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森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
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女神アイリアのティータイム

 この時を待ちわびていました。20日間という長い、とても長い時間を耐えてきました。早く食べたくて、もう皿やフォークを用意するのもじれったいくらいです。

 仕事を抜け出して行列に並んでいた時は、売り切れないかと不安でいっぱいでした。無事に購入することができた時は安堵感で胸がいっぱいになりました。何しろこれを逃すと、この「雪うさぎ」を次に買えるのは10日後です。それまで食べられないとなったら、仕事に手がつかなくなるところでした。ある程度自由に仕事を抜け出せることが、この仕事の大きなメリットの一つですしね。そのメリットが活かせない状況が続けば、正直な話モチベーションに関わります。

 早速食べたいところですが、ケーキには飲み物が欠かせません。先輩からいただいたインスタントコーヒーを淹れましょう。

 インスタントコーヒーは残りがもう半分になってしまいました。これは困りました。あちらは担当する世界ではないので、買いに行くのは大変なんですよね。先輩、またくれませんかね。今度はもっと大きなやつを・・・。

 さて、準備ができたので、ティータイムといきましょう。こうやって並べてみると、雪うさぎとインスタントコーヒーのコンストラストが見事です。

 さて、早速一口いただきましょう。・・・やっぱり美味しいですね。丸いスポンジに生クリームをかけて、飴細工でうさぎの模様を描く。たったそれだけでこんなにも美味しいのは、スポンジと生クリームの両方が別格のものであるからでしょうね。スポンジはしっとりとしていて、かつ卵の濃厚な風味があります。生クリームは甘すぎず、ミルクのコクを強く感じさせます。雪うさぎは、その2つのハーモニーが絶妙なのです。10日ごとに毎回並んで購入してしまうほど、そのハーモニーが素晴らしい。

 前回は森の守護者を選定するために、先輩に呼び出されていて買えませんでした。私の都合で先輩に手伝ってもらった手前、文句は言えませんでしたが、正直に言うと時間をずらして欲しかったなぁ。まあ先輩も忙しいので仕方ありませんが。

 雪うさぎを食べながら、時折インスタントコーヒーをすする。見た目のコントラストもよかったですが、味の対比も素晴らしいですね。甘い雪うさぎに、苦いインスタントコーヒーが合います。とても別世界の物とは思えないほどのベストマッチです。

 雪うさぎのように苦いインスタントコーヒーに合う、甘い物って最近少ないんですよね。健康志向の高まりによって、甘いものがあまり流行らなくなってしまいました。生クリームをこれほど使っているものは、本当に少ないです。美味しいものを食べずに5000年生きて、果たしてそれがいい生涯だったと言えるのでしょうかね。好きなものを好きなだけ食べる、それも一つの選択肢だと思うのですが。

 ・・・とはいえ、最近お腹周りが少し気になってきました。デスクワーク中心のこの仕事は、どうしても太りやすくなってしまいます。それでも、美しき女神として仕事をしている以上、見た目にも気を配るべきでしょうね。神々しい美しさで人間を魅了するのも、女神の役割というものです。そのためには、このつまめてしまうものは不要ですね。

 やはり痩せるには運動でしょう。全身運動をしてエネルギーを消費するとしましょう。それには何か手頃な方法はないでしょうか。うーん・・・

 そういえばシーヴェスト南方に住むバルク族に、祭でダンスをする伝統がありましたね。確か、資料映像がデータの中に・・・あった、これですね。結構激しいダンスなので、脂肪燃焼にはもってこいでしょう。さて、雪うさぎも食べ終わったことですし、これをやってみましょう。担当区域の文化を理解することにもつながり、一石二鳥です。

 えっと、まず足を肩幅に開いて立って、両手を下から上にすくい上げるように・・・これを3回繰り返して・・・次はジャンプをして・・・むむむ、結構複雑で振り付けを覚えるのは難しそうですね。映像を見ながらやってみましょう。

 いーちにーさーん、たんたんたん腕を振ってしゃがんで回転してジャンプ。

 足踏み足踏み腕を交差して開いてジャンプ。

 それにしても・・・これは結構きついですね・・・上半身を左右に振ってジャンプ。

 屈んで・・・はぁはぁ・・・両手を回して膝をつく。

 ぴょんぴょんぴょん、足を上げて・・・もう無理です上がりません。

 ギブアップです。この人たちはすごいですね。笑顔で踊り続けてます。時間を見るとまだ半分くらいですか・・・踊り子たちの体力はすごい。それがわかっただけでも十分かもしれませんね。

 しかし、少し考えてみると、執務室で孤独にダンスを踊る神。これはちょっとシュールに過ぎますね。まあ誰も見ていないで問題ないですが。

 さて、執務に戻る前に少し休みましょうか。仕事は息を整えてからでいいでしょう。

 そう思ったのですが、一つ電信が入ってますね。リリからのようです。リリと言えば、まだドリアードに関する資料は捜索していませんね。それに関することでしょうか。

 ・・・・・・ふむふむ、なるほど。ドリアードの件ではありませんでしたね。もっとも、昨日の今日ですから、もう催促が来るとは思っていませんでしたが。

 それにしても、リリがこんなことを聞いてくるとは思いませんでしたね。他者への関心はあまりないほうでしたけれど、彼女も少しずつ変わってきているのでしょうか。

 データは資料提出のためにまとめてありますから、それを送るだけ・・・いや、それと私の感想もつけておきましょうか。データよりも、たぶんそういう情報のほうが大事でしょうから。

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