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怪獣娘の緊急出動(人外親子VS防衛警察&怪獣娘)

「擬態解除、いくぜ」


ハルバドがサングラスをかけるとレンズから銀光が真上にほとばしった。

光は空中で拡散して銀の粉となって降り注ぎ、ハルバドの姿を輝く銀球の中に包み隠した。

一秒足らずの間を置いて銀の球体が膨張した。

壁を吹き飛ばし天井を突き抜け工場の半分を吹き飛ばして巨大な銀光の球体が出現し、膨張して弾けた。


キュォォォォン!


奇怪な声を上げて巨大な生物が姿をあらわした。

ヌラヌラした皮膚で手足に水掻きをもつ怪獣。

カエルとオオサンショウウオを合わせたような姿をしていた。

グロテスクだが、どこかマヌケでユーモラスな顔のそいつは、一歩踏み出すだけで大地をドンッ!、と震わせた。


「畜生め、奴も怪獣だったか。おい本部!聞こえるか?」


塩川長官は腕時計型通信機に早口で命令した。


「緊急事態、巨大生命体によるテロ発生だ!増援頼む」

「了解。到着まで四分……」


「遅い!間に合わんわい、糞ッたれが」


怒りにまかせて通信機を地面に叩きつけると、塩川長官は胸のホルスターから銃を抜いた。

一見すると子供の玩具のような光線銃だが、対怪獣用特殊兵器だ。

ただし研究室から長官権限で強引に持ち出してきた、使い物になるかどうかの試作品だが。


「銃身に負荷がかかりすぎて、三発までしか撃てんのがネックだが……」


若い頃に現場で鍛え上げた射撃の腕は今でも落ちてはいない。

管理職に就いてからも日々鍛錬を怠らなかった。

構えた光線銃から白熱口がほとばしり怪獣の胸板を貫いた………かに見えた。


キュォォン!(痛ぇな、この野郎!)


結果は皮膚を少しばかり焦がして、大怪獣ハルバドを怒らせただけだった。

ハルバドは工場の屋根を蹴り上げ、その破片が一帯に降り注いだ。


「おわっ?っとと」

ドドッ!ドォゥン!


落下してきた鉄骨を避ける、と今度はコンクリート塊が鼻先をかすめて足元につきささった。


「技研のアホども、何が『どんな怪獣でも一発で仕留められます』だ。ホラ吹きめ」


再び光線銃をハルバドの頭に向けて……銃身からボンッと間の抜けた音がして白煙があがった。


「三発どころか一発でオシャカじゃねぇか、この役立たずが」

「長官、こっちへ!早く乗って」


試作品のガラクタを投げ捨てて、大慌てで乗ってきた車に飛びこんだ。

間一髪、投げつけられた貯水タンクが破裂し、散乱した破片が防弾ガラスと超合金の装甲板にいくつもの傷を残した。


「長官、ご無事ですカ?」

「ご無事ですか、じゃねぇ!ボサッとしてねえで反撃せんか」


「しかし弾太郎は?それにルキィさんもまだ中に」

「あー、弾太郎なら、そこに生体反応が出とるだろ」


レーダーにさっきまではない小さな光点が出ていた。

防衛警察官は固有の生体反応パターンを登録されている。

近距離ならば連絡がとれなくても位置と生体情報をスキャンできる。

レーダー上の青い点滅は心拍呼吸正常のしるしだ。


「それにルキィさんが守ってくれるはずだ。遠慮なくぶちこめ」

「は、はい……」


ルキィの正体を知らないジンには、どうやって弾太郎を守ることができるのかは理解できなかった。

だが、自信ありそうな長官の態度に意を決して攻撃システムをロック解除。

平凡なライトバンだった車が砲身とミサイルでハリネズミのように武装した戦闘車両に変形した。


「ありったけ撃てぇ!」

「発射ッ」


言葉通りにありったけのミサイルとレーザー光線と超音波と銃弾を盛大にお見舞いした。

ハルバドの巨体は激しい爆発の中に呑みこまれた。


「ふぅ、やったかナ?」


全弾撃ち尽くしてジンは大きく息をつき、額の汗を拭いた。


「いいや……まだだ」


陰鬱につぶやく長官の声に、ジンは少しひきつった。

高層ビルを三十秒ジャストで跡形もなく消し去る火力を撃ちこんだのだ、いくら怪獣といえど……


「ハハハ、まさか。いくらなんでも、そんな、無傷だなんてことハ」


爆煙が風に払われ、ハルバドが再び姿をあらわした。


「無傷なんて……ことハ」


少しばかり埃にまみれてはいるがダメージを受けているようには見えなかった。

ところどころ火傷らしき焦げ跡はあるが戦闘不能には程遠い。


「やっぱり無傷だったァーッ?」

ギュォォォッ!(野郎、よくもやりやがったなぁ!)


