表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/181

今、必殺の!?

「おいおい、お前ら。随分と遅かったじゃないか?すぐに撮りはじめ……」

パチッ!


2、3歩、踏み出しかけた撮影監督の足元が弾けた。

一瞬遅れで青い炎が吹き上げ、腰が抜けた監督はヘナヘナと座り込んだ。


「えっ?えっ!なに、その銃……ホンモノなの?」

「う、動くんじゃねーよ。大人しくしてりゃみ、み、見逃してやらんこともねーこともねーぞ?」


戦闘を歩いていた小太りの男の銃口から、陽炎のような揺らめきが立ち上っていた。

ドクロ覆面で分かりにくいが吊り上がった口元からすると、嘲笑っているつもりなのだろう。

声は愉しそうに装っているが、どう聞いても震えている。

銃の威力が思ってたより強力すぎて、打った本人がビビっているらしい。

ブシドーとキシドーが監督をかばうように前へ、しかし弾太郎がさらに前へ。


「おい、弾太郎君!危ないぞ、下がれ……」

「そちらこそ下がってください、ブシドーさん!ここからは僕らの仕事場です」

「お、おい、弾太郎く……」


ブシドーは声をかけるのをやめた。

小柄な弾太郎の小さな背中は決して力強くも、頼もしくもなかった。

それでも伝わってくるものがあった。


「……キシドー、下がるぞ」

「ちょちょちょっと、師匠!いくら警官だからって危な……」

「いいから。ここは弾太郎たちに任せようぜ。フフフ、声と足が震えていなけりゃもっと頼もしかったんだがなぁ」


ブシドーたちは腰を抜かした撮影監督を引きずって、ライトバンの後ろに下がった。

横目で見ていたジンも少しだけ口元がゆるむが、たちまち険しい表情に戻る。

敵の戦闘員たちはすぐに襲ってきたりはしなかった。

もたつきながら半円形に散開して弾太郎たちを包囲しようとしている。

弾太郎は一応確認してみた。


「ジン、ルキィさん。一応聞くけど、こっちの武器は」

「麻痺銃と伸縮式警棒だけだネー」

「あとは、勇気だけです!」


ガッツポーズのルキィだが、彼女が参戦する時点で戦力的には敵を圧倒している。

人間態とはいっても怪獣パワーをもってすれば、敵は強力とはいえ対人兵器程度しかない素人。

全く勝負にならないだろう。

そんな無駄な戦力を差し向けてきた理由はただひとつ。


「時間稼ぎとういことだね……」

「ああ、本命が来るまでの当て馬だネ」


しかし当て馬といっても撮影スタッフ全員を銃弾の雨から守り切るのは至難。

既に相手の一人が大型火器をこちらに向けている。

敵の注意を引きつけなければ……しかしでもどうやって?


「そこのあなたたちィッ!大人しく降参しなさぁいッ!」


間近で発生した大音響に弾太郎は思わず耳を押さえた。

大声の主は言わずと知れたゴズラ着ぐるみ娘のルキィだ。

当然、敵味方全員の注目が彼女に集中する。


「姑息な覆面で正体を隠したつもりでしょうけど!私の目は誤魔化されませんよ……」


エッヘンと胸を張り、ルキィは余裕たっぷりに宣言する。

ピシッと悪党どもを指さすと、気押されたのか全員が一歩下がった。

そして、たたみかけるような驚きの一声。


「あなたたちの正体は……有限会社・衝撃清掃の皆さんですね?」

「な、なにぃ?どーしてわかったんだ!」


例の小太り覆面男が動揺して自分から認めてしまった。

他の組員、じゃなくて社員の皆さんにも動揺が広がっていく。


「フッフッフッ……外道照身!霊破光線!……ルパルス君、お願いね」

「了解!」


ルキィの背後にいたルパルスがコソコソと、落ちていた撮影用のライトを拾った。

電源を入れると昼間でも見えるほど強烈な青い光が一同の頭上を越え、襲撃者たちの間を抜けてさらに後方へ。

青い光が照らしだしたのは襲撃者たちが乗ってきたマイクロバス。

その側面には血のように赤い文字が!


『あなたの街をキレイにします!有限会社 衝撃清掃』

「汝の正体みたり! ゆーげん会社のしょーげき清掃さんッッッ!」

「ばぁれたかぁ〜、じゃねぇ、誰だッ?社名デカデカ書いたマイクロバス使いやがったのはッ!」

「イヤ、それは親父……社長の指示だったろ」

「エッ、そうだっけ?」

「ほら、宣伝も兼ねてるからって」

「あ…………」


ドヤ顔決めるルキィとサムズアップしてるルパルスと。

オーバーリアクションでうろたえる親分、もとい、社長と頭を抱えて悩む副社長以下の社員たちと。

あきれ顔の弾太郎と同じくジン……いやジンだけは真剣な顔で襲撃者たちをにらんでいるぞ?


