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第二回小説家になろうラジオ大賞 投稿作品

偽物のココロ

作者: 衣谷強

なろうラジオ大賞2第九弾。今回のテーマは「偽物」です。今回は描きたいものに合うテーマを選んだだけなので、趣味は封印。

人工知能に感情が宿るって非科学的と言う人もいますけど、日本人って元々自然や無機物に人格添付するの大好きだから仕方ないと思うのです。

お気楽にお読みいただければ幸いです。

「ご主人様。本日の仕事は全て終了致しました」

「ご苦労」


 良い時代になったものだ。AIを搭載した人型ロボットが、家事の何もかもをやってくれるとは。しかも女性メイド型とはよく分かっている。


「他に仕事は御座いますか?」

「いや、特にない。夕食の時間まで好きに過ごすといい」

「好きに、過ごす……」


 メイドは動きを止めた。何の気無しに言ってしまったが、AIに『好きに過ごせ』なんて言ったら、エラー起こしたりするのか?


「では私の機能を高める許可を頂けますか?」


 成程、そう来たか。


「あぁ、構わない」


 テレビでもネットでも好きな媒体を使えばいい。


「有難う御座います。ではご主人様に伺います」


 私に? そうか、ユーザーの好みに合わせようという配慮か。


「何だ?」

「ご主人様は先週の金曜日にお出ししたカレーに、どんな不満をお持ちでしたか?」


 え。


「味、栄養価、共に問題は無かった筈です。事実ご主人様は完食されました。しかし食後の表情は満腹では無く、満たされないご様子でした」

「あ、あれは何というか、その」

「私はこれまでご主人様の行動を学習して参りました。予測精度は現在80%を前後しております」

「凄いじゃないか。いつも助かっている」

「有難う御座います。ですが100%では無いのです」


 機械ゆえの完璧主義か? 圧が凄い!


「ご主人様の100%になる為に情報が必要です。お答え下さい」


 そ、そう言われても、昔の恋人が作った味に似てたから、とは言いにくい。


「給食のカレーを思い出したからかな」

「脈拍、脳波、顔の血管の拡張具合から見て、真実で無いと判断しました」


 う、ナチュラルに嘘発見器を使ってくるとは。


「……昔の恋人に、作ってもらったカレーに、味が似てて、その、ちょっと、思い出して……」

「左様で御座いましたか」


 何だこの緊迫感。してないのに浮気をしてた気分!


「今後は如何致しましょう」

「な、何を?」

「カレーの味付けは昔の恋人の味に近付けますか? それとも別の味に致しますか?」


 何聞かれてるの俺!?


「べ、別の味で……」

「畏まりました」


 一礼するメイド。助かった、のか……?


「今後もご主人様の100%を目指して参ります」

「あ、ありがとう」


 仕様なのか、エラーなのか、感情が無いはずのメイドが今浮かべた表情は、確かに笑顔だった。昔より今を選んだ事に喜ぶ恋人のような……。

 いやいや、機械にそんなものがあるはずがない。俺は頭を振って、馬鹿な考えを頭から追い出した。

読了ありがとうございました。

実際にこんなロボットが実装されたら、いかがわしい事に使う人間が激増して社会問題にまでなると思います。そして少子化が加速。人工知能に世界を滅ぼさせるならこれが一番早いと思います。

ではまた次回作でお会いしましょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初は泰然自若としていたご主人様が徐々にメイドロボの圧に押されてあわあわしていくところ。 なんだか可愛いなぁとほっこりしました。 趣味は封印されたと仰ってるのに、甘さを感じるのが大好きで…
[一言] 完璧過ぎて怖い(笑)
[良い点] するする読みやすい文章でした。 銀魂というマンガの「たま」というロボのキャラで脳内再生されました。 面白かったです。
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