第2話 後悔と決意
……一体どれくらいの時間眠っていたのだろう。
少しずつ重い瞼を開くと強烈な光が目の中に注ぎ込まれる。
「ここは天国か……?」
そう思いながら瞼を完全に開き、周りを見渡す。何個もあるベット、いくつものカーテンとカーテンレール。外を見渡すと風に揺らされる木の葉、広場らしきところに集まる人々。
誰がどう見ても天国ではなかった。
「良かったー生きてるー」
俺の命を救ってくれた方々に心のなかでお礼をし、日付を確認するためスマホを起動させると10月15日を指していた。
右側に置かれている椅子の方を見るが誰もいない。
「まあそうだよな」
俺の親は毎日朝早く家を出、夜遅くになって帰ってくるという超多忙な生活を送っている。
そして今日は平日。親が仕事から抜けて来られるわけがない。
そんなことを思いつつ二日前にあったあの出来事の記憶を整理していくと、あることに気がついた。
「あ! あの女の子は!?」
もう一度周りを見渡し、女の子を探すと、その女の子は俺の左隣のベットに眠っていた。多くの管が体から出でいる。
「おい! 大丈夫か!」
そう言ってベットに向かおうとした俺だが、うまく足に力が入らない。足を見ると包帯でぐるぐる巻きにされていた。どうやらあの事故で足を骨折したようだ。
「俺の足、動けー……!」
懸命に足を動かそうとしていると、病室の扉が開かれ看護師さんが入ってきた。
「山本さんー……って山本さん目覚めたんですか!? 先生ー! 山本さん意識戻りましたー!!」
ドタバタと急いで看護師が戻っていく。その数十秒後、担当医の方や看護師さんたちがぞろぞろと入ってきた。
「こんにちは。山本さんの担当の渡辺俊一といいます。よろしくおねがいします」
「こちらこそよろしくおねがいします。そして、助けてくださりありがとうございました」
「いえいえ。助けることが私たちの使命ですから」
「では、状況を説明しますね」
そして、先生による俺と隣に寝ている女の子の状況説明が始まった。
「まず山本さんと隣の彼女、紫宮さんは車に横を向いた状態ではねられました。
山本さんは身長が高かったおかげで車が足に当たり、足を骨折。そこから地面に叩きつけられた衝撃で肋骨骨折と内臓への若干のダメージがありました。そのせいで山本さんは意識を失いました」
ここで先生は一旦言葉を途切らせる。でもすぐに説明を再開して、
「ですが紫宮さんは身長が低いこともあってか左腹部に車が衝突し、内蔵に結構な負荷がかかり、未だに意識が回復しない状況です。また、その影響で右足が壊死してしまい切断せざるを得ませんでした。そして、今後目を覚ます可能性は低いでしょう」
とてもじゃない辛い現実を押し付けられた。
もしあの時ああしていれば……
今後悔しても遅いことはわかっているもののやっぱりこういうことを考えてしまう。
せめてなにか彼女のためにできることがないか考え、考えて……思いついた。
「先生。彼女が目覚めるまで俺が彼女の看病をしてもいいですか?」
「ん? ああ……いいよ」
先生はうなずき、OKをくれた。
でも、俺はまだ彼女のためにやりたいことがある。
「あと、俺ってリハビリ……ありますよね?」
「うん。一応明日から始まるようになってるけど、どうかしたの?」
「俺のリハビリ……彼女のリハビリが始まるときからにしてもらうことってできますか?」
「なんで……って、そういうことか。わかった。しておく」
「ありがとうございます!」
先生は、俺が彼女のリハビリを支えたい思いを察してくれた。
本当にこの先生には感謝しかない。
そして、彼女が目覚めること、そして、物事は信じれば思い通りになると信じて俺は彼女の看病を始めた。
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