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線路上の怪獣列車!

「終点、大波小波駅~……首都圏メトロ乗り換えは2番出口ぃ。関西方面へは3番へお回りください……」


運転手兼車掌さんのアナウンスとともに、列車はホームへ滑り込んだ。

ドアが左右に開き、乗り換えを急ぐ乗客たちは慌ただしく降りていく。


「ここで首都圏メトロへ乗り換えです、殿下、じゃなくてルパルス君」

「おぉ、ここが乗り換え駅ですか?宇宙空港よりもコンパクト設計ですね」


先頭に立った弾太郎は朝だというのにとっても疲れた声だった。

疲れさせた原因たちは必要以上に元気いっぱいだというのに。


「あの火山はなんですか、休火山?死火山?」

「富士山です。日本ブロックじゃ一番高い休火山です」

「あれが噂に聞くフジサン……なんと美しい」


末広がりの優美な稜線に向かって、ルパルス王子はパンパンと柏手してお辞儀した。

……富士山についてどんな噂があるのか不明だが、何か勘違いしているのは間違いない。

改札へ急ぐ人々が『異様な何かに遭遇した!』という感じで迂回して通り抜けていく。

それも当然だろうか。

ヘリのパイロットスーツ姿の金髪美形青年、ド派手なヒーローキャラシャツの青い髪の少年、何かが変なゴズラグッズ娘、はては長い髪をたなびかせたパジャマ姿の娘……じゃなくて男だが。

とにかく、あんまりお近づきになりたくないグループに違いない。


「ねーねー、おねーちゃん?」

「あのね、さっきもいったけど僕はね、お兄さんなの」


さっきまで一緒の列車に乗っていた男の子だった。

先を急ごうとするママさんの手を引っ張って、ちょっと照れ気味におねだりしてくる。

でもってママさんのスマホを勝手に取り出して。


「おねーちゃ、おにーちゃん???……みんなで、いっしょに、しゃしんー」

「写真?記念写真撮りたいの?」


うんうんと頷く男の子、弾太郎を見上げる顔がほんのり赤い。

……幼き初恋、かもしれない。

子供のお願いを断りたくなかったが、とにかくパジャマ姿を記念に残すのは恥ずかしい。


「い、いや、君のお母さんも急いでおられるようだし……」

「あ、あの、私は構いません……」


ママさんが恥ずかし気にチラチラと目をやる先では、ジンがスマホをいじってる。

……家庭崩壊しなきゃいいけど。

とりあえず、列車と富士山を背景に撮影することになった。、


「それじゃ誰かにシャッターを……」

「あ、車掌さーん!シャッター押してくださぁい」


列車から降りたばかりの運転手兼車掌さんの背中にルキィが大声をかけた。

途端に運転手兼車掌さん、びっくりしたようで肩をピクッと震わせた。

そして何やら慌てたように立ち去ろうとする。


「あー、待って待って!シャッター!シャッターお願いしますってば」

「ルキィさん、あの人は……その、忙しそうだから」


確かに忙しくなるようだ。

警備員3名がいきなり運転手兼車掌さんを取り囲んだから。


「すみませんが駅長室まできてくれませんか?」

「あ……あっしが何か?」


運転手兼車掌さんの声はどこか聞き覚えのある声だった。

ルキィが首をかしげる。


「ダンタロさん、あの運転手兼車掌さん……」

「シッ、黙って……」


警備員たちがジリジリと詰め寄り、運転手兼車掌さんが後ずさりしている。


「実は始発駅から連絡があってね」

「えっ……」

「なんでも『制服と帽子が見当たらないので探しているうちに勝手に発車してしまった』そうだ」

「そ、そりゃなんかの間違いじゃ……」

「念のために名前、確認していいかな?」

「あっしゃぁ、ゲン……いや、あの、その」

「…………捕まえろ!」×3


3人が一斉にとびかかる、だが運転手兼車掌さんはそれより速かった!

かなり年配と見えたのに、なんと身軽なことか。

先頭の警備員の肩の飛び乗り、ジャンプして後ろ二人を飛び越えた!


