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森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
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一日目・食料を採集しよう①

 パッパラパパパパラパパッパラッパパー。

 ラッパのようなけたたましい音に驚いて飛び起きた。

 「これが・・・起床の音楽なのか。そりゃあこれだけの音量なら目も覚めるけど」

 昨夜の二人だけの歓迎会の時、朝が弱くて目覚ましもなく起きられるかどうか不安で、昼まで寝てしまうかもしれないという話をした。それに対してアイリアさんは、起床の音楽が鳴るように設定してあると言っていた。各部屋に繋がっているスピーカーがあり、それを通して会話もできるらしい。

 ベッドから起き上がる。ふと、ベッドで寝るのは何年ぶりだろうかと考えた。大学進学時からずっと同じワンルームのアパートで一人暮らしをしていたから、実家のベッドで寝ていた時から五年以上になるだろうか。ワンルームではベッドを置くスペースがあるはずもなく、フローリングの床に布団を敷いて寝ていた。

 この部屋は、ベッドに丸いテーブルと二脚の椅子を置いてもまだ余裕がある広さだった。壁も天井も木の板でできていて自然な趣だ。装飾の類はほとんどなく、額縁に飾ってある、金髪の女性に後光がさしている絵が壁にあるだけである。

 寝間着から普段着に着替える。衣服は数着、靴と一緒に転送時にアイリアさんが持ってきてくれていた。細かいところまで気配りがされていて嬉しい。

 「飯にでもするか」

 階段を降りて1階のダイニングキッチンに向かった。昨日アイリアさんが用意してくれた食料が置いてあるのだ。保存の効く固いバケットに干し肉、果物が3日、節約すれば4日は食べられそうなくらいはあった。

 バケットを切り、干し肉細切りにしてコンロで焼いた。フライパンや包丁などの調理器具と食器は一通り揃っている。

 「このコンロ、結局どうやって火が出てるんだろうな」

 一見すると普通の三口コンロだ。ちゃんと魚焼きグリルもついている。だが、ガスが通っているわけではない。家の中を案内された際なぜ火が点くのか聞いたのだが、アイリアさんは企業秘密ですとしか答えてくれなかった。何なのかわからないが、天界の不思議な力で火が点いているのだろう。

 そんなことを考えている間に、肉が焼けたのでバケットに挟んでサンドイッチにした。

 わからないといえばこの干し肉もなんの肉なのだろうか。一切れつまんで食べてみた。

 「結構うまいな、これ」

 弾力があり噛みごたえがある。黒胡椒などのスパイスの香りが鼻に抜けるが、その中に獣臭を感じる強い癖がある。大学の頃に飲み会で食べただけの曖昧な記憶ではあるが、猪肉が一番近いように感じた。

 残りを食べて、食器を洗おうとして気づいた。この家はコンロに火は点くのに、水道は通っていないのだ。不思議な力で水も出るようにしておいてくれるとよかったのに。

 「水がないのは困ったな」

 食器も洗えなければ衣類も洗えないし、汗を流すこともできない。第一人間は水を飲まなければ死んでしまう。兎にも角にも飲料水の確保が最優先だ。近くに川か池のような水場がないか探すとしよう、そう思った時だった。

 ピンポーン。

 スピーカーから音が鳴った。まるでインターホンの音のようだったので、玄関の扉を開けた。

 外を見ると、手のひらサイズの人形のようなものが飛んでいた。頭が体と同じくらいあり、真紅の髪が足先まで伸びている。

 「お前が森野守だな?私はリリティアだ。アイリアから話は聞いていると思うが、これからしばらくお前の面倒をみることになった。よろしくな」

 彼女は短い腕を胸の前で組み、顔の半分を占める大きな目で俺を見下ろしていた。

 こんな小さい体でどうやってこんな大きな声が出るのだろうか、そんなことをふと思った。

19.3.2 リビングダイニング→ダイニングキッチン

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