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新たなるヒーロー!

「久しぶりっす!弾太郎さん!ルキィさん!」

「お久しぶりです。ポケケノさん。警備主任に昇進したそうですね」


陽気な挨拶とともにタブレットの画面にちょっと犬っぽい金毛の怪獣の姿が現れた。

火星の銀河パトロール基地との通信相手は弾太郎たちが初めて確保した相手、酔っ払い怪獣のポケケノだった。


「ええ、おかげさまで。仕事キツくなったっすけど親子4人なんとか……」

「え、3人親子じゃ……もしかして」


小さな画面の中でもはっきりわかるくらい照れながら、ポケケノは笑っている。

背後で息子・パルカノ君の相手をしている奥さんもなんだか照れてるようだ。

巨大怪獣母子なわけだが、タブレットの画面の中では仲睦まじい仔犬と母犬のようで実に微笑ましい。

そのお母さんのお腹のあたりが少し大きくなっているように見えた。


「てへへへ、生まれんの半年くらい先っすけど……」

「おめでとうございます!」

「えーっ?ポケケノさん、赤ちゃんできたんですかー!!」


「で、何のご用件っすか?俺、コホン、私にできることでしたら……」

「ええ、頼みというか、相談というか」


大蛇怪獣ゴゾ海賊事件の顛末を話しているうちに、ポケケノのちょいトボケ顔が真顔に変わる。

あらましを聞き終わるころには眉間にしわを寄せて考え込んでいるのが、画面越しでもわかった。


「話は大体わかりましたが」

「難しい、ですか?」

「同情すべき点もあるし、怪我人も出ていないから執行猶予はつきます」


後ろで聞いていたゴゾが首をもたげてジーっと覗き込んでいた。

なんだか、うまいこといきそうな話の流れにちょっと期待してる感じだ。

背後からの熱ーい視線を気にしながら弾太郎は話を続けた。


「じゃあ、あとは落ち着き先……」

「それが問題っすね、今は火星基地でも新規の募集なくてねー」

「そこをひとりくらいなんとか……」

「すんません……警備主任っていったって人事の権限はなくて」


ゴゾの頭がちょっぴり下がった。

気落ちしたらしい。


「警備員以外でも?このさい何でも……」

「戦士登録してないのがちょっと。火星基地で働くには最低でもCランク戦士登録でないと」


ゴゾの頭がかなり下がった、角度も深い。

金魚ひとすじに人生かけてた分、かなりの落ち込んだらしい。


「ねーねーダンタロさん。海賊王さん、すっごくしょぼくれちゃってます」

「わかってる、わかってるってば。なんとかなりませんか、ポケケノさん」

「うーん、そういわれてもねー」


「このままじゃゴゾさん母星へ強制送還……」

「オレ・帰る・家・ない・待ってる・人も」


弾太郎の背後から背後から最大級のものすごいプレッシャーきた!

チラ見するとゴゾが寝そべって喉をクッ、クッ、と鳴らしていた。

たぶん絶望してメソメソ泣いているのだろう。

その時、ルキィがパシッと手を打った。

何か思いついたようだ。


「あ、そうだ!私みたいに地球の人と直接契約すれば!」

「そうか、それだ!僕と契約すれば地球で働ける……」


本来ならルキィのような怪獣は地球には入る許可が出ない。

地球はまだ銀河連邦へ加盟できていないためだ。

しかし資格を持つ現地人と直接契約すれば、限定的にではあるが許可される。

そのへん父親の海人は特殊なコネを持っていたらしく、強引に許可を取った、といっていた。

ゴゾの頭が一気に上向きに、その目には希望の光が!


「いや、そりゃダメっす」


ゴゾの頭が石のように固まった!


「え、どうして?」

「弾太郎さんの資格じゃ許可できるのはルキィさん一人だけ。他の怪獣とは契約できないっす」


バッターン!

固まったままゴゾは横倒しになった。

目をぱちぱちさせながら、喉をクッ、クッと鳴らしながら動かなかくなった。


「ああ、海賊王さん!しっかり!気を確かに?」

「・・・・・・グス・・・・・・」


ルキィの声援も届かない。

もはやゴゾに立ち上がる力は残されていないのか?


