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執念の必殺技!逃げ場なし

巨大なリングとなってルキィ包囲陣を完成させると、ゴゾは止まった。

いや、完全には止まってはいない。

ジリジリ、ジリジリとリングを小さくしていく。


「まずいぞ、あれでは完全包囲されたのと同じだ。動きがとれん」

「ルキィ嬢ちゃんのパワーなら強行突破くれぇは?」


ゲン爺の疑問にはルキィから返事がすぐにきた。


「えーっとですね。さっきから突破しようしてるんですけど……出られません」


ルキィがゴゾの胴体のどこかに近づこうとすれば、ゴゾはその部分だけを遠ざける。

あるいは反対方向から襲う素振りを見せる。

円の内側でルキィがどう動こうと、一瞬で円の中心に戻されてしまうのだ。


「だったら、火炎放射で丸焼きにしちまえば?」

「炎を吐くためには一呼吸の溜めが必要だ。あの距離で隙を見逃してくれるか?」


こうなってはゴゾが攻撃してくるのを待って、カウンターを取るしかない。

だが、どのタイミングどう攻撃するか?その決定権はゴゾにある。

そして待っている間にも行動範囲もジワジワと狭められてくる。

圧倒的に不利な立場にルキィは追い込まれていた。


「円のどこからでも攻撃できるわけじゃない。頭か尻尾以外では攻撃できないから……」


弾太郎も、爪を噛みながら脱出策を考えタブレットでシュミレーションを繰り返していた。

だが表示される結果は思わしくない。

どの方向に何度、突破を試みても失敗。

そのうち完全に捕まってしまうのだ。

残る脱出口は……


「ならば……ここはどうですかです!」

「ダメだ、ルキィさん!そっちは」


真上ッ!

ルキィは真上に跳躍した。

鍛え上げた筋力は己の身長の数倍の高さにルキィを到達させた。

完全包囲円陣の死角は真上のみ。

しかし生半可な高さでは容易に捕まってしまう。


「でも、この高さなら……!!!」


ルキィの跳躍力は常人、ならぬ並みの怪獣を遥かに超えている。

ざっと4,500メートルの高さに達する、本来ならゴゾの追撃は届かないはずの高さだ。

にも関わらずゴゾの頭がルキィの右足首に巻き付いていた!


「逃がさ・ない……ツナ・缶・2個……」

「そんな!どうやって、追いついてきたの?」


ルキィが絶対の自信をもって選んだ脱出口はゴゾにとっては死角ではなかった。

ゴゾは円陣を一気に収縮させて、渦巻き状になり、体全体をバネに変えて跳躍した。

脚力だけの跳躍と全身の筋肉の跳躍の差が、スピードでわずかにルキィを上回ったのだ。


「は、離れなさい!」

「離さ・ないッ!」


振り払おうとしたが、ゴゾの行動の方が早かった。

左足に巻き付きながら一瞬で腰まで這いあがってきた。

咄嗟に裏拳を当てようとして、かえって空中姿勢を崩した。

しかも空振りだ。


「キャァッ?」

「つ・か・ま・え・た♪」

ドォン!


ほとんど横倒しの状態で、ゴゾに絡みつかまれたままルキィは墜落した。


「ウワッ!」「キャッ!」「ヒェェェッ!」

「ダイくんソラちゃんウミちゃんッ!」


衝撃波が突風となって岬家兄妹をたちを吹き飛ばす!

弾太郎が飛び込んでナイスキャッチ!

だがまとめて吹っ飛ばされ、地面を転がりながら3人をかばうのが精いっぱいだ。

落下の衝撃で兄島の周りに壁のような水柱が立ち、高波となって対岸の埠頭を激しく洗う!

揺れは対岸の本島にまで及び、椅子に座って観戦していた漁師たちは椅子から放り出されて無様にひっくり返った。


「す、すげえな、ルキィちゃん!」

「やっぱ怪獣戦はこうでなきゃ!」

「大詰めキターッ!」


ひっくり返ってビール頭から浴びてるくせに、やっぱり馬鹿ばっかりだった。

だが戦ってる当人たちは、もちろんそれどころではない!

島の地盤が傾くほどの激しい墜落だったが、ルキィもゴゾもダメージはない。

すぐさま立ち上がったルキィの体に、ゴゾは巻き付き絡みつき、肩まで這い上った。


「しばらく・動け・なく・なって・もらう!」


毒を滴らせる牙がルキィの眼前に迫る。

今度は右手で迎え撃とうとするが、すでに自由を奪われ動かない。

絡みついたゴゾの胴体は右足と左腕以外の関節の自由を完全に奪っていた。

咄嗟に動く右腕でゴゾの首をつかんだが、うまく力が入らず押し戻せない。


「海人様、この技ぁ、確か!」

「ううむ、コブラツイストだ!」


コブラじゃないけど毒蛇だけに?

ビールでずぶ濡れの海人と日本酒を頭から浴びたゲン爺が地面に座り込んだまま驚愕する。

ボクシング対戦から、いきなりのプロレス技の爆発だ。


「グッ、グッ、まさか?海賊王さんも地球の格闘技の研究を?」

「……見た、タイ○ーマスク2世、動画・配信……」


2大怪獣対決は同時に電子書籍VS動画サイトの対決だった!

しかもルキィの関節は悲鳴を上げ、毒牙が確実に迫ってきている。

この勝負、軍配は動画サイトにあがるのか?


「どうしたら、どうしたら、この技から脱出できるんだ?」

「無理だ、弾太郎。完全に関節がきまってしまっている。無理に抜けようとすれば」


海人はその先をいわなかったが、いわなくてもわかる。

完全に極まった関節技を力ずくで外そうとすれば、自分の力で自分の関節を破壊することになる。


「悔しいだろうが、弾太郎よ。ここまでだ……」

「くっそぉっ!こんな時に僕はルキィさんを助けられないのか」


弾太郎はらしくない悪態をついて拳を岩に叩きつけた。

指の間から血が滴るが、その痛みすら弾太郎は気がついていない。

唇を噛みしめ、ギッとにらみつける。

視線を感じたゴゾが一瞬身を強張らせるほどの気迫だ。

だが如何に怖い目で睨んだところで、ルキィのピンチは変わらなかった。


ギシッ、ミシィッ。

「うぐぐ……ぐぎぃ……」

ピキッ。


関節が悲鳴を上げている。

ルキィの体の内側から何かがブチブチと切れる音が聞こえる。


「このままだと、確実に、私、壊されちゃいます……ね」


クワッと開かれた口の牙から滴り落ちる毒が肩口にかかる。

嫌なにおいと皮膚がマヒしていく感覚。

肉体を粉々にされるが先か、毒牙にかかって倒れるのが先か。

脱出不可能、敗北を待つだけの状況に活路なし。

勝利を確実なものにすべく、ゴゾは胴体をねじって極限まで締め上げる。


「グ、グホッ……」


呼吸も奪われたルキィの、苦悶する表情にゴゾは勝利を確信する。


「こ・こここ・これで・ツナ缶・2個とも・オレの」

「ゆ、ゆ、ゆ…………」


「?・?・何・なんだ?」

「許さない……絶対に!」


全身粉砕寸前のルキィから発せられた、予想外の怒りの言葉が!

赤い巨岩のような全身がさらに赤みを増し、水蒸気が陽炎のように立ち上る。

触れるほどまで迫っていたゴゾの牙が押し戻される。


「?・何?・何が?」

「この罪、必ず、償って、もらいます、からねッ!」

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