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(強制的に)旅立て、若者!

光のない真っ暗な部屋で『彼』はイヤホンらしきものを耳に押し当てて何か聞いている。

時折小声で何かささやいているところからすると、何処かの誰かと通話しているらしい。


「……なぜ、今まで連絡しなかった?」


『彼』は明らかに苛立っていた。

声と態度からすると通信相手を見下しているようだ。

他人に音声を聞かせたくない、というだけならば現代の技術をもってすれば秘匿性のある音響装置がある。

付け加えればこの部屋を含む建物全体に盗聴防止処理が施されている。

そんな場所で人目を忍んで通信する、というだけも十分怪しい男だが……


「宇宙船の爆発事故で死ぬハズだったろう?その王子が『地球に到着しました』とはどういうことだ!」


会話の内容も物騒だ、王子の暗殺を企んでいたらしい。


「お前に意見する資格があるのか?もういい……何もするな!」


つい、激高して大声になってしまった。

我に返って再び小声で続ける。


「後はこっちでやる。くれぐれも邪魔はするな」


通信を切り、襟を整えて部屋のドアを開ける。

まぶしい光が廊下から差し込み、目を眩ませる。

外で待っていたのは大きな青紫の翼をはばたかせ、突風を巻き起こす巨大な怪鳥。


「お待たせしました、殿下。本日の予定ですが……」


密談をしていた『彼』も白い翼を広げ、部屋の奥から飛び去っていった。


★☆★☆★☆★☆★☆★


「うー……ん!今日は、いろいろな意味で疲れたなぁ」


日も暮れて外が真っ暗になった頃、自分の部屋で布団に入った弾太郎は大きく伸びをした。

封印していた恥ずかしい記憶は暴かれるわ、大切な思い出コレクションは持っていかれるわ。

本当についてない、最悪な一日だった。

そう、あの後で思い出コレクションはこんな感じで持っていかれた。


「このシャツ、お借りしていいですよね?私、地球人用の服を持っていないんでね」

(ウウッ、あの仮面ファイターTシャツ。二度と戻ってこない気がする!)

「ありがとうございます。ふふ、心配ありませんよ。必ずお返しします、必ずね」


そんな感じでレアもの含む仮面ファイターシャツ数枚と1号変身ベルトをルパルス王子に持ってかれた。

断ると地球政府のお偉いさんたちがいろいろと困るだろう。

だから仕方なかった。

そうするとルパルス王子には貸してルキィには貸さない、というのは不公平だ。


「このご神体……じゃなくてゴズラ様ソフビ、とコレとコレもお借りしていいですよね?私、地球人用の玩具を持っていないんですよね」

(ウウッ、あのソフビ、二度と帰ってこない気が……いや絶対返す気ないよね、ルキィさん!)

「このゴズラ様のご神体を本尊に大翼竜ラデン様と守護神モフラ様を脇侍に……うふふふ」


そしてソフビコレクションはルキィに持ってかれたが、この神社がゴズラ様に乗っ取られるそうで怖い。

しかし断ればルキィが大泣きしそうで、結局は折れてしまった。


「仕方ないか、それに『ヒーローは飾りじゃない。誰かを守ってこそヒーローなんだ』玩具もシャツもしまっておくんじゃない。誰かが使ってこそ、だよね」


子供の頃、ヒーロー役のスタントマンから聞いた言葉を思い出す。

すると今まで埃を被らせていた品々に対して申し訳なく思った。


「でも、僕にできるのはここまでだな。後のことは防衛警察特殊部隊に任せて……」


これ以上は起きていられるほどの気力は残っていなかった。

ひと風呂浴びてリラックスしたせいだろうか、それとも布団に包まれる心地よさのせいか。

瞼が重くなり、目を開けていられなくなり意識が深い水底に沈むように、眠りに……


「用意はいいですか、ルキィさん、ジンさん」

「はい、殿下」「オッケーでーす!」

(……?王子の声かな。それにルキィさん、ジンも)

「そっとだよ、ルキィさん。起こすとウルサイからネ」

「はーい、そっと……」

(なんだろう?体が……浮くような……持ち上げられて)


それっきり声は聞こえなくなった、気のせいだったのだろう。

とにかく今日は疲れた、このまま眠りに……


バタン!

「なんだ!?」

ゴツン!


乗り物のドアが閉まるような重い音に弾太郎は跳ね起きた。

そして、かがみこんできたルキィの額に自分の顔を思い切りぶつけた。


「アイタタタ……」

「だいじょーぶですか、ダンタロさん?」


痛かったのは弾太郎だけでルキィは別に痛くはなかったようだ。

涙が出そうなのをこらえて目を開けて驚いた。

そこは弾太郎の部屋じゃなかった、というか家の中じゃなかった!


「へ、ヘリの中……何が、どうして!?」


目覚めた場所は寝ていたはずの布団の中ではなかったのだ。

狭く、天井も低くオイルと爆薬の香りが染みついたヘリコプターの中だった。

しかも、ルキィとルパルス王子が二人して、弾太郎の顔を覗き込んでいる。


「これって長官専用ヘリ?え?え?動いてる?」

ブォン、ブォン……


回転翼の音が低く響き始めていた。

続いて、一瞬だけ体が重くなる感覚。

間違いなく離陸している。


「ルキィさん!何をする気……」

「どうしよ?ダンタロさん、起きちゃった」

「構いません、このまま出発しましょう」


回り始めていた回転翼の音が消えた。

だがエンジンの振動は逆に強まっている。

操縦席からジンの声が聞こえる。


「サイレントドライブ切り替え正常、ステルスモードに入りまス」

「ステルスで?ジン、何やってッ……!」


いきなり機体が揺れて、今度は強化ガラスの窓に顔をぶつけた。

鼻を押さえて操縦席まで行くと、すでに於母鹿毛島は遥かに下だ。


「お、目は覚めたかい、眠り姫?」

「じゃないだろ、ジン!何がどうなってこうなってるんだよ?」

「ああ、全員乗せて、エンジンかけたから、飛んでるんだヨ」

「ジンんんんんんッッッ!!!」

「ハッハッハッ。弾太郎、実弾込めた銃を人に向けちゃ危ないヨ」


怒りに燃える弾太郎を楽しそうにからかいつつ、ジンは操縦桿を切った。

同時にスピードを上げ、長官専用ヘリは長官を置き去りにして夜空の向こうへ消えていった。

王子の楽しそうに、ノリまくった、高らかな雄叫びを残して。


「さあ、第一目標!スペースダブルタワーに突撃だぁっ!わははははは!」

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