怪獣娘の緊急出動(黒幕、なのかな)
突然の通信に不安を隠せないドンエルだった。
「仲介屋の野郎か。こっちはそれどころじゃねぇってのに」
すぐに応答しなければ、仲介屋の不信を買ってしまう。
そうなればますます立場が悪くなる。
悪くすればドンエル親子だけでなく会社丸ごと宇宙から消されるだろう。
「ちょっと待ってろ、通信が入った。ハルバド、こっちにつなげ」
パネルを操作すると光は壁一杯のスクリーンに早変わりし、映像が映った。
「……仲介屋の野郎、じゃねぇぞ?あんたは誰だ?」
『ああ、君がドンエル君かね』
その人物は地球人と同タイプらしかった。
らしかった、というのは逆光のため輪郭しかわからないからだ。
転がされたまま、弾太郎はシルエットの人物を注視する。
(あれが黒幕、なのかな?それっぽい、というかテンプレートな感じするけど)
椅子でくつろぐその人物には二本の手と二本の足と頭を備え、声も地球人の老人の声に似ていた。
猫に似た小動物を抱き、静かに愛撫している様は確かにも『悪の首領様でございます』という感じだが。
「そうだが、あんたは?」
『おお、これは失礼であったの。わけあって本名を名乗るわけにはいかんが』
シルエットはこちらに向き直り軽く会釈した。
『貴殿に依頼した者と思っていただければよい』
「依頼……まさか」
ドンエルは背後の『入荷商品』を振りかえった。
ある条件を満たす見目麗しい地球人の娘を七人、それが依頼だった。
仲介屋の話では依頼主は裏銀河でも最恐の実力者だから決して怒らせるな、と。
『左様、その依頼は私が出したものじゃ。条件に合う地球人の娘を七名、間もなく納期じゃが』
「ハ、ハイ。わかっておりますです!」
『首尾よく揃ったかどうか、ちと気になってのう』
「ハッ、そ、それが」
ドンエルの顔色が青を通り越して紫色になった。
仲介屋はこうも言っていた。
-金払いはいいが失敗者には容赦がない-
-怒らせて原子一つ残さずに消された者は数知れない-
-消息不明になりたくなければ絶対に失敗するな-
答えあぐねている間に依頼者は囚われの少女たちに気がついた。
『おお、それが依頼の成果か、なるほどなるほど』
スクリーンの向こうから、恐らくは太陽系外からの絡みつくような視線が、震えつつ涙を流す少女たちを物色した。
『ほうほう、首尾は上々のようじゃな……ん?六人しかおらぬではないか』
声の質が変わった、上機嫌から不機嫌で威圧的な声に。
「それが、その七人目は今、調達中でして。いえ、間もなく。吉報をお届けできるかと」
脂汗を流しつつ強張った営業スマイルを必死で維持するドンエル。
だが、謎の依頼者には通じなかった。
『依頼が完遂できぬとあれば……わかっておろうな。商売ができなくなる程度では済まぬぞ』
「ハ、ハイ、存じ上げております!今、最後の一人を」
『……よかろう、今しばし時間を……いいや、待てい!』
突然の大声に全員が縮み上がった。
ドンエルや弾太郎ばかりか完全防音のケースに閉じ込められた娘たちまでもがビクゥッと体を硬直させ、一瞬泣くことすら忘れてしまった。
『そいつは何者じゃ?』
「そいつ?」
『床の上に転がっているそいつじゃ!』
依頼者の突き刺すような視線は弾太郎に向けられていた。
「あ、こいつですか、こいつは、その、依頼とは何の関係もないただの……」
『一見、娘のようじゃが。地球人の雄じゃな。それもまだ育ち切っていない年齢の』
「ええ、ちょっとその……迷い込んできまして」
間違って誘拐しました、とは言えなかった。
ばれたらその場で契約破談は確実だ。
『アレをそいつに使え』
「アレ?アレと申しましても」
『七人目の条件になっているアレじゃ!その地球人の雄で試してみよ』
「ええっ?しかしコイツは見かけはこうですが。アレは……」
『さっさとやれぃ!それともこの場で貴様等を……』
ためらうドンエルを黒幕の声は一喝した。
有無を言わせぬ、脅迫同然の声だ。
「かしこまりましたぁ―――ッ」
鬼気迫る形相のドンエルが弾太郎を後ろから羽交い締めにした。
前からは必死の形相のハルバドがつかみかかってきた。
「何をする!やめろ!ああ、それは?や、やめ。そ、それはぁ?やめてくれぇー!」
弾太郎のささやかな抵抗を制圧して凶行は遂行された。
そして囚われの少女たちは目前で繰り広げられる世にもおぞましい光景に身を震わせた。




