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怪獣娘の休日(渦巻く陰謀?)

もし弾太郎がもう少し経験を積んでいたなら、尾行者の存在に確実に気づいたろうか。

いや、コンビニの看板の陰に隠れた尾行者は完全に気配を消し去っていた。

素人ではないことは確かだった。


「本部どーぞ、ターゲットはタコヤキ三ケースを食べ終わり、クレープ屋に目標を定めた模様」

『こちら本部、引き続き監視を続行せよ』


「しかしこのままじゃあ、坊ちゃんの手持ち資金が底を尽きますぞ。海人様」

『心配はいらんぞ、ゲン爺。カードも持たせてある、買い物も食事も問題ないはずだ』


尾行者の正体はゲン爺であった。

島へ帰ったと見せかけてその実、二人を監視していたのだ。


「あ、よーやくデパートへ向かいやした。これで買い物らしくなってまいりやした」

『買い物ではないぞ、これはデートなのだ。それも我が最愛の息子の記念すべき初デートだ』


闇の中に数十もの映像パネルが浮かぶ空間で海人は静かにグラスを傾けた。

琥珀色のブランデー……に見せかけた麦茶で喉を潤し、息子には見せたことない凶悪な笑みを浮かべる。


「ククククク、弾太郎よ、今日は父親として我が人生最高の一日となるだろう。お前がうら若き婦女子と肩を並べて歩く姿、永久保存映像として記録してやるぞ」


手元のリモコンを操作すると画面をヤバそうな文字がスクロールされていく。

『コンビニ防犯カメラ接続完了』

『銀行防犯カメラ接続完了』

『偵察衛星制御介入成功』


ディスプレイに明らかな違法行為の成功が表示される。

それも個人のプライバシー侵害から国家機密への不正アクセスまで。

バレたら即、犯罪者の仲間入り確実だ。

そして全てのパネルに鮮明な映像が映った。

映像上で弾太郎がルキィを連れて人ごみの中を歩いている。

見ようによっては恋人同士に見えなくもない。


「さて、予定のコースは。洋服選びに下着選び……こいつは萌え、いや燃えるな。食事の後は映画鑑賞か、おあつらえむきに恋愛モノばかり上映しておる。そして最後は」


邪な笑みがとびきり凶悪な笑みにグレードアップした。


「最高級ホテルにて予約の手違いにより二人は同室に……か、最高に萌える、いや燃える夜になりそうだ。フハハハハハ……」


息子の貞操を悪魔に売りつけかねない凶悪さで海人は高笑いした。

お腹が痛くなるまで笑った後で、海人はゲン爺に指令を与えた。


『ご苦労だが尾行を続けてくれ。もし邪魔が入るようなら……排除せよ、手段は問わん』

「はァ、なんか犯罪まがいになってめぇりやしたね」


まがいじゃなくて間違いなく犯罪だよ、とつっこみをいれてくれる弾太郎はここにはいない。

よって歯止めのきかない馬鹿親父は犯罪街道まっしぐらである。


『どうした、ゲン爺。気乗りせんようだが?』

「そりゃあ、坊ちゃんに知れたらタダじゃすみませんし」


『仕方なかろう。あの奥手ぶり軟弱ぶりでは自力で嫁を連れてくるのは無理というもの。我々が何とかせねば真榊の血筋が絶えてしまうではないか』

「第一、ルキィさんを巻き込むのはよくねェと」


『心配はいらん。ルキィ君の両親とは話がついておる』

「へェ?そらまたどーゆーこって」


『以前から頼まれておったのだよ。婿のアテはないか、とな。それもできるだけ軟弱そうなヤツをという条件で』

「そりゃ、おかしかねェですか?お嬢ちゃんのお父上といやぁ有名な武術怪獣では?」


『いろいろと事情があるのだよ、我が家と同じことだ……そう、血を分けた子には明かしたくない事情がな』


少し言葉を切って、海人は遠い日を懐かしむように自分に言い聞かせた。


『それより尾行を続けろ。見失うなよ』

「へぃ」

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