「お、俺を踏み台にした?!」

「逃がすな!」「追えーッ!」


警備員に追われつつ、謎の運転手兼車掌さんは走り去っていった。


「ダンタロさん、あれってゲンさん……ですよね?」

「……お願い、見なかったことにしてあげて」


ただでさえ頭痛の種を抱えているのに、身内が種の上乗せをしてくるのが悲しい。

結局、シャッターは通りすがりの観光客に頼むことになった。

気のよさそうな老人がシャッターを押してくれた。


パシャ。

「へー、意外ときれいに撮れてますね」

「ふむ、富士山と列車の背景がいいネ」


スマホ画面を覗き込んだルパルス王子とジンにも好評だ。

しかし主役の男の子が不機嫌だ。

不思議に思った弾太郎が聞いてみた。


「どうしたの?よく撮れてるじゃないか」

「ここ、こんなの写ってる!」

「どれどれ、ああ、これか」

「ホントですねー。パチモンのテツライナーが映り込んじゃって……!」


ルキィの言葉に全員が振り返る。

ホームのはるか先に、トンネル入り口で散華したと思われていたニセテツライナーが!

線路の上をこちらに向かってやってくる。


「ハァッ、ハァッ、ハァッ……つ、ついに、ついに追いついたぞ!」


市街全域に響き渡る魂の絶叫であった。


「やっぱりテツライナーもどきさんだ!よかった、無事だったんですねーっ!」

「やかましい、これのどこが無事だッ!」


嬉しそうに手を振るルキィに向かってニセテツライナーが怒鳴り返す。

確かにフロントガラスも窓ガラスも全部割れて、塗装は剥げ堕ちた上に焦げ付いて、車輪も半分くらいは外れて、ライトも壊れて点灯しない。

ルキィのいう『無事』には程遠い、はっきりいって廃車寸前の無残な姿だ。

その時、弾太郎はあることに気づいた。


「ん?壊れたフロントガラスから見えてるのって……」


先頭車両の赤いフロントガラスの割れ目、隙間で不気味な球体が動いている。

何かの機械と思いきやそいつがギョロリと動いてこちらを睨んだ。

どうみても巨大な生き物の目玉だ。


「あれって生き物……いや、怪獣なのか?」

「鉄道模型マニアと思っていましたが、コスプレ怪獣ですね」


ジンと弾太郎は顔を見合わせて15秒以上は沈黙した。

生中継番組なら放送事故扱いされそうな長い沈黙だ。


「こ、コスプレ?電車に化けてるの……?」

「はい、擬態能力を持った怪獣が電車を愛するあまり電車になりきっているのです」

「うーん?地球の常識が通用しないネ」


一応、地球の鉄道ファンにも車掌、運転手、社内販売員に扮装する、あるいはデフォルメ車両または擬人化キャラにコスプレする者もいる。

しかし1分の1車両コスプレに挑戦する者は、さすがに地球上には存在しない。

こめかみを押さえて悩む弾太郎と興味深そうに小型双眼鏡で眺めるジン。

何も考えていないルキィは手を振って無邪気に声援している。


「ニセテツライナーさぁん!がんばれー!ゴールは近いぞー!」

「こ、コケにしやがってェェェッ!覚悟しやがれェェェッ!」


馬鹿にされたと思ったようでニセテツライナーはズタボロの体にムチ打ち、スピードを上げた!

無理をしている車輪から火花が飛び散り、車窓という車窓から黒煙を吹き、連結部から火の手が上がっている!


ゴォン、ゴォン、ゴォンゴォンゴォン!


スピードを上げに上げ続け、すごい勢いで大波小波駅に迫ってくる!

どうみてもホームで停車できるスピードではなかった。


「……こうなったら体当たりで駅舎ごと貴様ら全員吹き飛ばしてやるぞ!」


迫りくるニセテツライナーに他の乗客や駅員も気づいて騒ぎ始めた。


「な、なんだ、あの電車は?」

「突っ込んでくるぞ!」

「危ない、逃げろ!」

「皆さん、こっちです!慌てないで」


駅員さんたちが乗客を誘導して避難させていく。

それを背後に見ながらルパルス王子が腕組みして考え込んでいる。


「まずいですね、どうやら怒らせてしまったようだ」

「なんで怒ってるんでしょうか。ニセテツライナーさん?」


怒らせた張本人のルキィも腕組みして考え込んでいる。

しかし、そうやって考え込んでいる間にもニセテツライナーは迫ってくる!

