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甦りし者たち?幻想をブチ壊せ!

「さあ、殿下。お命頂戴いたしま……お、おい!」

「この私の手で殿下の最期を……あらら?」


ジャンゴは着ていた背広を投げ捨て、上半身裸で巨体を誇示。

パルタは魔法の杖モドキを振り回す!

……のだが、くっつきすぎて、しかも息が合わない。

だから、手足がぶつかったりして決めポーズが全然決まらない。


「ちょっと、ジャンゴ!近すぎよ」

「パルタ、お前こそ邪魔すんな!」



弾太郎はルパルスをかばいつつも、それ以上は動けなかった。

ルパルスも部下、いや今は恐るべき暗殺者を前に動くことができない。


(どうしよう……)

「って、邪魔っていってるだろ!どけよ、パルタ」

(早くルパルス王子を避難させなきゃいけないのに)

「アンタこそどきなさいよ!ここは私の猛毒霧幻陣(ポイズン・フィールド)で」

(今、ここを離れたら)

「いや、俺様の針千本(サウザンニードル)アタックで!!」

(この一生懸命な人たちに悪い気がする!)


敵がさっぱりダメダメな連中なのだが。

ダメダメすぎて見捨てるのは気が引けた。

このまま置いてきぼりにするのは可哀そうすぎた。


「危ないじゃない、体中から針なんか突き出して!」

「そっちこそ毒薬入りスプレーなんか振り回すな、馬鹿女!」

「馬鹿ですってェ?鉄道マニアのネクラオタクにいわれたかないわね!」

「鉄道をバカにするなぁ!お前こそブランド物にハマりすぎてカード破産寸前だろうが!」


見苦しく罵りあうジャンゴとパルタを見て、途方に暮れる弾太郎。

相変わらずニヤニヤしながら楽しそうに見物を決め込むルパルス王子。

眉間に深いしわを寄せる苦悩するハイエン侍従長。

ジンは興味深そうに、ルキィは理解できてないけど真剣な目で暗殺者同士の舌戦を見ていた。


「こ、こら近寄んな!」

「アンタこそ、アーッ!?」

パリン!パシャッ…………

「……?」「……!」


パルタの毒スプレーの瓶がジャンゴのトゲトゲに刺さって割れた。

飛び散った青い液体を浴びて呆然とするパルタとジャンゴ。

ハッ我に返るとやっぱり大騒ぎを始めた。


「キャーッ?げ、解毒剤、解毒剤!」

「お、俺にも寄こせ、俺にも!!」

「ああーっ、手、手が痺れてきたぁ?」

「あーッ、落とすな!こぼすなぁ?」


見ている弾太郎たちの方がげんなりしてきた。

呆れる、というレベルはとっくに通り越している。

気を使ったハイエンが声をかけてきた。


「お恥ずかしいところをお見せしております。えっと、弾太郎様?」

「あ、いえ……お構いなく」

「殿下、とりあえず宇宙空港まで戻りましょう」

「うーん、ジャンゴとパルタの漫才はここからが面白いんだけど……」

「では、皆様。殿下がご迷惑をおかけしましたが、後日改めまして……ヒョェッ?」


醜く、いや、みっともなく争うジャンゴとパルタを放置して、一同が引き上げようとした時だった。

ハイエンがびっくりして飛び上がった。

いきなり足元の地面が音もなく赤熱して煙を上げたのだ。

振り返ると少し離れた場所に見覚えのある一団がいた。


「へ、へへへ。に、逃がさねぇぞ、コラ」

「あ、あなたたちは衝撃清掃の……麻痺銃が効かなかったのか?」


弾太郎が驚いたことに、倒したはずの衝撃清掃全員が、社長を先頭に追ってきていた。

あと1時間は動けぬように念入りに麻痺銃(パラライザ)を打ち込んだはずなのに。

意外な敵の思わぬ復活にジンが思わず歯軋(はぎし)りする。


「おのれェッ!貴様らァッ、死んだのではなかったのカ?」

「ちょっとちょっと、ジン!それ悪役のセリフ……」


必要以上のノリをみせるジンを弾太郎が止めようとするが。

その上に敵はさらにノッてきた。


「フッ、地獄の底から舞い戻ってきたのよ、コイツのおかげでなぁ!」

「オオッー!!!」×18


衝撃組の全員がにやりと笑って胸元に手を突っ込み、何かを取り出して見せた。

それは赤い液体が入った小瓶。

もしや?麻痺銃の威力をも打ち消す違法薬物か?

