怪獣娘の休日(希望?と野望?)
こちらは正しくは第23部分です。
操作ミスでお読みいただいている方々に醜態をさらしてしまいました。
ご容赦ください。
「確かに、ゴズラ様は所詮はフィクションの世界の方、架空の存在です」
「そうそう!わかってるんだね」
あまりの入れ込みぶりにひょっとしたら現実とごっちゃにしているのではないか、と心配したのだが。
少しは安心できそうだ。
「でも、架空の存在だからこそ!本物以上のリアリティをもって感動を与えるのです」
弾太郎は少しでも安心できると思った自分が馬鹿に思えてきた。
「私もゴズラ様ファンクラブ会員番号四二五六七七八九号、銀河ペルセウス・アーム支部第七ブロックリーダーを務め、はや幾年。ゴズラ様生誕の地でお会いできるとは……思ってもみませんでした」
(その肩書きは何?会員が一体何万人いるんだ?いやそれ以前に何で宇宙にゴズラファンクラブがあるんだ!)
恐るべしニッポンの特撮、銀河連邦加入より早く宇宙進出を果たしていたとは……そこまで考えたところで頭痛は頂点を突破した。
もう何があっても気にならない領域に踏み込んでいた。
「と、とにかくよかったね。だけどそろそろホテルにチェックインしないと。もう出ようか」
「あ、ちょっと……」
出口へ向かおうとする弾太郎の袖口をルキィが引っ張った。
なんだか妙にもの欲しげな顔でジッと弾太郎を見つめている。
対女性免疫抵抗力ゼロの弾太郎にはゴズラの超熱線よりも有効な攻撃だった。
たちまち心臓がバクバクと高鳴り、体温も急上昇。真っ赤になった顔でうろたえることになった。
「な、な、な、なにかな?」
「ダンタロさん……お願い」
頬を紅に染めた少女の顔がツゥと接近してくる。
思わず後ずさりしようとした弾太郎だが、極度の緊張におちいった筋肉が硬直して動かない。
顔をそむけることさえできない。
「海人様!見えますか!」
看板の影から携帯のカメラを二人に向けているのはもちろんゲン爺。
実況中継先は於母影島の秘密のアジト?だ。
『ううむ、レトロ怪獣映画に入った時は作戦失敗かと思ったが。いきなりこの展開とは。弾太郎め、もしや暗闇に乗じて何か仕掛けたか?』
「坊ちゃんに限ってあり得ねぇと思いますが」
『甘いぞ、ゲンさん。何しろアレは……私の息子なのだからな。仕事にかこつけて言い寄るくらいのことは』
「海人様と一緒にしねぇでくだせぇ」
『どーゆー意味だ?』
「んなことより、いよいよ……」
カメラで盗撮されているとは知らず、弾太郎とルキィの距離はもう、あと数センチ……。
「お願い、ダンタロさん」
「だ、だ、だから何のことを」
「無理に、とはいいませんから。その……ダンタロさんだって色々準備があると思うし」
「じゅ、準備ィ?」
それは心の準備をして欲しいということなのか。それはつまりそういうことなのか。
「でも、私……私、どうしても……どうしても」
「ど、どどど、どうしてもなの?」
「はい、どうしてもです!だからお願いです!」
「わ、わ、わかった!わかっ……」
「え、じゃあ、じゃあ、いいんですね!」
(しまった!)
ルキィの迫力に負けてつい返事をしてしまった。
しかもこの一言がどんな結果をもたらすかも考えずに。
真紅の瞳をうるるるとさせているルキィを前にして取り消しはできない。
「いや、その、あのですね……」
「来月もここに見にきていいんですね!来月もまたゴズラ様に会えるんですね!」
「……へっ?」
「今、売店のおばちゃんに聞いたんです。来月の上映はゴズラ様劇場版第二作『ゴズラと秘密の研究所』に決まったって。ああ、あの第一期ゴズラ様最高傑作が地球で見られるなんて。大感動です!」
「あー、そうなのか」
両肩からも足腰からもヘナヘナと力が抜けていく。
すぐそばで看板が倒れる音も気にならないくらいに力が抜けていった。
「約束ですよ、来月の非番の日にまた、ここへ連れてきてくださいね」
「わかったよ、わかったから?だ、だ、だ、抱きつかないで!」
まわりの視線も考えずに嬉しそうにほおずりしてくるルキィに、弾太郎は赤面+あたふたしていた。
(なんだったんだ、結局。ま、いいか。この程度の希望をかなえるくらいは)
『だ、大丈夫か。ゲンさん?』
「へ、へぇ……そっちこそ、でぇじょうぶですかい?携帯から、派手にずっこける音が聞こえやしたが」
『う、うむ。ちょっと椅子ごとひっくり返っただけだ。しかしこんなベタな展開でくるとはな』
「こんなこったろうという気はしてやしたが。やっぱお嬢ちゃんはタダ者じゃあねェです」
とたんに深ぁーいため息が携帯から聞こえてきた。
『しかしマズいな。このままじゃルキィ君の親父さんに会わせる顔がないぞ』
「?そりゃどーゆーこって?」
『うん……実はな、地球防衛にあたってルキィ君を雇ったのは内緒の事情があるのだ』
「存知とりやす。予算がなくて銀パト正式所属の怪獣を雇えなかったんでしょ」
『そうだ。それで銀パト入隊したばかりの娘がいると聞いていたからな。ダメもとで親父さんに頼んでみたんだ』
「ルキィちゃんの親父さん接近格闘戦なら銀河最強の、でごぜぇましたな」
『ああ、だがあのオヤジ、預かる時に条件を出してきてな』
「どんな条件を?」
『それがなー、娘に女としての自覚をもたせろ、というのだ』
「はぁっ?」
『おまけにできるだけ軟弱そうな地球の男とくっつけろ、多少のやりすぎは大目に見る、とまで言い出してな』
「何考えておいでなんでしょうな?」
『わからん、わからんがこっちとしても弾太郎には強力な相棒が必要だったし。実戦経験がない分、格安で雇えたしな』
「でも、それなら相手は坊ちゃんでなくてもよかったのでは」
『ゲンさん、それなら聞くが。弾太郎の嫁を連れてきてくれる甲斐性があると思うか?』
「全然、思いやせん」
『ルキィちゃんなら弾太郎の嫁として異存あるか?』
「いいえ……でも、坊ちゃんの気持ちも考えてですね。ここは焦らず」
『……ゲンさんよ、お前は弾太郎の子供を抱き上げてみたくはないのか?』
「ウッ?」
『一緒にお昼寝して海水浴に連れてって浴衣を着せて夕涼み……』
「そ、それは、確かに」
『冬にはコタツでミカン食べながら若い頃の昔話なんぞ聞かせて。お正月の初詣に手を引いて……』
「全身全霊を上げて任務を達成してご覧にいれやす!」
…………宇宙のどこでも親バカの野望とは子供にとって実に迷惑なものだが。
爺バカの野望となると、さらに救いがたいものであった。




