表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/42

第1話 最悪の出会い

 10月13日。


 高校二年生になって、早六ヶ月が経ったが友達は未だ中学からの二人だけ。

 周りには和気あいあいと帰る集団、とぼとぼと一人で帰るいわゆる”ぼっち”など様々な人がいる。


 え? 俺はどうなのかって? もちろんぼっちだ。


 俺は友達反対派だからな。


 友達なんて関係を崩さないように接しなきゃいけないし、普通に人付き合いめんどいし作る意味なんてない。そもそも友達なんていなくても生きていられる。


 じゃあ、その二人はどうなんだというツッコミが飛んで来るかもしれないが、二人は切っても切れない、いわゆる親友というものだ。二人と付き合うのは面倒とも思わないし。


「はあ……こんなに寒いのになぜ陽キャは元気なんだよ……」


 陽キャの生態が謎だ。いつ、どんなときでも元気で大声で周りの仲間と喋っている。


 そんなことを思っていると北風が吹き、俺の体を震わせる。


 早く家に帰りたい……と早足になりながら交差点に差し掛かると、信号が点滅を終え赤になってしまった。


「おい、まじかよ……」


 信号に怒りを覚えながら、スマホに目を落とし最近流行りの「セカステ」という音ゲーを起動する。

 タイトルコールを聞いていると、後ろから足音がした。


 音の速さから考えるに走っている。が、その足音はスピードを緩めることなくどんどんと近づいてくる。


 もう一度信号を確認するが赤のままだ。まさか……と最悪の事態が一瞬脳裏をよぎった。


 ……そして、そのまさかは現実となってしまった。


 おそらく急いでいて信号を見ていなかったんだろう。後ろから走ってきた子はそのまま横断歩道に飛び出した。


『ぷぷーーーー!!』


 車のクラクションが鳴り響き、飛び出した子は驚いて足を止め迫ってくる車の方を向いた。足がすくんで動けなくなっている。


 ……いつの間にか俺は走り出していた。


 なぜ走り出したのかわからない。この子は知らない子だし、交通事故で悲しい過去があったこともない。ただこれが人間の本能、そして自分のプライドというものなんだろう。


 女の子を助けるその一心でクラクションが鳴り響く交差点に俺は飛び出した。


「危ない!!」


 呆然と立ち尽くす女の子に車が当たらないよう押すようにしてかばった。そのまま横断歩道を突っ切って車の衝突を免れればよかったのだが、助けに行くのが遅かった。

 行動に移す前に俺と彼女は大きなブレーキ音をたてる乗用車にはねられてしまった。


「お……かっ……こふっ……」


 横腹にハンマー投げのあれで思い切り殴られたような強い衝撃が走り、気づけば宙に飛ばされ地面に叩きつけられていた。

 体は今まで味わったことのないような感覚だ。痛い、熱い、寒いが一体となって弱った体を襲う。

 頭の中は今までの記憶がフラッシュバックし走馬灯のようにぐるぐるしている。


 かばった彼女はというと俺の腕の中でうずくまっていた。


「お……い……大丈夫か……」


「…………」


 女の子に声をかけるが返事がない。


「……ちっくしょ」


 どんどんと体の力が抜けていき、視界もぼんやりとし始めた。


「おい!大丈夫か!?」


 あの車のドライバーらしき男の人が声をかけてくれる。


「……あ、え、う……」


「せめてこの子だけでも……」と伝えたいが、うまくしゃべることができない。


(俺……このまま死んじゃうのかな……この子だけでも……生きてほしいな)


 そんなことを願いながら、俺はその女の子を抱いたまま完全に意識を失った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