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SOS!貨物船を救助せよ

月まで軌道エレベータ経由で1時間。

隣の恒星系まで急行宇宙バスで半日。

そんな時代でも地球上の物資輸送は海上をゆく船が主力だ。

もちろん大型宇宙船なら10万トン単位での大陸間高速輸送が可能だが、輸送コストを考えると昔ながらの海上輸送がベストとなる。

人口増加に伴い地球の海は常時何万隻という無人輸送船が行き来してた。


そして大航海時代から続く伝統的職業もこの時代に受け継がれていた。


『SOS!メイディ!助けて!海賊に襲われてます!』


感情のこもらない、しかし絶体絶命を伝えるシグナルが全周波数帯で発信される。

全長380メートル、白い極太パイプをいくつも束ねたような外観の巨大海上輸送帆船。

乗組員はゼロで搭載されたAI、疑似意識を備えた人工知能が航行のすべてを司っている。

大概のことには自力で対処できるAIでも対処できない危機が接近していた。


『逃げ切れません。至急、救援を要請します』

ヒュゥゥゥーッ。


口笛のような音が海の中から聞こえる。

船の航跡を追うように海中に黒く、長い影が身をくねらせながら追ってくる。

だが広い公海上では救援が間に合う望みはほとんどない。

すでに海中の影は船尾に触れる寸前だ。


『ああ、黒くて、太くて、大きなモノがバックから私を』


ちょっとAIの反応が怪しくなってきた。

精巧な人工知能だけに想定外のストレスには弱いらしい。


『ああ、ダメ。そんなので迫られたら私壊れちゃう』


言っていることは正確な表現だが、船体より早く搭載AIの方が壊れたかもしれない。


『ああ、助けて。誰か早くぅ』

『今、行きます!衝撃に注意して!』

『???、アナタは誰?』


壊れかけAIを当惑させる返信が来た、その直後に。


ズドォン!


爆発音に近い水音、船尾すれすれに数百メートルに達する水柱。

発生した大波が巨大な船を激しく揺さぶった。

後方のカメラが水柱の中の恐ろしげな、巨大な赤い姿を映し出す。


『赤い怪獣?』

『大丈夫、彼女は、その怪獣は警察官です』

『??????』


いつの間に飛んできたのか、上空に宇宙船がホバリングしている。

側面の船名は『うずしお丸』と読めた。


「ルキィさん、そいつを引き剥がして」

グギャァッ!


宇宙船の拡声器の声に赤い怪獣が反応する。

船体に巻きつきかけていたヌラヌラした蛇のような怪生物を力づくで引き剥がす。


『怪獣が、海賊、いや怪獣を?警察官?彼女?』

『今のうちに、逃げて!全速力で!』

『了解しました』


平静を取り戻したAIは理解できる部分だけを実行した。

すなわち全速力でこの海域を離れ、近くの港へ避難する。


『ありがとうございました』

『どういたしまして』

ギャォン!


宇宙船と赤い怪獣の両方から挨拶を受け、スピードを上げながら離れる。

命の恩人たちに貨物船搭載AIは最大級の感謝を示した。


『素敵な方。貴方になら私の全てを捧げてもイイ』


返信はなかった。



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