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奥義炸裂!ここから悪?は許さない

「わかってますよね、自分が何をしたか?」

「……そ・それは・その」

「もう許しませんから……覚悟なさい!」

「あ・あぐっ・あぐっ?」


顔に触れるほど迫っていた牙がルキィに押し戻されている。

片腕だけで、力が入りにくい体勢を強いられているにも関わらず、だ。


「なんだ?急にルキィさんのパワーが上がったぞ」


技を外して脱出、とまではいかなかったが防戦一方から盛り返してきている。

だが、なぜいきなりパワーアップしたのかわからない。

だが横でみていたゲン爺が怒り出した。


「なんてぇことを、あの蛇公め!」

「えっ、ゲン爺?何が……」


さらに海人も。


「うぬっ、怪獣の風上にも置けんな!」

「えっ、えっ、父さんまで?」


何がなんだかわからないが、ゴゾはなにかやらかしてルキィを怒らせたらしい。

海人もゲン爺もわかっているらしいが……

ふと抱きかかえていたダイくんたちを見ると。


「なんだよ!何も見えないじゃないか!」

「ダイにーちゃんは見ちゃダメ!」

「そーそーダメェェェ」


ソラちゃんウミちゃんがふたりがかりでダイくんを目隠ししていた。

男の子は見てはいけないような行為ということだろうか。

気になって於茂鹿毛島の埠頭を見ると、やっぱり。


「こ、こら母ちゃん何も見えねぇよ!」

「見ていいわきゃないだろ、このスケベ」

「お、おい、今いいとこなんだ、ちょっと」

「ちょっとでも見たらコロス!」


全母ちゃん連合が全父ちゃん連盟の両目を力づくで塞いでいる。

一体、何を見てはいけないのか?

目で見た風景は『大蛇が赤い怪獣にコブラツイストかけてる』だけなのだが。


「弾太郎も、あんましジロジロ見ちゃダメだよ!」

「ああ、うん、わかったよ。ウミちゃん」

(ひょっとして僕だけわかってないのか?)


何が悪かったのかわからないが、とりあえずわかった振りをしておかなければ。

できるだけルキィの方は見ないようにして……


「そ、それよりも。ルキィさんが!」

「お、おお?そうだった!あのままではかえって危険だぞ!」


かなりの安全距離をとっているというのに、ルキィの関節のきしむ音がここまで聞こえてくる。

あと数秒でどこかの関節が破壊される。

悪くすれば首をへし折られる。


「ルキィさん!やめるんだ、それ以上は」

ヴォンッ!

「何だ、この音ッ!」


思わず弾太郎は耳を塞いだ。

ルキィの体からノイズのようなハウリングのような音が響いたのだ。


ヴボォォォォンッ!


まるで壊れかけたモーターが発するような不快な音だ。

同時にルキィの輪郭がぼやけ、足元の砂が巨大なスピーカーの上に置かれたように、舞い上がり踊りだす。

密着していたゴゾの体が硬直し、こそばゆいのか痛いのか、奇妙な悲鳴らしき声を上げた。


「グ・ギャ・ギャッ?」

バヂィッ!


最後は強烈な電撃でも喰らったようにゴゾが弾きかれた。

落下して体を丸太のように硬直させて、地面にコロコロ転がって、岩場に引っかかってようやく止まった。

何をされたのかもわからなかったのだろう。

ゴゾは目を大きく見開いたまま、全身をビリビリ震わせながらルキィを見ている。

そしてルキィは?