駅からの人々の避難はまだ完了していない、このままでは大惨事必死!


「大変だ、なんとか止めなきゃ!」

「はい、ダンタロさん!」

「えっ、あ……ちょ、ちょっと!」


ルキィは弾太郎の手を引いてホームから線路へ飛び降りた。

着地でバランスを崩した弾太郎を片手で担ぎ上げて、乗ってきた列車の最後尾へ。

避難する人々の視線から遮られる形で、線路上に立つ。


「そうか、この位置なら擬態解除を見られない……」

「いきます……瞬脱(しゅんだつ)!」

「えっ、何?」


人間態から怪獣態へ。

その過程においては体格は数十倍に巨大化する。

この時に人間態の時に着用していた衣類は破れる、というより破裂してしまう!

故に擬態を解除する時にはまず、すべて脱がねばならない。


だが超純情青年の弾太郎は、ルキィのボリューム感たっぷりのオッパイには耐え切れず、鼻からの大量出血により生命の危険に晒される!

そこで『対ショック、対刺激防御』と称して後ろ向いたり、目をつぶったりという(かなり情けない)対策を講じてきたのだった……


だったのだが、ここで『瞬脱』という聞きなれぬ言葉に思わず、ルキィの方を見てしまった。

全裸、オールヌード、丸出し、モロだし、すっぽんぽん、無修正、モザイクなし!

……ほんの一瞬前までちゃんとゴズラ様コーディネイトを着ていたのに!


「いつの間に……ブブハァッ!」

「いっきまーす!」


膝から崩れ落ちる弾太郎、噴水のごとく真上に吹きあがる鼻血しぶき!

線路上を駆け出し、輝く裸身のルキィが眩しい光に包まれる。

光の玉となって、突進してくるニセテツライナーに正面から衝突!

そして光が弾けた!

避難中の人々も何事かと振り向くが、爆発的な激光で目も開けていられない。

光が消え去った後に、人々は見た。


「お、おお?」

「で、電車が止められた?」

「赤い……怪獣?」

「なんだ、何が起こってるんだ?」


銀河パトロール巡査ルキィは|1.00《イチ コンマ ゼロゼロ》秒で脱衣を完了する!

では脱衣プロセスをもう一度見てみよう。

父から伝授された奥義・瞬間脱衣拳?!でルキィは完全脱衣するのだ!


ゴズラ帽子が天高く舞う!

左手を構え「蒸脱!」を叫ぶルキィ(着衣状態)

その左手を下げる過程で外される胸ボタン(上半身ブラチラ)

続いて右手が高々と突き上げられる動作の勢いで、ベルトが外れチャック降りる(下半身パンモロ)

なめらかで流れるような動作で脱皮のごとくするりと上下脱ぎ捨て(下着姿)

降り注ぐ光の粒子を背景に両手を左右に広げ、その手に握られたブラとパンティ(ここからスローモーション)

駆け出すルキィ、背後で倒れる弾太郎!

光に包まれ怪獣態へ……そして決めポーズ!


「銀パト巡査……ルキィ!」


この街一番の高いビルを見下ろす巨体。

岩山を思わせる赤い肌。

細く長い尻尾。

黒い大きな鈎爪の手がニセテツライナーの先頭車両を押さえつけ、強制停車させている。

巨大な怪獣の突然の出現に価値中の視線が集中する。


「ヌォォォッ、俺の全力突進を止めるとは?」


ガシャッ!空回りする車輪から火花を散らしながら、車両の屋根を開きミサイルポッドが突き出す。

ドドドドドドドッ!撃ち出されたミサイル群が上空へ、そして軌道を変えてルキィに迫る。

ズドォン、ドォン、ドドドドドォン!ミサイルの集中攻撃と連続爆発!

炎に包まれ、爆煙の中から真後ろに吹き飛ばされるルキィ。


否、吹き飛ばされたのではない。

間一髪、驚異的な反射神経で爆発から脱したのだ。

猫のような軽やかなバク転で体勢を立て直し、音もたてず猫足立で優雅に着地。

顔を上げ眼前の敵をキッと睨み、咆哮一発!


「現地鉄道法違反、入星管理法違反、その他『いろいろ危ないよ』行為現行犯で確保します!」

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