離島急襲?騒動持参の長官様
朝日を浴びて12機の戦闘機が八の字編隊で先導している。
眼下は広々とした大海原。
そして後方に3隻の護衛艦を従えて。
大きな翼を広げた青い怪鳥が空を行く。
並行して飛ぶ装甲ヘリに首を向けて美しい音色でささやくように、鳴く。
りゅ、うりゅゅゅゅー……。
『申し訳ありません。迷子になった挙句、長官みずから道案内まで』
「いえ、どうぞお気になさらず」
ヘッドセットからの翻訳音声に砂川長官は……にこやかで爽やかな笑顔で答える。
その顔を見て操縦桿を握った金髪の若者は笑いをこらえるのに必死だった。
「おい、若造。何笑ってやがる?」
「いえ、なんでも。ちょっと珍しいモノを見て、なんてことはありませんかラ」
「テメェ……」
『どうかしましたか?何か変わったことでも?』
横を飛ぶ怪鳥から怪訝な声で尋ねられて砂川長官は口を慌てて塞いだ。
翻訳機はとても優秀なので罵詈雑言も正確に翻訳してくれる。
禁止用語を自動的に『ピィーッ』音に変えたりはしないから、下手な罵詈雑言は禁句だ。
「いえ、こちらの話で。ところで何故、地球にいらっしゃったので?」
『ああ、それはですね。父上の命令でして』
「父上の、つまり王の命令というわけですか」
『はい。私は間もなく成人の儀を迎えるのですが。この機に大恩ある海人様にご挨拶を、と命じられまして』
「なるほど、左様ですか」
何がわかったのか、それともわからなかったのか。
砂川長官は困り顔でパイロットの顔を見た。
パイロットには怪鳥ルパルス王子の翻訳音声は聞こえていないのだが、なぜか肩をすくめる動作で返す。
「長官、於茂鹿毛島が見えてきましたヨ」
「ああ、もう着いちまったか。く……」
くそったれと言いかけて、また自分の口を自分の手で塞ぐ。
「ルパルス王子、間もなく海人の住む島に到着いたします」
(こうなったら後の面倒事は全部、海人のアホに押しつけてやる)
『海人様とは初めてお会いするのですが……とても楽しみです』
★☆★☆★☆★☆★
その日、出漁する男たちを送り出して一休みしていた女房たちの頭上を、戦闘機編隊の轟音が通過した。
驚いて見上げた女房たちの耳に聞こえた汽笛の音は護衛艦の三重奏。
その三重奏をかき消すヘリの回転翼の不協和音。
「なにコレ、なにコレ?」「戦争映画みたいじゃねー」「本土で何かあったんかな?」
「おー、あの戦闘機って最新型のスパルタクスVじゃん!」
「にーちゃん、あっちのは要塞化護衛艦・富士2じゃない?」
「ヘリもすごいよ!司令官専用機に採用されたヘリオス・シリーズだ」
岬家兄妹には危機感がなかった、なさ過ぎたので当然だが……
パシ、パシ、パシ!っと、かーちゃんに頭を叩かれた。
「子供は家に帰ってなっ、ていったろ!」
「かーちゃん、いたい!」「横暴、おーぼー!」「たいばつはんたーい」
「……隊長の大地くん!」
「な、なにさ、かーちゃん?」
「羽海隊員、美空隊員とともに大河、宙子の護衛任務を命じる!」
「ハイ!」×3
「ただちに配置につけ!」
「いえっさーっ!」×3
岬家母の子供の扱いは完璧だった。
うるさいガキども退場させると、着陸態勢に入ったヘリに乗っている長官の顔を見てため息をつく。
「砂川の旦那かい。こりゃあ……海人の旦那、またなんか、やらかしたね?」
そう呟いた直後、いきなり日が陰った。
見上げると陽光を遮って翼を広げる怪鳥の姿。
本来なら怪鳥が飛来したことに驚くべきだが、島民たちが驚いたのは間近で見た怪鳥の姿の方だった。
「おい、あれ!あの怪獣って、確かさぁ」
「ああ、間違いない……神主さん、やっぱり何かやらかしたんだねぇ」




