大怪鳥空中戦!轟然一発!グラビトン!!
ハイエンは12機の三角翼に取り囲まれた!
というより群がっているという表現が当たっている。
正確には一機一機は飛び込んできては、一射か二射して離脱する。
そんな単調な攻撃を繰り返しているだけだ。
それだけなら大した脅威ではない、ただし……
それを12機もの数で、差し渡し百メートルもない狭い空域で、マッハ3を超えるスピードで、互いに衝突することもなく、1秒の間も空けずに攻撃し続ける。
ベテランパイロットでさえできることではない。
格下の相手に翻弄されるハイエンは今日、何度目かの悪態をつく羽目になった。
「こ、こいつら!振り払っても、振り払って……グヌゥッ!」
一機追い払ったと思えば、影からレーザーが2発、3発と来る。
ハイエンの周りには常に7,8機がまとわりついている状態だ。
突破してルパルスを攻撃することができない。
これが鷲羽小隊最強の連携技、空戦陣形『熱殺蜂球』だ!
小さなニホンミツバチは体格的に太刀打ちできない大型のスズメバチに対して、この攻撃方法を敢行する。
時に数百匹で敵に群がり閉じ込めて、上昇させた体温で敵を蒸し殺すのだ。
それになぞらえて名付けられた戦術だが……
あまりに高難易度の技術と連携が要求されるため、実戦で使えるのは地球では鷲羽小隊だけである。
「馬鹿な、なぜ接近してこれる?なぜ妨害波が効かない……」
電子機器を狂わせる妨害波発生器は足に、左足の羽毛の間に隠してあった。
あと数分はバッテリーも持つはずだ。
だが、その隠し場所を確かめたハイエンはギョッとした。
足を覆っていた羽は焼かれ、隠してあった発生器は溶解していた。
(なんてことだ、さっきの高熱攻撃で……)
気づいた時には遅かった。
蜂の群れのように群がる12機の戦闘機に完全に封じ込められていた。
闇雲に翼を振り回し、奇声で威嚇して追い払おうとするが、ヒラリヒラリと躱されて振り切れない。
撃ち落とそうにも胃の中に蓄えていた弾丸も弾切れ、逆に相手からはレーザーもミサイルも撃ちたい放題だ。
弾太郎が放った(恥ずかしい)必殺技『ブラバスト・ファイアー』は怪獣を倒すには至らなかった。
しかしハイエンの防御力を奪うことには成功していたのだ。
距離が開いていくのに安心したルパルスは、大きく安堵の息を吐く。
「やりましたね、弾太郎さん!これで雷雲に逃げ込まなくても」
「うん、そう……あ?」
戦闘機の一機が群れを離れて、こちらへと飛んできた。
三角翼に描かれたマークに弾太郎は見覚えがあった。
「翼を広げて獲物に襲いかかる鷲……鷲羽さんか?」
ちなみに小隊長以上の機体には階級を示す刻印されている。
小隊長の場合は燕をシンボル化した、かなりクールな紋章なのだが……
描かれているのは妙に漫画チックな、2頭身SD鷲さんだった。
鷲羽小隊長が『こっちのほーがカッコイーぜ!』と上書きしてしまったのだ。
一息つけた弾太郎は久方ぶりの同期生に向かって手を振った。
「おーい、わしゅうさぁーん!ありがとー、たすかったぁーっ!」
低速とはいえ飛行中の戦闘機の、しかも風防ガラスの内側に聞こえるわけはない……
はずなのだが、操縦席の鷲羽はサムズアップで応えた。
だが、直後に激しく機体が揺れた!
弾太郎の顔色が青くなった。
「まさか?まだ妨害波が……」
「いえ?大丈夫みたいですよ、弾太郎さん」
鷲羽機はすぐに安定を取り戻し、機首をハイエンに向けて戦列に戻っていった。
それを見送った弾太郎はやっと思い出した。
自分が今、黒メイド服などというマニアックな衣服を着用していたことに。
恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
「ど、どうしよう?まさかこんな格好を?よりによって鷲羽さんに?」
「……弾太郎さん、今頃ですか……」
望んでいない女装姿を知り合いに見られてしまう。
それも相手は養成学校時代の同級生。
加えて卒業までずーっと弾太郎をからかい続けたイジワル女子!
次の同窓会でイジられること必至か?
「……弾太郎のヤロー……なんつーカッコしてやがんだよ……」
ボソリと呟く声には大きな驚きと、普段は見せない恥じらいと……喜び?
