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森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
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四日目・町へ向かおう④

 その後、タルを持って泉に行き、水を汲んで家に戻った。水の煮沸消毒をしようとしたが、昼食時にするべきだとリリティアさんに言われて中止した。転移装置を使えば、昼食は家に戻って食べることができる。時間のかかる煮沸消毒は、昼食時にしたほうが時間を無駄にしないのだ。弁当を作る必要がないと言われていたことを思い出した。

 この転移装置だが、表面に触れても何の感触もない。裏面と外枠には普通に触ることができるが、表面から触れると、触れた部分のみ反対側へ転移される。ワープした時の感覚とか、そういったものは何も感じない。頭だけ出してみたり、体半分だけ入ってみたり、色々試してみた。転移する境界線は薄い膜のようなもののようだ。左目だけ泉側、右目だけ家側にして見るとどちら側も見ることができて面白い。もっともどちらも同じ森の中なので、似たような景色なのだが。

 「やっぱりお前もそれをやるか」

 「いやぁ、やっぱりやってみたくなりますね」

 「初めて転移装置を見たものは、だいたいそれをやるな。まあ私もそうだったんだが」

 リリティアさんもやったとなると、これは転移装置あるあるとでも言えるのかもしれない。

 「それにしても面白いですね、これ。何の感触もない薄い膜の向こう側が違う場所だなんて」

 「表面部分同士が空間を捻じ曲げてつながっているんだ。技術的には昔からあったものだが、小型化して量産販売されたこの製品は、販売当時は画期的だったと聞いている」

 「販売当時、ですか?」

 「ああ、これは創エネグループの転移装置部門が開発したものだ。生産終了した製品だから、神の門で作ることはできないがな。発売したのは私がまだ幼い頃だったから、当時の話は後から聞いた話だ」

 最新型が神の門で製作できるんだから、旧型であるこの転移装置も同じところが作っていて当然だ。言われて気付いたけれど。

 「俺がこの森に来た時も転移でしたね。いや・・・それ以前に、気付いたらアイリアさんの所にいたあの時、すでに転移させられていたのか・・・」

 「あれらは少し違うものではあるがな。うちの開発部が作ったもので、世界間転送を可能にしている。基礎的な技術は同じものらしいが、仕組み自体はほぼ別物だ」

 リリティアさんはあれら、と言った。つまり、住んでいた部屋から接見の場だったかに転移した時と、この森に転移した時とは別の装置だということだろうか。そもそも、部屋で酒を飲んで寝ていたはずの俺をどうやって転移させたのか、不思議ではあるのだが。それともう一つ気になったので聞いてみる。

 「これは世界間転送はできない、ということですか?・・・ん?転送?」

 転移と転送、二つの言葉をリリティアさんは使い分けている。

 「転移と転送の違いはそれほど気にしなくていい。一応説明すると、転移境界が立体のものが転送装置、平面のものが転移装置だ。転送装置の場合は転移するものが動く必要がない」

 さすがに、酔って寝ていても動かされれば目を覚ましたはずだ・・・たぶん。接見の場への移動は、転送装置を使ったということだろう。

 「それとこの転移装置には、世界間を転移する能力はない。そもそも短距離の空間転移にしか対応していない製品だからな。まあ世界間転移は距離の問題ではないのだが」

 「へえ、そうなんですか?」

 よくわからない話になってきたので、適当に相槌を打つ。

 「理論的な話は難解で私にもきちんと理解できないが、少々異なるものらしい。技術的には空間転移の応用で可能らしいがな。だがそれ以前に、世界間転移は法的な規制がある。許可なく世界間転移をすることは違法行為だ」

 「技術的には距離の問題は解決できるけれど、法的に規制されている。そのため、世界間転移ができるものが作られていないということですか?」

 「世界間転移ができる製品が法的に規制されている、という点はお前の言うとおりだ。だが、世界間転移に関しては違う。そもそも世界同士、例えばお前のいた世界とこの森は同じ空間には存在しない。このあたりを人間に説明するのは難しいな」

 難しいことは詳しく話してもらわなくてもいいんだけどな・・・よくわからないけどそういうもの、で別に問題はない。テレビやスマホなどの身近な製品だって、仕組みなんてわからないけど使っているわけだし。

 「世界はそれぞれ並行して存在し、本来交わることはない。それを可能にするのが、異世界転移・異世界転送の技術だ。並行する世界に一時的な道をつないで三次元的なつながりを作る。そうすれば後は空間転移の技術で転移が可能、というわけだ」

 さて、そろそろ全くわからない話になってきたぞ。

 「なるほど。話は変わりますが、神様の世界にも法律があるんですね」

 理解できない話は、スルーして話題を変えるに限る。そのためにはもっと簡単な話というか、くだらない話にするべきだっただろうか。

 「む?それはそうだろう。ルールを定めてそれを破った際の罰則を設け、ルール違反を取り締まる実力組織がなければ社会は成り立たない」

 神様の世界にも法律や警察が存在するということか。

 神様たちは法に縛られることなく秩序を保っている、そんなイメージだった。しかし、神様や精霊も案外、人間と同じようなものなのかもしれない。

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