「何か方法は?僕以外に契約できる地球人はいないんですか?」

「無理っす!もともと現地在住の銀河連邦市民守るための特例なんすから!市民権持つ地球人なんてそうそう……ん?」


ポケケノが画面の中から見つめている。

しかし弾太郎を、ではなくその背後、岩場の影を見つめている。

そこにうずくまっていたのは。


「あれ、おとねーちゃん?いつからそこに?」

「最初っからいたわよ!むぐむぐむぐ……」


岩の影で毛布にくるまった乙音ちゃんが、ブスッとしながらツナカツ丼を食っていた。

溺れていたところをルキィに救助されてから、ずっと隅っこでふてくされていた。

取り調べの間も放置され、回想シーンの間もお呼びはかからず。

誰も相手にしてくれないので、すっかり拗ねていた。


「私、神様なんだよ?この島の祭神様なんだよ?それなのに放置プレイ?扱いひどすぎない?」

「あ、ごめん。でも、忘れてたわけじゃ」

「あ、ごめんなさい。私、忘れてました!」


ルキィにとどめを刺された乙音はピシっと石化しコトンと横倒しに。

ゴゾと並んで地面に横たわりシクシク泣いている。

悪気ゼロのルキィだけにダメージは深い。


「あの、そこにいる女の子」

「何?何か用?私、全然役に立ってないダメ神様なんですけど!」

「もしかして『竜宮海底測候所』の所長さんでは?えっと人間態で会うの初めてっすが」

「そうだけど……」


何か思いついたのかポケケノは手元の端末で資料を次から次へと呼び出して読みあさっている。

空中に表示されたリスト、法令集、過去の事例集、あっというまに空間が書類で一杯だ。

全て、読み終えたポケケノは大きく深呼吸をひとつ。

そして最後に一言。


「いけそうっす!」


★☆★☆★☆★☆★☆★☆


本日の於母鹿毛島周辺海域は快晴、雲一つなく波も穏やかだ。

しかし行きかう船は今日は穏やかではなかった。

真っ白な巨大無人輸送船が限界を超えた航行速度で海上を走っていた。

その後ろを追跡する3匹の怪獣、地球の生物でいえば豚に似ているタイプだ。

サーフボードみたいな無人高速艇に乗り、手には薙刀のような巨大な武器を持っている。


『SOS!メイディ!助けて!海賊に襲われてます!』

「ぐへへへ、もう逃がさないぜ。お嬢ちゃん」

「もう、お嬢ちゃんは俺たちのモンだぁ」

「お嬢ちゃんの大事なモノ、頂くぜ」


お嬢ちゃん、なんていってるが航行管制AIは女性扱いでいいのだろうか?

確かに船はフランス語では女性名詞ではあるのだが。

しかも発言内容は勘違いされかねないような……


『ああ、あんな大きな方々が3人も。私、壊れちゃう』

「ぐへへへっ。お望み通りブッ壊してやるぜ」

「3人で順番にな、ククククク」

「もう待てねぇ。さっさとヤッちまおうぜ」


誤解なきよう断っておくが、輸送船は高価な希少金属を含む物資を輸送中で、怪獣たちはそれを狙っている海賊である……はずなのだが。

とかいってるうちに輸送船は追いつかれてしまった!

先頭の豚怪獣1が船体に手をかけよじ登ってきた。

豚怪獣2がそれに続き、豚怪獣3も輸送船に接舷した。


「よっし!まずは一発ブチち込んで……」

「お前ぇも早く乗っかりな」

「おう、ちょっと待ってくれ、アニキ……ん?」


豚怪獣3の足元に、別の怪獣がいた。

竜神、正確にはドランゴン族に分類される怪獣の子供らしい。

海面の、何か魔法陣っぽい文様の中から上半身を出して、おもちゃの槍みたいなのを持ってる。

何故かアイマスクして目元だけ隠しているのがちょっと笑える。


「ん、なんだ?このガキは。邪魔だ、あっち行ってろ」


ちびドラゴンはニコッと笑って……手にした小っちゃな槍を豚怪獣3のサーフボードに突き刺した。


プスッ。

「のわっ?何しやがる!」


浮力発生器を壊されたサーフボードはあっというまに波間に沈み、バシャ-ンと豚怪獣3は海に放り出された。

当然、そのまま逃走しはじめたちびドラゴンを、怒り心頭の豚怪獣3が泳いで追っかける。


「待ちやがれ、このガキ……ノワァァァッ?」

「お、おい?」

「なんだ、どうした!」


いきなり豚怪獣3の後ろ足を水中の何者かがつかんだ。

そのまま一瞬で海の中へ引きずり込まれ、豚怪獣3は仲間の視界から消える。

呆気にとられている仲間の耳に、海中から鈍い破壊音の連続と大量の泡。


バキ!ボキボキボキ!ゴボ、ゴボォゴボゴボ!ベキ!ゴボボボ!

「おい、どうした?」

「まさか、アニキ!これがウワサに聞く地球の怪談『舟幽霊』じゃあ?」


そしてプカリと浮かび上がってきた、失神状態の豚怪獣3。

手足の方向が関節の構造上ありえない曲がり方をしている。

仲間の変わり果てた姿を呆然と見つめる残りの怪獣たちの背後で……。


バシャッ!スタンッ!水音と着地音。

「なんだ?」


振り返ると甲板上に……巨大な蛇がとぐろを巻いていた!