無意識に鼻のあたりを押さえる。
口を覆うマスクの隙間から赤い液体が……
…………これ、鼻血だ。
「あ、あんなに、ムネ出してさ!パ、パ、パ、パンツまで……誘ってんのか?オレを誘ってんのか?」
この時、弾太郎が黒メイド服だったというところまではお話しした。
だが正確さを期すならば、メイド服は破れて胸からヘソのあたりまで完全露出。
これは必殺のブラバスト・ファイアーを放ったせいである。
加えて吹きつける強烈な向かい風が吹きつける状況。
スカートは絶えずめくれ上がり、『魔性の男の娘ぱんつ』を2秒間隔で御開帳。
もし、この姿を地上波にのせるならば!
雲間からこぼれる陽射しが乳首を微妙な角度で遮り!
逆光がスカートの内側を暗くするだろう!
いや、もっとストレートに無粋な謎アイコンが、表現禁止部分をマスキングする映像手法が行使されるかもしれない!
……あれ?弾太郎は男なんだから、もともと隠す必要ないんだっけ?
「クッ、催してきやがった!今夜は寝れないかもしんねえ……」
おい!相手は男の娘だぞ!お前はヘンタイなのか、鷲羽 翼小隊長殿……
……いや鷲羽さんは女だから、正常……なのか?
『たいちょーぉ?弾太郎ちゃん大丈夫だったー?』
「え、あ……そ、それは」
『彼に何かあったのですか、お姉様?』『弾太郎ちゃん、怪我してるの?』『えーっ、大変じゃん!』
「あ、いや、怪我はない、みたいだ……うん」
『そうですか、よかった』『勝利の女神サマになんかあったら一大事よ』『アタシもハズミちゃん、じゃなくてぇ弾太郎ちゃん見にいく!』
「ダメッ!今は、今は来るなーっ!!」
『えーっ!どーしてぇー?』『ハズミちゃんに何があったの?』『久々にナマ弾太郎ちゃん見たいーッ!』
「い、今は……今は、そこの鳥ヤロウをヤキトリにすんのが先決だろーが!色ボケどもが!さっさと片付けろや!」
鷲羽の物凄い剣幕に押されて渋々、みんな引き下がった。
鷲羽自身も戦列に戻り、レーザー連射で敵の体力を確実に削いでいく。
遠目に見ている弾太郎にも見事な連携だ。
『熱殺蜂球』に包まれたハイエンはますます遠ざかっていく。
その無残な姿を振り返って見ているルパルスの声は、平静を装ってはいるが、つらそうだった。
「弾太郎さん、勝負はつきましたね」
「ああ、そのようだね」
「これで終わり……どうしました?」
「ちょっと待って!変だ、ハイエンさんが羽ばたきを止めたぞ?」
「えっ?」
さっきまで群がる戦闘機を必死に追い払おうとしていたハイエンが、翼の動きを完全に停止していた。
至近距離からレーザーを浴びるのも構わず、両翼をO型に固定して精神集中している。
しかもどういうわけか姿が安物の虫眼鏡でも通してみたように、ぼやけてが歪んで見え始めた。
弾太郎には初めて見る怪獣の技、だが背筋を突き抜ける冷たい恐怖を感じた。
「あれは?」
「まさか?ハイエン、それは有人惑星上では禁じ……」
それがどういう技なのかをルパルスは知っているらしい。
驚きと緊張した声が危険を告げていた。
鷲羽はそれが何なのかは知らなかったが、危険度MAXなことだけは感じ取っていた。
「全機散開!距離を取ってレーザー最大出力!」
ハイエンの周囲に集結していた機体が一斉に散った。
だが、空中ではありえない強烈な『揺れ』が鷲羽たちを襲った!
『な、なんだ!』『じ、地震?』『バカ、ここは空の上よ?』『で、でも乱気流じゃないわよ』
「落ち着け、お前ら!距離をとって反転、レーザー最大出力!」
鷲羽の命令に全機が従う、とはいかなかった。
想定外の強烈な『揺れ』で半数以上がエンジンに重大なダメージを受けていた。
命令通り反転してレーザーを撃てたのは、鷲羽含めて5機だけ!