怒りに満ちた雄叫びを上げてハルバドはズシンと一歩、踏み出した。

…………その頃、工場の奥では弾太郎がようやく動き出していた。


「いきなり天井が崩れてくるとは。ふうー、びっくりしたなぁ」


ハルバドが擬態解除して怪獣体に戻った時、強烈な揺れで工場の屋根が落ちてきた。

とっさに空っぽのケースの中に飛びこんだのが幸いした。

落ちてきた屋根の破片は強度を誇る宇宙空間仕様のガラスが受け止めてくれた。

小さな破片もいくつかケースに入り込んだが、ケガには至らなかった。


「君たちは大丈夫?」


少女たちは泣き出しそうな顔でうなずく。

彼女たちを閉じ込めているケースもこの程度では傷ひとつつかない。


「待ってて、今すぐに出してあげるから……」


弾太郎は壁に浮き出したままのコントロールパネルの前に立った。

戸惑いながらキーを叩くとガラスケースが次々と開いた。

中から少女たちが泣きながら飛び出してきた。


「さあ、今のうちに早く逃げるんだ」

「で、でも、あなたはどうするんです?」


「もうすぐ増援が到着するはずだ。それまでなんとかあいつらを足止めしてみる」

「そーはいかんぞぉぉぉ、ゲホッ、ゲホッ……」


積み重なっていた瓦礫の山がグラグラと揺れた。

崩れた瓦礫を跳ね飛ばして、埃まみれになったドンエルがあらわれた。


「逃がしはせん、今逃げられたら、ゲホッ、ゲホッ」


自分が巻き上げた埃でむせびながら、ドンエルは唇を吊り上げて笑った。

しかし余裕の笑みではない、むしろ悲壮感さえ漂う、ものすごい笑い方だ。


「今、逃げられたら……納期に間に合わなくなってしまうじゃないか。そうなれば」


ちょっとよろけながら這い出してきたドンエルは立ち上がるや、腕まくりした。

肥満体と思いきや、結構筋肉タップリの太い腕である。


「そうなれば……我が社は倒産してしまうだろ!だから頼むから大人しく納品されてくれ!」

「嫌です!」×7名


弾太郎以下7名一斉に拒否られた。


「三食昼寝つき!生活費一切無料!」

「絶対、嫌です!」×7名


待遇アップも交渉失敗。


「綺麗なお洋服だって、宝石だって、最高級アクセサリーだって全部飼い主持ち!こんな好条件これからも絶対ないぞ!」

「あ、それなら考えなくも……」×6名

「いりません!セーラー服着せられるだけでも絶対に!お断りです!」×1


限界いっぱいの大幅譲歩!だが弾太郎ひとりの勢いだけで交渉決裂!


「どーしてもダメなのか……」

「当然です!」


即決で弾太郎に拒否されてドンエルはガックリと肩を落とした。

しかしそれでも彼はめげなかった。


「しかたない、こうなれば力ずくでもだ」


指をバキバキと鳴らしながらドンエルは一歩、また一歩と迫ってくる。

体格差は3倍以上、荒事に関しての場数も向こうが上だろう。

しかし弾太郎は逃げだすわけにはいかなかった。

背後に少女たちを庇っているのだ。


(何があろうと、彼女たちを守ってみせる)


新米とはいえ地球防衛警察の警官たるもの、民間人を背にして退くわけにはいかない。

必死の形相で身構える弾太郎に対してドンエルは余裕の笑みで近づいてくる。


「大事な売り物に傷をつけるわけにはいかんが、暴れるペットの扱いには慣れてお……グオッ?」


ゴィーンという鈍い打撃音と同時にドンエルのセリフが途切れた。


「えっ……」


弾太郎も驚いた。

ドンエルの頭の上には馬鹿でかい鉄骨が振り下ろされ、頭蓋骨が変形するほどめり込んでいた。


「う、ぐ、ぐ、お、お、お、お、ま、え、は、さっきの……」


地球人なら即あの世行きの一撃だが、さすがは地球外生物だけのことはあった。

激痛に涙しながらもドンエルは顔を後ろに向けた。

鉄骨の端を抱えているのは赤髪の少女だ。


「ルキィさん?助けに来てくれたの」

「あ!無事でしたか、ダンタロさん!」


弾太郎が無事だったのが嬉しかったのだろう。

ニコニコしながら手を振っている。


「くそ……邪魔をするなぁッ!」

ドゴッ。


凄まじい形相で掴みかかろうとするドンエルの顔面に、ルキィは問答無用に鉄骨を突き入れた。

今度は顔面陥没したドンエルは鉄骨ごと空中をブッ飛んだ。

崩れかけていた壁にぶつかり、ぶち抜いて、そのまま外へ飛んでいった。


「ルキィさん、ありがと……」

「あれ、ダンタロさんの着ている服って?」


瞬間、弾太郎はピキッと硬直した。

つい忘れていたが今、着せられているのはセーラー服だ。

知り合いには絶対見られたくない姿だった。


「あの、その、こここここれは、その……」

「私とお揃いですよね?とっても似合ってますよ。他星の私から見てもすごく可愛いです」


真っ白に、弾太郎の頭の中が真っ白になっていく。

宇宙的視点から見ても僕は男に見えないのか?

いや宇宙の意志がオカマへの道を示しているというのか?


(ああ、このままではいけない!考えるな、今は何も考えるな!)


「ええと、ルキィさん。その話は後にしよう。とにかくこの女の子たちを安全な所へ連れていかなきゃ」

「了解しました!」


ようやく慣れて来た地球式敬礼をしてルキィは瓦礫の山を駆け降りてきた。


「さ、皆さん。早くこっちへ」


ルキィの先導で囚われていた女性たちは出口に向かった。

弾太郎も後方を警戒しながら最後尾に続く。

ふと足を止め壁にかけられている物を見た。

非常用という表示がついたガラスケースで、中には消火器や縄梯子など災害発生時の道具が納められていた。

その一つにピストル型の信号弾があった。


「高度百~五百メートルで発煙か。威力はなさそうだけど、これなら武器の代わりになるかな?」

「ダンタロさん、早く!怪獣がこっちへ来ます」


「わかった、すぐ行く!」


切羽詰ったルキィの声に応えて弾太郎は再び走り出した。

華麗にスカートを翻らせて……


(うう、スースーするのが………なんか情けないよ)

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