3 愛スクール
美少女機械生命体のスーは頭脳から直接支持を出し、自分のコスチュームを赤いランドセルマシンの中に縮小して瞬間移動させることができた。
もちろん、同じように身体に戻すことも可能である。
そんな訳で、奈坊光歩も一瞬にしてこの世界用の服を着ることができた。
しかし、この世界用の服というのが黒い詰め襟の学生服で、光歩には少し大きめだったので袖やズボンの裾を捲って着用し、何故かカラーバレー(上履き)のレッドを穿いていた。
そんな彼の体調は回復し、寂れた裏通りの歓楽街をスーの後ろをついて行く。
もう夜が明けていて太陽に照らされて汗をかくと、詰め襟を脱いで白いワイシャツ姿になり邪魔なので上着を肩にかけた。
「何でまたこんな暑い時に、こんな暑苦しい黒い服なの?」
光歩は前を歩く赤いランドセルのスーに言った。
「見ての通りですよお!全身真っ黒なら目立たないと思って、スーが選んだんです」
「上着脱いじゃったから、上半身真っ白になっちゃったけど。スーには暑さは関係ないもんね。ところで、この赤と白の靴は何なの?」
「そのユニフォームにはお決まりの靴みたいです。何種類か色があったんですけど、赤がかわいいなあと思って」
「――目立たないで統一するなら、この靴ダメだと思うけど。何のユニフォームなの?」
「――ここのです。着きましたよ」
その薄汚れた4階建ての宿泊施設らしき建物には、「愛スクール」という一部修正してある看板が掲げてあった。
「記憶がなくなっても、覚えた文字とかって忘れないよね。――ここは、スーたちが平和を守る拠点にしてるくらいだから、人類愛を学ぶ場所っていう意味なのかな?」
「先にこの世界に来てた光歩の仲間が、使われてなかったんで買い取っちゃったそうです」
「愛スクール」の校門をイメージした自動ドアには張り紙があり、「閉校 この度、閉店させていただくことになりました。長い間ご愛顧いただき誠に有り難うございました。愛スクール校長(店主)」と書いてある。
「閉校――閉店?」
光歩がそう言うと、スーは自動ドアの前に立った。
「スーです。異世界潜入捜査官のコーフ・ナボーを無事に連れて帰りました」
「――スーちゃん、ご苦労さま。遅かったわね。苦戦したの?」
と女子の声で返事があると自動ドアが開いた。
入口を通ると天井の照明が明るくなり、エントランスに消灯したフロントパネルがあった。
光歩はフロントパネルを見て、
「普通教室、理科室、音楽室、美術室、保健室、図書室、体育館――幼稚園?」
「莉音が3年A組にいるんで行きましょ」
「リオン?」
2人はエレベーターに乗った。
2階で降りると、壁に「普通教室」と書いてあり、廊下を歩いて行くと1年から3年まで部屋が用意されていた。
スーは、3年A組のドアを開ける。
室内はミニ教室になっており、学校机と椅子が二組あって、教壇に黒板――隣のスペースにはダブルベッドがあり、その上にミニスカセーラー服の少女がうつ伏せになり白ハイソックスの両脚を曲げて漫画を読んでいた。
「莉音、コーフ・ナボーを連れて来たよ」
「あ、は~い!」
莉音はダブルベッドから飛び起きると、メガネをかけた美少女で、赤いリボンの下のEカップバストを揺らしながら急いで二人の前にやって来る。
「ナボー先輩、お久しぶりです!今は18歳ですが、異世界潜入捜査官のリオン・メイソーです。この世界では明荘莉音でよろしくお願いします」
「あ~いや~、初めまして、じゃないみたいですね。コーフ・ナボーで、こっちでは奈坊光歩らしいです。よろしくです。でも、ボクを先輩って~?」
「私も、この世界に来たら10歳若くなってました。だからって、まだ28歳じゃありませんよ。コンナンスでは22歳の新卒捜査官だったんですけど。異世界にいると、急に成長したり子供に戻ったり個人差があるみたいで、今は18歳で落ち着いていますが、またいつ12歳になったり、それ以下になるか分りません。年齢判断は、スーたちがやってくれます」