他は次々と推進力を失って、海上に緊急着水していく。
それでも失速寸前のハイエンを撃ち落とすには十分なはずだった。
だがすべてのレーザーの射線はハイエンの巨体をはずれ、あらぬ方向へ消えていった。
「にゃにぃぃぃッ?!」
『レーザーが外れた?』『照準が狂ったか?』『いや、システムは正常よ!』
よく見るとハイエンの周辺の空間がおかしい。
ハイエン周辺の空間の歪みが先ほどより更に激しくなり、姿が幻のように揺らいでいる。
よく見ると歪みの中心はハイエン自身ではなく、嘴の少し先の何もない空間だ。
丁度、両翼で丸く囲んだ中心あたりになる。
「こりゃあ……空気だ!空気が奴のまわりに集まってきてやがる!」
鷲羽が見抜いた通り、ハイエンに向かって空気が流れ込み以上に気圧が高い空間を形成していた。
空気の密度の違いが光の屈折率を急上昇させ、レーザーが直進できない空気層を作り出しているのだ。
「なら、ミサイルがあらぁ!全弾ぶち込んでやれ!」
『了解!』×4
翼下から分離したミサイルがハイエンを襲った。
だが何故かミサイルの軌道もずれていく。
目標を外れて高密度空気層に突っ込んだミサイルは起爆装置の誤作動を起こした。
次々と爆発してハイエンには一発もとどかない。
「くそぉっ?何がどうなって……うわわわっ?」
ミサイルだけではなかった。
鷲羽の乗る戦闘機もハイエンのいる方向、正確にはその手前の空間へ強い力で引き寄せられている。
しかも引力はますます強くなって、機体の平衡を保つのも難しくなってきている。
『隊長、姿勢を保てません!』『このままじゃ……落ちるよ』『いや、分解しそうです!』『た、タスケテッ!』
「しっかりせんか、お前ら!ここで踏ん張るのがモノホンの防衛警官だろがぁッ!」
『イエッサー!』×4
鷲羽の叱咤激励でなんとか持ちこたえているものの、攻撃はおろか離脱もできない。
影響は離れた位置にいるルパルスにもあらわれていた。
全力で羽ばたいているはずが急速にスピードダウンし始めたのだ。
まるで前に進む力を奪われ、引き戻されているような感じだ。
その背に乗る弾太郎自身も引っ張られてパルスの背中から落ちそうになっている!
体のあちこちを見えない巨大な手に掴まれて、無理矢理引き戻されようとされている。
「ルパルス君、これは、このパワーは何なんだ?」
「……ハイエン、そこまでやる気か……」
「ルパルス君?」
「あ、はい!」
「あいつは、ハイエンさんは何をやろうとしてるんだ?」
「あれは、グラ……」
ガクン!
空が猛烈に揺れた!
子供とはいえ旅客機なみの大きさのルパルスを揺さぶる強烈な地震が空中で起きていた。
突風というより空気そのものが強固な壁となってぶち当たってきた、そんな感じだ。
ハッとしてハイエンの方を見た。
ハイエンの姿は丸く歪み、まるで丸い金魚鉢の中の金魚を見ているようだ。
弾太郎が叫んだ。
「なんだぁ、あれは!?」
ルパルスが叫んだ。
「グラビトン攻撃だ!弾太郎さん、伏せて!」
歪んだ空気の大きな球体が、ハイエンから分離した。
それは周囲の空気を巻き込んで、更に大きくなりながら迫ってきた。
強烈な力でルパルスの体が空気の球体に引き寄せられていく。
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重力子攻撃とは?
大型旅客機をも凌ぐ巨大な怪獣が翼を広げて空を飛ぶ。
その生息範囲は空に留まらず惑星から惑星、恒星から恒星へと広がっている。
しかし疑問に思われる方もいらっしゃるのではないだろうか?
そう、こんな疑問だ。
『大気圏内ならともかく、真空の宇宙空間を翼で飛べるはずがない』
しかし、その正論を覆す生物が現実には多数存在している。
そのひとつが『星の渡り鳥』スターバード種の怪鳥たちだ。
スターバードの祖先は地球でいう鳥類から進化した。
過酷な生存競争の中で生きる場所を、他の鳥たちが到達できない超高空に求め、ついには大気圏を突破する強者もあらわれた。
しかし真空に近い成層圏では、空気を叩いて揚力を得る翼は役に立たない。
だが、その小鳥たちの一羽が今まで誰も持たなかった能力を獲得していた。
自分の周りの空間に小さな重力源を創り出し、それに引かれる形で移動する能力。
わずかながら重力を御する能力でたった数分間とはいえ、宇宙を飛ぶ新たな翼を得たのだ。
そして代を重ねること数万年。
飛行能力とともに知性を発達させて、恒星系内すべての惑星を制した初期のスターバードたちは更なる遠方に嘴を向けた。
煌めく星々の彼方へ、だが……光年級の距離の前に、生きてたどり着けた者は一羽もいなかった。
それも、ある若鳥が超精度の重力制御に成功することで一変した。
数億分の一秒の間だけ極小のブラックホールを維持し、高速回転させることで空間の穴を創り出す。
そうして作った『穴』を通り抜けることで、ついに星へと届く翼を手に入れた!
