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怪獣娘の緊急出動(火蓋を切る青い星.)

(『どうにでもしてやる』だってぇ?運が向いてきやがったぜぇ!)


謎の黒幕の言葉にドンエルは内心で小躍りした。

この依頼者が裏世界の実力者なのは聞き及んでいた。

『どうにでもしてやる』の言葉の意味は逃走経路の確保だけではない。

現行犯逮捕されない限りはどんな大事になっても揉み消す、という意味だ。

しかも今後もオイシイ依頼を期待できるし、表の商売でも便宜をはかってもらえる。


「了解しました!ただちに……」


思わずほころぶ顔面を引き締めて、監視カメラ映像を再度確認しようとした。

だが、その顔がすぐに曇る。


「うぬぬぬ?監視カメラがやられちまったか」


映し出されていた映像がブレて、パチッと消えた。

カメラを切りかえると警察らしき二人のうち若い方が銃をカメラに向けている。

その映像も消え、他のカメラも反応がなくなった。


「野郎!全部壊しやがったな。高かったんだぞ、あのカメラは」


カメラの修理費も必要経費に認めてもらえるか、とか考えながら生体反応センサーに切り替えた。

無駄だった。


「ええい、妨害装置を使ってやがるな?ド田舎惑星のくせにバカ高い機材装備しやがって。おい、バカ息子さっさと起きろ!」

「アイタッ!俺の頭をいちいち蹴飛ばすなよ、親父」


「使えねェ頭なら蹴飛ばすくらいしか使い道ねえだろが」

「ひでぇな、自分の息子に向かって……」


「この星の警官どもがくる、五分間だけ持ちこたえるぞ」

「持ちこたえる?五分?それだけありゃあ……この惑星上の警察を全滅させてやれるぜ」


決して過信ではなかった。

それなりに荒事もくぐりぬけてきた。

貧弱な装備しかない田舎の警察軍を蹴散らすくらいは造作もなかった。


「おい、おめえらはここで大人しくしてな。すぐに片づけてくる」

「あ、待て!」


ガッ……シャン。


弾太郎の前で分厚く重い特殊合金の扉が閉められた。

ドンエル親子二人は弾太郎たちを閉じ込めた区画を離れると、搬入口の前にかけつけた。


「突入してくるぞ、シャッターが開いたら」

「ぶっとばしゃあいいんだろ」


ペキペキと指を鳴らしながらハルバドが悠然と歩を進める。

現地人の原始的な装備など自分には通用しないのだ。

恐れることはなにもなかった。


ボォン!


轟音をたててシャッターに大きな何かが衝突した。

シャッターは細切れになって吹っ飛び、妙にカラフルな長方形の物体が宙を飛んできた。


「ああ?俺の車じゃねか!」

「チッ……」


ドンエルの手にした杖が一閃し、派手な装飾の車は空中でまっぷたつ。

そのまま反対側の壁まで飛んでいって激突炎上した。


「くっそぉー、どいつだ?俺様の車こんなにしやがったのは!改装費にいくら使ったと思ってやがる」


半泣き声でハルバドは壊れたシャッターのすぐ外にたたずむ三人の人影のうち銃を構えた若い男に殴りかかった。

その前に一番小さな人影が飛び込んできた。


「覚悟してください、凶悪誘拐犯さん」

「お前、確か……」


確か、あの時の娘か?と言い終わるより早く、顔面にルキィの右ストレートがめり込んだ。

首のあたりでゴキッと変な音がしてハルバドの突進は止められた。

倒れそうになりながら潰れた鼻を押さえて、ハルバドはうめいた。

流れる鼻血が指の間からこぼれる様が痛々しい。


「このパワー、地球人じゃねぇな?うぐぐっ、お、お前もまさか……」

「公務執行妨害です!」


今度はルキィの飛び蹴りが、接触状態の超至近距離から顔面直撃した。

ハルバドはダンプカーにはねられたみたいに宙をすっ飛んでいった。

ルキィはスカートをひるがえらせながら華麗に着地。


ガラガラガラ、ガッシャーン!


反対側の壁まですっ飛んで激突したハルバドが轟音上げて崩れた壁の下敷きになった。

そして瓦礫の下からかすかに声だけが聞こえてきた。


「白地に……青の、お星さま……いいセンス……して………る」

「……?何をいってるのでしょうか」


相手が何を言ってるのか理解できないルキィだったが、それでも隙はみせないない。

空手に似た構えを崩さず、憮然としているドンエルに対し徐々に間合いを詰める。


「見たか、今のを?」

「はい、確かニ」


塩川長官が傍らのジンにささやく。ジンも緊張した面持ちでうなずく。


「見事なコンビネーションの蹴り……」

「確かに白地に青い満天の星。なんと見事なデザインのパン……」


バキャッ、と本日何度目かの長官のツッコミが決まった。


「じょ、冗談はこれくらいにして。今の蹴りは素人の技じゃないですネ。長官、彼女は一体何者ですカ?」

「彼女の正体は…………機密事項だ。ま、わしらの旧友の娘さんとだけ覚えておけ」


「了解しましタ」


立ち入るべきではない領域に触れたことだけは理解できた。

この件に触れるのはあきらめてジンは銃をドンエルに向けて警告した。


「無駄な抵抗はやめろ、ここは完全に包囲しタ」

「包囲だとぉ?ふふん、たった三人でこのでっかい建物を包囲、かね」


ハッタリを鼻で笑うとドンエルは背を向けた。

ルキィたちが呆気にとられるほどの余裕タップリのふてぶてしい態度で、瓦礫の下に埋もれたハルバドに命じた。


「おい、バカ息子。そんなところでいつまでも寝とらんでお客さんの相手をせんか」

「あいよ、親父……」


瓦礫の山がモソモソと動き始めた。

人間の腕力では撤去できそうにない重量が盛り上がり押しのけられると、その下から埃まみれのハルバドが姿をあらわした。

ビシッときめていたはずのスーツもズタボロだが本人は怪我をした気配もない。


「あーあ、色男台無しだぜ……」


埃を払いながら胸元からド派手なサングラスを取り出した。

金縁に銀色巨大レンズで小さな宝石みたいな物が埋めこまれている悪趣味なサングラスだ。


「あれは……擬態解除用の?」


後ろの二人を庇うえる位置でルキィは身構えた。


「ヤバイぞ。下がれ、新入り!」

「ちょ、ちょと、長官?」


塩川長官がジンの襟首をつかみ後ろへ引きずって後退し始めたのだ。

踏みとどまろうとするジンだが。老体の腕力は相当なものであっさり外へと引きずり出された。


「ルキィさんが!それに、弾太郎も……」

「あのお嬢さんなら心配はいらん。弾太郎君も多分、な」

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