その正体に気づいた弾太郎が驚愕する!


「レッド……レッドまむしドリンク?」

「おうよ、大晦日ギリ大掃除依頼10件ブッキングも!地獄の完徹3連チャンも!俺たちゃこれ一本で乗り切ってきたのよ」

「オオーッ!」×18


弾太郎は頭痛と脱力感を同時に感じていた。

隣を見るとジンも同じ状態らしく、こめかみを指で押さえて苦悩していた。

麻痺銃とはいえ、自分たちの標準装備は市販スタミナドリンクにすら及ばないというのか?

さらにその隣では、ルキィがやはり驚愕の表情を……?

いやルキィだけではない!暗殺のプロ、ジャンゴとパルタも驚いているぞ?


「恐るべし、地球文明!神経電流阻害フィールドを無効化する薬物を開発していたとは」

「ルキィさん、それ違……いい、何でもない……」

「ぬう……薬物併用とはいえ、どれほど修行を積めば麻痺を自力解除できる精神力を?」

「ジャンゴさん、修行ってわけじゃ……何でもないです」

「これでは私の秘蔵の毒も効くかどうか……」

「パルタさん、その心配はないと……いいや、もう疲れた」


敵にまでツッコまずにはいられないツッコミ体質の弾太郎だが。

疲労の色が濃い、限界は近かった。

この時、弾太郎の積み重なる精神的疲労を冷静に観察する者がいた。

弾太郎の親友を自認する男、ジンだ。

感情を外には出さなかったが、少しずつ追い詰められていく弾太郎のダメージを機械のように正確に計っていた。

そして動いた。


(フフフ、予定とはだいぶ違ったが……弾太郎!君を精神的に追い詰め、危機感を煽り立てて、ルキィさんとの絆を強くする『吊り橋効果作戦』!ついに最後の一手を打つ時がきたようだな)


一瞬だけジンの方を見たルパルスに目配せし、衝撃組組ちょ……社長を睨みつけながら弾太郎の背後へ回り込む。

そんなジンの動きにまだ衝撃組……衝撃清掃の面々は気づかない。

彼らの目は、弾太郎に……いいや!とっても可憐な美少女メイドさんに釘付けだった。


「あ、あの、なんで僕ばっかりみるですか?」

「フッ…………お嬢ちゃんの色仕掛けなんざ通じねぇってことだぜ」

「あ、あれは……色仕掛けなんかじゃ」

「ククク、疑うんなら、もう一回やってみな」

「えっ……?!」


何かがおかしい。

聞いただけでは単なる挑発だが、ならば……なぜ、この社長は、こんなに目をキラキラさせているのか?


「な、なんで、あなたたち……そんな、嬉しそうに……」

「社長のいう通り、すぐにでも受けてやるぜ!」

「おうよ、何度やっても通じねぇから試してみやがれ!」

「一回じゃ足りねぇ、何度でも見てやるぜぇ!」

「フフ、シャッターチャンスは絶対逃さねぇ」


弾太郎は絶句した。

社長の背後、社員さんたちも煽ってくる。

しかも全員が目を期待にキラキラさせて、鼻息を荒くして。

何人かはスマホをこちらに向けて撮影準備も万端だ。

弾太郎の背筋を、冷たくおぞましい感覚が走った。

目を逸らそうとしてジャンゴとパルタの視線と合った。

二人とも警戒の目を向けていた、何か……不気味な物を見る目で。


(コイツ、何か得体の知れない技を?)

(やはり、地球には未知の力が隠されて?)

「ち、違います!僕はそんなんじゃ……」


助けを求めるようにルキィの方を見ると。


「わかりました。ダンタロさん、見せつけてやりましょう!」

「ルキィさんまで?違うから、見せつけるものじゃないから!」


ルキィの背後からヒョコッと顔を出したのはルパルス王子だ。


「弾太郎さん、遠慮は要りません!今こそ真の実力(ちから)を」

「そんなもんありませんよ、ルパルス殿下!」


それでも変な期待してくるルパルスをハイエン侍従長が慌てて引き戻した。


「弾太郎様、この場はお任せ致します!」

「何をやれっていうんですかぁ?ハイエンさんまで!」


既に悲鳴に達していた弾太郎の声が裏返った。

敵も味方も弾太郎に注目、いや熱視線を集中させ完全に包囲している。

この場に変な期待とか勘違いとかしている奴はいないのか?