そしてスターバードは銀河全域に生息地を広げていった。
しかし、重力制御の力は無限の可能性を開く翼と同時に、一方では恐るべき破壊の力をもたらした。
―鈴民明書房刊『宇宙怪獣大図鑑 大怪鳥編』より―
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「重力子……攻撃だって?」
その攻撃に弾太郎は聞き覚えがあった。
スターバードたちが恒星間飛行に使う極小ブラックホール。
通常は数億分の一秒しかもたない超重力を、数十Gという低出力?な高重力にする代わり持続時間を3秒間程度に伸ばす。
この高重力場を敵に向かって撃ち出すと、弾道上だけでなく周囲の質量を持つ物体全てを引き寄せ、巻き込みながら目標に迫る。
この時、至近距離を通過しただけでも、体を引き裂かれて空中分解。
命中すれば爆発し砕けるではなく、内側に向かって『爆縮』される。
50G以上の重力が内側から作用し、機械なら金属球に、生物ならば生きたまま肉団子にされて一巻の終わりだ。
最も恐るべきことは、この攻撃は『防ぐ』方法がないという点だ。
装甲を固めようが強力なバリアを張ろうが、実体なき重力場を遮ることはできない。
重力場から離れる以外に助かる方法がないが、50Gを超える高重力を振り切るのは不可能に近い。
欠点は持続時間が短いくらいしかない。
「ぐぐ……クハッ!」
「ル、ルパ、ルス、くっ……ん」
後ろから歪んだ空気の巨大な塊が迫ってくる。
必至に羽ばたくルパルスだが、ジリジリと見えない重力場に引き寄せられている。
翼から何十本もの羽が引き抜かれ、重力場の中に聞きこまれていく。
重力場の中心に捕らえられた羽が小さな球体状に圧縮されて、潰されていくのが見えた。
更に遥か下方の海面も異常が生じていた。
海面が富士山のような逆すり鉢型に、何十メートルも上盛り上がっていた。
海水の頂きでは激しい波しぶきが海には戻らず、そのまま空へと舞い上がる、いや落下していくのだ。
天地が逆転する異常事態がすぐそこまで迫ってくる。
ルパルスは焦った。
(追いつかれたらお終いだ!)
(重力場が消えるまで、何とか持ちこたえるんだ!)
(あと、ほんの少し!)
だが歪んだ空気塊、重力場は確実に背後に迫ってきていた。
まだ未成熟なルパルスには高重力を振り切るだけのパワーがなかった。
歪んだ空気の層がついにルパルスの尾羽に触れた!
(だ、ダメか?)
「頑張れ、ルパルス!」
弾太郎の叫びが振動となってルパルスの全身に響いた。
瞬間、出し尽くしたと思っていた死力が、一瞬だけ甦った。
引き込まれるだけと思われた状況で、最後の羽ばたきがルパルスの体を引き留めた。
同時に重力場が消滅、圧縮された空気が元の体積に戻る勢いでルパルスは一気に前に押し出された。
「やった!助かりましたよ、弾太郎さ……」
「まだだ!追いつかれた!!」
触覚羽にしがみついてる弾太郎の言葉に、反射的に後ろを振り向いたルパルスはギョッとし、そしてゾッとした。
接触寸前の距離に鬼気迫るハイエンの顔が迫っていたのだ。
飛ぶのがやっとのボロボロの翼で、追いつけないはずのハイエンが追いついてきているのだ。
「な、なんで?どうやって?僕に追いついたんだ?」
「落ち着け、近づけても攻撃はもうできない!」
動転するルパルスを背中の弾太郎が叱咤する。
どうしてこうなったのかを弾太郎は見ていた。
重力子攻撃を放った後、ハイエンは何をどうやって追いついてきたのか。
解答は『何もしなかった』だった。
「奴は自分で創った重力に自分を引っ張らせたんだ。あの重力子攻撃はこっちを撃ち落とすためじゃない、距離を詰めるために使ったんだ!」
ハイエンは重力子攻撃を放った後、羽ばたきをやめて自分の創り出した重力に身を任せることで、前へ進む、というより前へ『落下』して距離を詰めた。
そして重力場が消失する寸前に、一度だけ羽ばたいて重力場の前へ出た。
そのまま重力場消失で膨張した空気に乗ってルパルスの頭上へ、そして背後まで迫ったのだ。
しかし、こんな乱暴な方法で追いついたせいで、傷つき消耗したハイエンの体は更にダメージを深めていた。
もう体当たり程度の単純攻撃さえできないほどに。
(殿下、よくぞここまで成長なさいました)
(このような状況でなければ、どれほど嬉しかったことか!)
(どうぞ愚かな老鳥をお恨みください)
(地獄へは、この老いぼれがお供いたします)
(そして、共に地獄へ連れて行くぞ!カイトゥスよ)
あちこちから血を噴き出す両翼を固定し、再び重力子を創り出す。
心臓に付随する重力子発生器官が、限界を超えた負担に悲鳴を上げている。
発生した重力子を翼の末端まで送り出す血管が、あちこちで破裂している。
共鳴作用で重力子を増幅させる翼の骨格が、軋んで砕けていくのがわかる。
朦朧とする意識の中でハイエンに残ったのは……
手塩に掛けて育てた主人を裏切る悲しみと、若き日の仇敵への殺意だけだった。




