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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『電車おばさん』

今回の話はフィクションです。

駅の線路下から投稿しました。

前回、作品を投稿してから、友達が八人に増えました。


 私の利用しているM駅のホームには、『電車おばさん』という方がいる。

 二十代後半くらいの女性で、水色のボロボロのワンピースを着ている。背丈は女性にしては大きく約一七五cm。髪はぼさぼさで、近づくと腐乱臭のような異臭がするのだ。

『電車おばさん』の名前の由来だが、これは小学生がそう発していたから、自然とみんなも呼ぶようになった。


「ねぇ、あれって『電車おばさん』じゃない?」

「あ、ホントだ! ていうか、私。今日の朝見たよ」

「え? じゃあ朝から今の夜七時半までずっとホームに立ってたの? なんか怖いわ」


 近くで女子高生の話声が聞こえてきた。

 彼女はただ立ち続けているわけではない。以前、乗客が黄色い線の外側にいた際に、危険だと注意していた姿を見たことがある。決して誰かに危害を加えようとはしない。マナー違反の乗客に対し警告を促す。

 彼女の不気味さや身体から漂う異臭を嫌がってか、忠告を受けた者は素直に言うことを聞く。まぁ、大概はその場から立ち去るのだが。

 

 『電車おばさん』について、不可解な点がある。彼女は二両目にしか姿を見せない。他の車両でマナー違反を起こしている客がいても、そこまで足を運ぶことはないし、注意をすることもない。二両目の黄色い線にだけ拘っている。

 駅員は、彼女を認識しているようだが、業務妨害をしているわけではないので黙認している。


 ある日のことだ。

 私は、普段通りに仕事を終えて、ホームの三両目で電車を待っていた。

 時刻は午後七時二十分。二両目には、当然彼女の姿があった。


「またいるのか。よく毎日何時間も立ってられるよな~」


 電車が来るまであと二、三分。スマホを見て時間を潰そうと、ポケットに手を入れた時だ。


「あの、黄色い線の外側は危ないので、下がってください」

「は? 何なのお前。誰だよ。ってか、臭いんだよ! どっか行けや!」

「……黄色い線の内側に下がってください。危ないから」

「うるせーんだよ。俺に命令すんな! お前気持ち悪いんだよ」


 ふと、隣に目をやると、『電車おばさん』と若い男が言い争いをしていた。

 私を含め、周囲の者が彼女たちを傍観していた。しかし、誰一人、駅員までもが仲裁に入ることはなかった。


「そこにいたら、電車に轢かれてしまい――」

「うるせーって言ってんだよ!! 何度もしつこいんだよ。消えろ、ばばぁ」


 二人のやり取りを見ているうちに電車がやって来た。

 

「俺は今こんなところで死なねーんだよ。わかったか、ばばぁ」


 電車が二両目に差し掛かり、男が彼女に背を向けたときだ。




「じゃあ、今死ねよ」




 彼女が男の背を押した。

 一瞬のことだった。男の姿が消えたと同時に、大量の血が辺りに飛び散った。

 私の足に生温かいものが纏わりついていた。

 周囲が混乱する中、『電車おばさん』に目を向けたが、彼女はいなくなっていた。



 あれから二ヶ月が過ぎた。警察は彼女を指名手配し、捜索しているが、未だ発見に至っていない。あの一件がトラウマで、私はM駅の一つ前のN駅を利用するようになった。


 ある日の仕事帰り、N駅で点検作業が行われた。それにより電車に大幅な遅延が起きていた。気は乗らなかったが、仕方なくM駅で帰ろうと、三両目のホームで待っていた。


「ねぇ、あれって『電車おじさん』じゃない?」

「あ、ホントだ! ていうか、私。今日の朝見たよ」

「え? じゃあ朝から今の夜七時半までずっとホームに立ってたの? なんか怖いわ」

 

 近くで女子高生の話し声が聞こえてきた。

 ふと二両目を見ると、そこには二ヶ月前に轢かれて亡くなった男が立っていた。


僕はまだM駅にいます。

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