「記憶は戻ってるんですね!ボクもいつか記憶が戻るんだ。安心した」
「それが、ねえスー」
「記憶の方も個人差があるんですよお。前に来た人で、記憶が戻らないだけならまだいいんですけど、スーたちのことを信じないし、美少女魔獣物体を見たら『オレは病気だあ』とか言い出しちゃって、返ってもらったことがありました」
「それは不安だなあ。他に仲間はいないんですか?」
「この前、ここに長くいた先輩捜査官が食べられてしまったんです。最近来た人は、脳味噌が飛び出しちゃったんで返っちゃいました。あっちで、人工細胞で修復してまた戻って来るかは未定です。他の異世界も大変みたいで、人員を回してもらえそうにないですね」
「でも、スーのお姉ちゃんたちがいますよ」
「そうそう、紹介しないとね」
「何処にいるの?」
「スーが遅いから上でオヤツ食べてる。私は心配してたんだよ。強かったの?」
「それはボクが悪いんです。何か体調があまり良くなかったんで、良くするために運動がてら歩いて帰ろうって言ったんです。あのままじゃあ、逃げることもできなかったんで」
「でも、スー危険じゃない?歩いてる途中でまた襲われたら」
「スーが選んだその服が良かったみたい。ここまで、誰にも襲われませんでしたあ」
「というか、ボクが小物だったんで、そんなに興味を持ってもらえなかったんじゃあ?」
「そんなことありません!スー、今度からちゃんと連絡してね」
「はあ~い!」
3人はエレベーターに乗り、4階にいるスーの姉たちに会いに行く。
エレベーターから降りると、壁に「幼稚園」は左、「保健室」「図書室」「体育館」は右と矢印があって、莉音を先頭に右へ歩いた。
莉音は、保健室のドアを開ける。
室内は殺風景なミニ保険室になっており、保険室の先生が使うような片袖机などがあって――隣のスペースにはカーテンで仕切れるシングルベッドが2床あり、その上には二人の幼い美少女の金髪ショートが仰向け、青髪ミディアムがうつ伏せになって寝ていた。一部色違いのスーとお揃いのコスチュームを着た彼女たちのスカートの奥から専用コードが伸びていて、その先が床にある延長コードの電源タップのUSBコンセントに差してあった。それは、機械美少女たちが頬を赤らめて、充電するように電気を体内に取り込んで味わっている姿だった。
「何やってるんですか?この子たち!」
光歩には異様な光景に見えてしまった。
「オヤツですよお!スーも欲しい」
そう言うと、スーの掌に専用コードが現れた。背中のランドセルマシンから瞬間移動して来たのだろう。そして、速やかにパンツを脱ぐと、専用コードの先にあるプラグをスカートの奥の何処か分らないがグッ!と差し込んだ。
「この世界の電気は粗悪でクセになるくらい美味しいんだそうです。この世界のジャンクフードみたいなものなんでしょうね」
莉音が説明していると、スーは専用コードのプラグをUSBコンセントに差し込んで頬を赤らめるとその場にへたり込んだ。
「ジャンクフード!?」
光歩は、恍惚としたスーの姿を見て言った。
「スーたちには充電なんて必要ないんです。でも、敵と戦って損傷した時のために、補給できるようになってるみたいです」
「今は損傷してませんよね?溜めておけるのかな?」
「奈坊先輩、もう敬語はやめてください!」
「――先輩扱いされても、何も覚えてないから役に立ちませんよ。リオンさんの方が、この世界の先輩なんだからボクにいろいろ教えて下さい」
「……本当にいろいろ教えて、いいんですか?」
莉音は頬を紅潮させて、自分より若くなった光歩の顔を見た。
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