「まさか、衝撃清掃がくるとハ……」

「衝撃清掃……知っているのか、ジン?」

「元・広域暴力を更生させて清掃業を始めた、という触れ込みの会社でス。

パチンコ屋、市役所、学校、管理会社……彼らに清掃を依頼する者は街中にいまス。

一度だけ事務所をガサ入れしましたガ、スケジュール表はドブ掃除だらケ。

それは裏の仕事依頼が全然こないので、駅前のビラ配りで獲得したお仕事……

市民の皆さんの注目を集めているのでス。

だから『懇切丁寧な街の便利屋さん』に見えるのでス」

「…………そんな掃除屋さんに僕らは狙われてしまった、と?」

「おそらク……」


内情に詳しい解説に最初は青ざめていた衝撃清掃社長だった、のだが。

詳しすぎる解説に怒りが込み上げてきたらしい、覆面の下の顔色は真っ赤だろう。


「てめェら……絶対に……コロス…………」


ふてぶてしく見えて、意外と傷つきやすいらしい。


「と、とにかく!ブシドーさんや撮影スタッフさんたちを逃がさなきゃ」

「ならば……こういう作戦はどうでしょうか?」


ルパルス王子が背後から声をかけてきた。

それも緊張してではなく、不気味なくらいのニコニコ顔だ。

嫌な予感を感じて弾太郎は一歩引いたが、ジンの方はニヤリと笑って耳を寄せる。

全員が頭を寄せ合ってなにやらゴニョゴニョ……


「……ほほう、それはナイスなアイデアだネ」

「それ、いけます!イケますよー!」

「あ、あのね、みんな……それ本気でいってるの?」

「とにかく、やってみましょう!」


やる気満々のルパルスを中心にジンと弾太郎、ルキィと運転手(ゲン爺)が一列に並んで揃い踏み!

一種独特の威圧感に襲撃者たちが躊躇った一瞬、ルパルスがドンと足を踏み鳴らす。


「威光全開、七光り!ゴエイプリンス!」


歌舞伎役者さながらの大見得に、敵は何が起きたのか理解できなかったのだろう。

続くルキィとジンの口上を呆然と聞くしかできなかった。


「元気全開、ゴズラ様万歳!ゴエイゴズラ!」

「恋心全開、全ての女性に!ゴエイナイト!」


天に向かって雄叫び上げる大怪獣ゴズラポーズ!

つま先立ちで半身ひねるファッションモデルっぽい奇妙なジョジョ立ち!

異常な迫力を目の前に、衝撃組の面々はもう言葉もない……半数は呆れて声もないんだけど。

次の順番が回ってきた老運転手(ゲン爺)はどうしたらいいものかとオロオロしていた。

とにかくなんか決めポーズを、ということでハンドルを切ってアクセル踏むモノマネで誤魔化した。


「え、エンジン全開、安全運転!ご、ごえいどらいぶ……こんなんでよろしいですか、坊ちゃん?」

「あ、うん。そんなもんでいいと思う。で、僕は……ええーっ、こんなの?」

「ダンタロさん、早く早く!」


ルパルスが渡したカンニング・ペーパーの内容に弾太郎は引きつった。

躊躇う弾太郎をルパルスが(実に楽し気に)急き立てる。

仕方なく、スカートの端を両手でつまんで、ニッコリ笑顔でお嬢様風ご挨拶。


「えっと……カワイさ全開、アナタにご奉仕!ゴエイメイド!」

「オオーッ!!!」×18名


何故か衝撃組全員のどよめきが応えてくれた!

最後は5人全員ポーズを決めて。

ドッドォーン!背後に五色の爆炎の花が咲く!