いた!一人だけ、混乱した現場を鋭い目で冷ややかに見詰める者が。


「ジン!……ジン?」


黙したまま敵を睨み据える金髪の美青年。

その強烈な存在感に一瞬ではあったが、衆目はジンに集中した。

集中する視線を受けてジンは不敵に笑った。


(一度はやりたかったお忍び要人の警護)


一歩一歩近づきながらジンは一人一人の顔を確認する。


(防衛警官の『頼もしさ』を。どれ程頼もしいかを世間に知らしめたかった!!)


不安そうな弾太郎、闘志満々のルキィ、オロオロするハイエン、実に楽し気なルパルス。


(怪獣が相手でも、マフィア相手でも―――)

(一切の文句を言うつもりはなかった)


警戒しすぎて動けないジャンゴ、行動を決めかねているパルタ、そして。


(なかったけどさ―――)

(どーよこれ?)


衝撃組組ちょ……社長がどうした?

子供のように瞳を輝かせ、キュッと握りしめた手は闘志ではなく希望を秘めている……

その息子、副社長もまた弾太郎に熱いまなざしを送っている。

さらにその部下たちは挑発ならぬアンコールを送っているではないか!


(ええ…?アイドルの追っかけだよ。このオッサンども!!)

(おいおい、なんて表情だい……!?)

(コンサートに集まった親衛隊の風情じゃねーかッッ)


最早、ここにいるのはテロリストでも暗殺者でもない。

熱烈なファン、というか黒メイドさん教信者さんの団体だった!


(ああまで期待満々だと―――心苦しくはあるが……)

(しゃーねェやッ)

幻想(ゆめ) 破壊(こわ)すぜ)


弾太郎の肩を掴んで、張り上げる一言。


「あのさー、コイツ…………男なんだけド?」


ここから先は当事者に心情を語っていただこう!

……衝撃清掃の社長はコメントする。


「最初はアレでした」

「貧血か……!?って」


衝撃組の皆さんの顔から血の気がスゥーッと、音を立てて引いていく。

足元をふらつかせ、壊れたゼンマイ人形みたいな硬い動作でギギッと、全員が一斉に首を弾太郎に向けた。


「痺れっつーか……」

「……重量(おも)さ?」

「足元にきましたもン」


そんな衝撃清掃の皆さんに対し、弾太郎は一言も発せず……恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、手を合わせて、何度も何度もゴメンナサイしていた。

それを見て残酷な現実を理解(わかっ)ったのだろう。

呆然と立ち尽くしていた男たちが次々と膝から崩れていく。


「自分より遥かにデカい『男の娘』って文字に…?」

「のし掛かられているような…?」


心象風景の中。

彼ら一人一人の背に『男の娘』とデカデカと書かれた巨大な看板が落下してくる。

屈強な男たちの体格を数倍上回る巨大な『男の娘』を跳ね返そうと、必死に抗う!

しかし己の何十倍もの重量(おもさ)に耐えきれなくなった者が次々と倒れていく……


「イヤでも気付きますって」

「これはもう『聞き間違い』って問題じゃないねぇわ!!」


一応言っておく!

『男』という言葉に最初から聞き違える余地はない!

まあ……『男の子』と『男の娘』だと聞いてもわかんないけどね―――。


「とっ捕まえてスカートめくり一パツ…?」

「そんな余裕こいたもんじゃないッスよ」


既にテロリストから小学生レベルのセクハラ犯に格下げか?

けれどスカートめくりはココロときめく少年の日のロマンだ!

余裕はなくてもメイドさんのスカートの中には夢と希望と憧れがある!!

まぁ頑張れよ、衝撃組の皆さん!


「そう―――」

「あれは緊急事態でした」


確かに『美少女メイドさん』のハズが……男の娘だったら!

確かにコイツは緊急事態だゼ……って、緊急事態でいいのかなぁ?


「と……ッころがあのパツ金の若造ときたら―――」

「パニクった俺らの暴発を―――」

「待ってたっつーんですから―――」

「たまらんスよねぇ……」

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