動かない、片膝をつき、構えもとらず、追撃もせずだ。

ただただ、ハァーッ、ハァーッと荒い呼吸をしている。


「ルキィさん?一体何をやったんだ」

「驚きだ、久しぶりに見たな。あの技は『震鎧』だ」


「しん……がい?」


聞いたことのない技の名前だ。

不思議そうな顔をした弾太郎に海人が語り始めた。


「超高周波振動で創り出すアクティブ・アーマーといったところか」

「ってぇと確か、ルキィ嬢ちゃんの御父上が編み出した……」


「そうだ、ルキィちゃんの種族が地底怪獣というのは知ってるな?弾太郎」

「それは……両手の爪で固い岩を削って掘り進む『宇宙一の穴掘り職人だ』って自分でいってた」


「それだけではなくてな、絶えず崩れてくる土砂に埋もれてしまわぬよう、彼らは体表に微細な振動を発生させ、土砂を体の後方に向かって流してしまうのだ」

「ルキィさんはそうやって地底にトンネルを掘っていたのか……」


「うむ、ルキィちゃんの星にはそうやって掘られたトンネルが200万キロも続いているそうだ」

「しっかし、土砂はねのけるだけにしちゃさっきのアレ強すぎじゃねぇですか?」


「本来はさほど強いパワーではない。彼女の父上は独自の鍛錬と研究で防御と攻撃を同時に実現する奥義として完成させたのだ」

「そんなスゴイ技をルキィさんは会得していたのか……」


「いや……あのざまでは会得したとはいえんな」


海人が視線を送る先、ルキィはまだ片膝をついたままだ。

いつもは数呼吸で息を整える彼女が、まだハァハァと荒い呼吸で体を大きく上下させている。


「本来なら相手を弾き飛ばした後に即座に追撃し、とどめを刺すための技なのだ」

「でも、そんなことができる状態に見えないけど?」

「うむ、たった一発でスタミナを使い果たしている。追撃するどころか今、攻撃されたら負ける」

「そんな、せっかくコブラツイストから脱出できたのに」


懸念を現実化するように、ゴゾが再びとぐろを巻いて攻撃態勢に入った。

さっきの『震鎧』を警戒しているせいか消極的ではあるが、間違いなく次で勝負を決めるつもりだ。

そんな絶対優位にある敵を、ルキィはビシッと指さして叫んだ、いや吠えた。


「この痴漢!」

「ち・ち・ちが・ちがう……」


意外な言葉に弾太郎は目をパチクリさせ、口を開けかけたが言葉が出ない。


「…………え、ええっ?えええっ!」

「まったくだ、真剣勝負の最中に」

「あの蛇公、とんでもねぇトコ触りやがって」


憤慨する年長者の言葉を聞きながら弾太郎の頭の中がグルグルと攪乱されているような状態だ。


(え、え、ゴゾさん、何したの?)

(触ったって?どこを?)

(いや、そもそも全裸で戦ってるんだよね?)

(触っちゃいけないトコなんて意味ある?)


「海賊王さん……いえ、痴漢王と呼んだほうがいいですか?」

「違う・オレ・そんな」


「でも触りましたよね?」

「そんな、つもり・なかっ・た」


「触りましたよね!」

「待って・くれ・わざと・じゃない・んだ」


「じゃあ、わざとじゃなければ怪獣を殺しちゃってもいいんですか?」

「グ?・グ?・グワ・ワァ・ァーッ?」


ほとんど小学生の口ゲンカだった。

しかも口車に乗ってしまったゴゾは攻撃のチャンスを完全に逃した。

そのくらいルキィから溢れ出す怒気がすさまじいのだ。

オロオロしているうちに荒かったルキィの呼吸もなんとか整ってきている。


「許せません、しかるべき報い受けてもらいます!」

「…………あうぅぅぅ」


ゴゾは相変わらず感情の読めない目に涙を浮かべながら、弾太郎にすがりりつくような視線を向けた。


「おまわり・さん・タスケテ・冤罪・ですゥゥゥ」

「い、いや僕にそう言われても」


困ってしまった弾太郎であった。

そもそもどこを触ったのがNGだったのかもわからない。

しかも爬虫類系の怪獣は表情変化が乏しくて、マジなのか冗談なのかもわからない。

だが『助けてもらえそうにない』と知った時、ゴゾは最後の一線を越える覚悟をした。


「こう・なったら・仕方ない・奥の手・使う!」


ゴゾの全身を覆う鱗が白っぽく濁ってふやけたようになり、プルプルと震え出した。


「……脱皮するつもりだね」


弾太郎が内心、最も危惧していた事態だった。

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