「5人そろって!ゴエイジャー!!!」


★☆★☆★☆★☆★

「弾太郎君、いや、弾太郎!見事に決まったな……」

「でもセンスが古くないっスか、師匠?」

「そう思うのはな、お前がまだまだヒヨッコだってことだ」


ライトバンの中に避難していたブシドーたち撮影隊は怯えながらも声援を送っていた。

撃たれないように頭を下げて隠れながら、小さなモニターで外の様子を伺っていたのだ。

外に置きっぱなしのカメラと空撮用ドローン数台を使えたのは幸運だった。


「だ、だだだ大丈夫なのか?あんなオフザケな連中でホントに大丈夫なのか?」

「数じゃ劣勢ですが押しているのは弾太郎の方ですよ、監督」


ガタガタ震えてる他のスタッフと違って、ブシドーとキシドーは余裕すら感じさせる落ち着きだ。

カメラマンに促して弾太郎たちのアップをドローンで撮らせる。

凛々しい?メイド姿の男の娘の横画を見ながら感慨深げに、そして少し寂し気にブシドーはうなだれた。


「しかし……センターはアカじゃないのか……やっぱ俺らとは『時代が違う』のかなぁ?」

「あ、でもホラ。どうやらアレ、やるみたいですよ!」

「オッ?アレをやるか!」


★☆★☆★☆★☆★

「弾太郎さん、敵は狼狽しています!今がアレのチャンスです!」

「えっ、アレって?」


ルパルスの発言に弾太郎は戸惑った。

いきなりアレなどといわれても何のことだかわからない。

するとジンがニヤリと笑って足元を指さす。

足元にはサッカーボールが一個、転がっていた。

多分、スタッフが撮影の合間の気分転換に遊んでいたのだろう。

そのボールを見て弾太郎は意味を悟った。


「やるの?アレ……」

「もちろんだとも、みんな期待していル……弾太郎からスタートだヨ」

「って、アレはフツーは紅一点からスタートじゃないの?」

「まーまー、敵も期待しているみたいだしネ」


一方、衝撃組は弾太郎たちの『名乗り』を見て、攻撃することも忘れて呆然としていた。

一斉射撃で片付く仕事のハズがつい見惚れてしまっていた。

特に最後のメイドさんは大好評、社長自ら歓声を上げていたくらいだ。

とはいえ、自分たちの行動に疑問を感じなかったわけではない。

若頭、失礼、営業部長がビクつきながら声をかけた。


「あの、組長……」

ゴキッ!

「……社長、いいですか?撃たなくて」

「うるさいな、わかっとるわい。よし、ぶっ放せ……あ、あのメイドさんはその、外しても」

「お、おい、親父……」

バキッ!

「……社長、あいつら、バレーだかサッカーだか始めたぜ?」

「何だと?」


納得できない弾太郎だったが、しぶしぶサッカーボールを手にしていた。


「……じゃあ、いくよ?えっと、ルキィさ……ゴズラ!」


弾太郎のバレー式のサーブからスタート、ボールはルキィの頭上へ。


「まかせんしゃい、ですッ!ドライブ!」


ゴズラ着ぐるみの華麗?でパワフルなヘディングでルキィィから老運転手(ゲン爺)へ。


「えっ、わし?っとっとっと!オーライ、ナイト殿!」


わけがわからぬまま老運転手(ゲン爺)は頼りないレシーブでボールをジンへ。


「OK!プリンス!」


Jリーガー並みの見事なリフティングで受け取り、ルパルスに華麗にパス!


「フニッシュッ!!!」


蹴りこんだ!小柄な体で鋭いシュート!

……と思ったんだが、蹴り損ねたヘロヘロシュートがヘロヘロヘロ~と落下。

ボールが落ちた先には置き去りにされた撮影機材があった。

その中の大型扇風機に、大嵐のような強風の演出に使うアレだが、ボールがぶつかり電源が入った。

ブォォォォォッ!っと巻き起こる強風は敵に、ではなく弾太郎たちの方へ!


「くっ、すいません。外しま……」「うわっ!」「きゃっ?」「わわわっ?」


突然の突風にルパルスたちの体勢が崩れた!

必殺技のハズが逆効果で大ピンチ!

逆巻く風は弾太郎の周りで渦を巻き、猛烈な上昇気流となった。


「ウワッ……?だ、ダメ!」

「オオーッ!!!」×18

「見ちゃダメェェェッ???」


弾太郎のうめきが突然悲鳴に変わった。

上昇気流はスカートの裾を真上に持ち上げ、その内側を露わにしてしまった。

目も明けていられない弾太郎たちと違い、衝撃組の面々は見た、見えてしまった。

神秘の垂れ幕(スカート)の向こうから現れた、赤と黒の羽を広げた蝶々(パンティ)を。


(見たか、アレ?)(おお、なんと美しい!)(天女様じゃ、天女様が降臨なされた!)(で、でもちょっとモッコリして見えないか?)(い、いや俺には見えないぞ)(そうだ、いや、違う?)


恐るべし最高齢にして最高峰デザイナー・福 櫂緒!

匠の技によって生み出された女性用下着(パンティ)は単純にモッコリを消し去るのではない。

角度によっては微妙な起伏を感じさせ、あるようにも、ないようにも見せかける。

見る者は男か女かに惑わされ、同時に美しさに魅了され視力のすべてを独占される。

しかも風に逆らって隠そうとする弾太郎の努力が『見たい』に一層の拍車をかける。

もはや目を離すことなどできない、まさに魔性の技を集大成したパンティであった!

……そして衝撃組全員は『可愛いメイドさん』が最悪の天災であることを思い知らされた。


ビカァァァッ!

「ウギャァッ?ま、まぶし……ッッッ」×18


『彗爆閃光』

スカートの内側に配された108個のストロボLEDによる強烈な閃光は、標的の網膜に過負荷を与え数分間だが視神経を無力化する。

サングラス程度では防げぬ光だが、恒久的なダメージを与えることはない。

しかし数分もの間、敵前で視力と思考力、行動力を失うこととなるのだ!

致命傷を一切与えぬ不殺の必殺技、それがゴエイジャーストームの正体だった。

ただし……この技は敵だけでなく、行使した者にも甚大なダメージを与えてしまう。


「な、なんで?どうして?僕が、こんな……」


虚空を見上げ、理解不能な状況に弾太郎は茫然自失。

二日続けてのスカートまくり被害者となってしまった、男なのに。

弾太郎の男としての自尊心は、音を立てて崩壊しようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