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森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
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一日目・食料を採集しよう④

 「やるべきことはわかりました。ところで、期限はあるんですか?」

 期限内に目標を達成できなければクビ、なんてことになったら今度こそ路頭に迷ってしまう。確か契約書には解雇に関する事項はなかったはずだが、だからこそ一方的に解雇して日本に送り返されることもあるかもしれない。

 「いや、特に期間などは定めてはいない。だが、できるだけ早期にこの状況を改善してもらいたい。なにしろ繁茂している理由も、これだけ弱々しい植物が枯れない理由も不明なんだ。ある日突然死滅してもおかしくない。とはいえ、これまでの進行具合を考えれば数年は大丈夫だと思うがな」

 「そうですか。森が枯れちゃう前になんとかしないといけませんね」

 となると、数年は大丈夫なのか。いや、待て。問題解決をしてしまったら用済みになるのか?履歴書に空白期間ができて、住む家もない状態で日本に帰ったらそれこそ生活できないんじゃないか?・・・そうだ、つる草の駆除に時間をかければいいのか。森全体の駆除を計画的にやれば減らしながらも完了させないこともおそらく可能だろう。

 そんなちょっとずるいことを考えながら、一つ気になったことがあったのでリリティアさんに尋ねた。

 「そういえば一度日本に帰ることはできませんか?荷物を取りに行きたいんですが」

 何か役に立つ物があれば持ってきたい。服もアイリアさんが持ってきてくれたものだけでは足りないだろう。特に防寒具を用意できないと、日本並みの寒さになるという冬はきびしいだろう。

 それに、押し入れにしまった秘蔵コレクションもほしいしな。2年前に紙媒体のものはほとんどを捨ててしまったが、それでも捨てきれずに残った逸品たちだ。

 「悪いがそれはできない。世界間で人間を転送をするのは結構大変でな、それほど気軽にはできないんだ。しばらく帰るのは我慢してくれ」

 つまり、状況が許せば日本に戻ることも可能というわけか。

 服装の問題は解決できなかったようだ。なにより、夜のお楽しみを回収できないのは惜しい。

 「俺が住んでいた部屋は賃貸なんですが、退去の手続きも引っ越しもせずに来てしまいました。大家さんに迷惑をかけることになりそうですが、それでも無理ですか?」

 ダメ元で粘ってみる。長年住んでいただけに、きちんとした形で退去したいという気持ちもある。

 「気持ちはわかるが理解してくれ。別世界の者を守護者に任命したこと自体が珍しいケースなんだ。しばらくはおとなしくしておかないと、上から何かと干渉されかねん」

 そんな理由かよ。転送するには条件があるとか、魔法的な力が必要とかじゃないんだ。割と生々しい組織的な都合だった。

 上ということは、アイリアさんより上位の神がいるのか。アイリアさんやリリティアさんたちのこと、あまりわかってないんだよな。そういえばアイリアさんは、自分のことを俺の直属の上司と言っていた。ということは、もっと上位の役職者がいるとしてもおかしくはない。

 「まあ元の世界のことは気にするな。あちらの神には守護者としてこちらに呼び寄せることになった時点で協力をしてもらっている。私にはお前の世界のことはわからないが、あの方なら不都合がないように取り計らってくれるだろう」

 不安ではあったが、どうしようもないので気にしないことにしよう。

 「長期目標と現状については理解してもらったと思うが、問題は実際にどうするかだ。つる草は森全体に広がっていて、異常生育のほうはまったく手がかりすらないんだ」

 「うーん、つる草は地道に駆除するとして、原因究明の方は・・・駆除しながら虱潰しに探すしかないでしょうね」

 「そうだろうな。地道に頑張ってもらうしかないだろう」

 気の遠くなる作業ではあるが、つる草と密集する植物を間引いていけば森全体が枯れ果てることはないだろう。植物が弱った原因は日光不足が原因の可能性が高そうだ。だから、日が差し込むようにすれば元気を取り戻すはずだ。

 そうなれば後は植物が異常に増えたことの原因と、枯れそうなほど弱った植物がなぜ枯れないのかを突き止めればいい。

 今後の方針が決まったことだし、赤い果実、ホージュの実を収穫しよう。

 「持っていけるだけ収穫して構わない。元々多くの実をつける種類の上、見ての通りの密植状態だからな」

 リリティアさんの言う通り、ホージュと呼ばれている木がびっしりと生えている。枝がぶつかり絡まり合っているところさえあった。

 この木は幹や枝が曲がっている分、足をかけて登ることが比較的容易だ。木登りは小学生以来だからなんだか懐かしさを覚えた。上の方まで登ることができそうだったが、あまり高いところまで登るのは危ないのでよそう。それでも十分な量を収穫することができそうだ。

19.4.29 脱字修正

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