を見渡す。


(さっきから千歳の姿がない……?)


今思い返してみれば昼休憩に入り、トイレから戻ったときから千歳の姿がなくなっていた。考えすぎかもしれないが、今の状況もあっていつも以上に心配だ。


(まあトイレかもしれないしな……少し待ってみるか)


流石に詰め過ぎだ。一旦昼ごはんを食べて落ち着こう。


しかし、昼ごはんを食べ終わっても昼休憩が終わっても千歳が帰ってくることはなかった。


(早退か……? でも何も体調悪いような様子無かったよな……)


一切俺とは話さなかったものの友達とはいつもどおり話していた。

千歳が早退する理由は家の用事くらいしかないだろう。


でも、千歳の親はいつも遅くまで帰ってこないし、病院とかの用事があったとしても昨日までに教えてくるだろう。

じゃあなんで千歳は早退したのか。それは俺には分からない。が、理由もなしに千歳が早退することなんて無いだろう。


心配だが、学生は学業が優先だ。まずは教科書を出そう。


と、教科書を机の中から出したら一切れの紙がひらひらと舞い、床に落ちた。


「ん? なんだ?」


その落ちた紙を拾い、そこに書かれていることを見る。手紙には、


『今までありがとう 千歳』


とだけ書かれていた。


「こんなこと書かれたら行くしか無いでしょ……」


急いで教室を出て靴を履き、ある場所へ猛ダッシュで向かった。



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