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海賊王怪獣(自称)ゴゾ登場

「輸送船は逃げ切れそうだよ、ルキィさん」

「じゃあ、あとはこの海賊さん、じゃなくて怪獣さんだけですね」


大怪獣ルキィの腕の中で巨大な怪生物は身をくねらせ脱出を試みている。

だがルキィの怪力は海の中でも相手のパワーを圧倒していた。


「逃がすわけにいきませんよ。『船を襲って積荷の食料品だけを奪う海賊が出る」っていうので10日間も張り込みしてたんですからね」

「……ウグッグッ、は・な・せ!なんだな」

 

明瞭な怪獣語、正確には妙な訛りのある銀河標準語が背後から聞こえた。

反射的に振り向いたルキィと、鎌首をもたげた大蛇の頭と目が合った。


「この蛇怪獣さんしゃべった?アナタ、知能のあるタイプなんですね!」


海面から30メートル以上突き出した大蛇の頭は、感情の読めない両眼でルキィをジッと見ていた。

チロチロと出し入れされる細い舌があまりにも不気味だ。

その舌先の動きにルキィは気をとられ、わずかに手元が緩んだ。


シュルッ!

「しまった!逃がした?」


素早く指の間をすり抜けた大蛇は逃げると見せて、逆にルキィの体に巻きついてきた。

払いのけようとしたが、足の踏ん張りの効かない水中ではかえって体勢を崩した。


「ルキィさん!?」

「な、なんとか、ダイジョブ……」


間一髪、首を絞められるのは逃れた……だが。

上半身は大蛇怪獣に完全に拘束され締めあげられている。

陸上なら自由な両足の膝蹴りでなんとかするところだが、踏ん張りのきかない海中ではロクに威力がない。


ギュウウウ。


巻きついた胴体でルキィを絞める、いや、絞め殺すつもりだろう。

硬い皮膚装甲が、分厚い筋肉層が、頑丈な肋骨が悲鳴を上げている。


「ルキィさんよりパワーが上なのか?」


弾太郎も驚くパワーだ、絞めつけるだけなら明らかにルキィを上回っている。

ジリジリと押されるルキィの顔の前に大蛇が顔を寄せてきた。

相変わらず感情の読めない目でルキィを見つめて、ポソリとつぶやいた。


「お前、銀パトの、警察官、か?」

「えっ……そ、そうですけど」


「おれ、ゴゾ。おれ、海賊王ゴゾ!」

「か、海賊王って?」


ゴゾというのがこの怪獣の名前らしい。

しかも『海賊王』を自称するあたり、地球文化に詳しいのかもしれない。


「お前、おれに、あったこと、ない、けど、銀パト警官、おれの、仇……」

「???、カタキ?仇って、誰のですか、ウグググググ」

ギチギチギチ。ミシミシミシ。


それ以上、ゴゾからは答えは返ってこなかった。

絞めつけを強めて一気にルキィを絞め殺すつもりだ。


「ルキィさん、ごめん!」

ゴィーン!

「アイタぁ?」「グフ?!」


弾太郎の言葉を聞き終わるより早く、頭の上に重くて硬いものが落ちてきた。

同時に大蛇ゴゾの頭にも。

落ちてきたのは宇宙船『うずしお丸』から投下された大型の空っぽのタンク。

破損した船の沈没を防ぐための外付けの浮袋だが、それを落下させただけだ。

それなりの重量のある金属の塊をそのままゴゾとルキィの頭にぶつけたのだ。


「もーぉ、ダンタロさぁん!無茶しないでください」


頭の天辺を押さえてルキィは不平をもらした。


「ごめん、ごめん。でも敵と密着状態じゃ下手に攻撃できなくて」


確かにあの状態では攻撃すればルキィに当たる。

しかも手加減していては強力な締め技を外せない。


「グフ、ゴフ、あ、頭が、ゴィーン、こいつは、たまらん」


狙い通り頭部に不意打ちを食らったゴゾはルキィから離れた。

体をくねらせて深く潜り、再び捕まる前に逃げ出した。


「あ、コラ!待ちなさい!」


ルキィは手を伸ばしてゴゾの尻尾を掴もうとした。

しかしゴゾは尻尾をゆらりと動かして何なくかわし、影も見えない深みへと逃れた。


「ダメ、見失っちゃった」

「レーダーでも見えない。ジャミング装置を持ってるみたいだ」


完全に敵を見失った。

ルキィは悔しそうに海上を見回していたが、もはや気配もない。

しかし、敵は見つからなかったかわりにおかしなものが見えた。

それも海上にではなく、空に、だ。


「あれー、変な雲が近づいてきますよ」


円盤状の黒い雲が雨風を伴って接近してきた。


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