しかもこっちも何故かアイマスクつけてる大蛇怪獣だった。


「おい、こいつは、確か……」

「オレは・地球の・海を・守るため!銀河の・果てから・やってきた・オサカナマン!」

「…………ハイ?」×2


沈黙が世界を支配した、そして数秒後。


「いや、どう見ても蛇だろ!」

「オサカナマンってお魚要素どこにあんだよ?」

「マン要素もカケラもねェぞ!」

「どこもかしこも蛇要素しかねーだろが!」

「第一、お前ェこの間までこの辺で海賊王とかはしゃいでたゴゾとかいうヤツだろ!」

「パクられたって聞いたから、ここをオレ達の縄張りにできると思ったのにィ!」


散々なクレームを浴びせられたオサカナマンの正体は、やっぱり大蛇怪獣ゴゾだった。

メンタルの弱いゴゾにこれほどの罵倒は、耐え難いものだったろう……。


「オレ・二度と・へこたれ・ない!」

「えっ?」

「い、いや……へこたれない、とかいわれてもな」


「オレ・金魚に・誓った!二度と・くじけない・と」

「き、金魚?」

「どーゆー意味だ?」


どうやら金魚様のおかげで精神力が大幅に成長したらしい。


「と、とにかくだ、貴様を倒せばこの辺はオレたちの縄張りだ!」

ビュッ!


豚怪獣1が巨大薙刀を振りかざして襲いかかった。

刃から生じた青い光が水平線に届きそうなくらい伸びて、ゴゾに降りかかり、切り刻もうとする。

瞬間、身をすくめたゴゾだが光の刃に絡みつくように螺旋を描いて跳躍する。

豚怪獣1が突き出した薙刀に巻きつくように突進し顎に頭突きを食らわせる。


ゴッ、メシャッ。

「グフッ……」


ボクシングのクロスカウンターに近い攻撃か。

顎が砕ける、いや潰れる音がして豚怪獣1が白目をむきかける。


「ウ、ウッ、ウガァツ!」


なんとか倒れるのをこらえて闇雲に薙刀を振り回す。

出鱈目な攻撃をかいくぐってゴゾの軽い頭突きが2度、3度ときまる。


「ちっくしょ……ウッ?」

ガコッ!

「正確な・ジャブ・3発に・続く・ストレートは・効果も・3倍!」


どこかで聞いたようなセリフで最後の頭突きがみぞおちに決まった。

頭突きの連発で足元が揺らいだ時を逃さず、溜めをきかせた一撃を受けて豚怪獣1は前のめりに倒れた。


「ウアァァッ、よくも兄貴を!」


ヤケおこして薙刀を振り回す豚怪獣2の刃の下へゴゾは滑り込んだ。

カッと開いた口の中の毒牙で、あっさりと勝負はつくか?


「・・・・・・海賊・ゴッコ・する・愚者・毒牙・無用」


なんかカッコいいセリフ吐きながら、ゴゾは足元から巻きついて豚怪獣2の体を這いのぼる。

これは?ゴゾの決め技コブラツイスト……ではなかった!

さらに足首、膝、腰、肩・首と複雑に絡みついて全身の関節を締め上げているッッッ!


「・・・・・・新技・オクトパス・ホールド」

「ギ、ギブ……アップ、グハァッ!」


あの闘魂レスラーの必殺技出たー!

和名『卍固め』の蛇バージョンが完全に極まった!

蛇なのに、なんでタコ固め?っていうクレームは受け付けないぞ!


★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「では・おまわり・さん・犯人・引き渡し」

「ご苦労様でした、ゴゾさん」


「ゴゾ・じゃない・オレは・オサカナマン」

「はぁ……そうですか」


「そして私はオサカナマン2号!、乙音ちゃんじゃないよ♪」

「すっごーい、タタタ姫ちゃん、また新しい名前が増えたんだ!」

「……僕、もう何もいわないよ」


気絶したままの豚怪獣一味を弾太郎たちが引き渡すと、ゴゾと乙音は海へ帰っていった。

夕日の海を去っていく大蛇怪獣とちび竜神の後ろ姿は、まるで映画のエンディングのようだ。

弾太郎とルキィと無人輸送船航行用AIは静かに彼らを見送った。


『オサカナマン様……どこのどなたか存じませんが、抱かれたい……』


いや、AIさん!あなた一回会ってます、ってか襲われてますよ!


「すまない・オレ・アンタ・抱く・できない」


蛇だけに、抱く腕はないぞ!


「それにしても、ダンタロさん。アイマスクでも正体って隠せるんですね」

「それより大丈夫なんだろうか?この航行管制AIは」


ここまでお付き合いいただいた酔狂な方々でも、突っ込みたいことは山ほどあるだろうが……

とりあえず、新たな『海の守り人・オサカナマン』が今ッ、ここにッ、誕生したッ!

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