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森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
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二日目・水の妖精⑫

 「なんだ、まだ仕事をしているのか?」

 3棟ある小屋の1つに木材を運んでいた俺に、リリティアさんがそう声をかけた。

 「あ、リリティアさん、お疲れ様です。そちらはお仕事終わったんですか?」

 「ああ。一人で採集してくれたおかげでな、順調に進んだよ。お前は今までずっと採集していたのか?」

 「はい、昼からはずっと。途中何度か休憩はしましたけどね」

 「そうか、お前は真面目だな。もう夕方だぞ」

 そう言われて、太陽によって赤く染められた西の空を見上げた。思ったよりも時間が経っているようだ。

 昼食後、家から泉の方角に向かって採集を続けた。神の門を使用して商品を作成するついでに、魔法陣内のものを根こそぎ収集する。草花の採集、樹木の伐採と商品の作成を同時に行うこの方法のおかげで、作業効率は大幅にアップした。この結果、1棟の小屋には入りきらないほどの木材を手に入れた。

 「しかし、よくもこれほどの量を1日で集めたな。すごいじゃないか」

 「木も草も生えたまま神の門の魔法陣に巻き込んでしまえばいいんじゃないかと思って、試しにやってみたんですよ。そうしたら木も草も抜かれた状態で返却されたので、かなり楽ができました」

 それを聞いたリリティアさんは少し驚いたようだった。

 「正しい使い方ではないが・・・うまくいっているならそれでいいか。だが、一つだけ気をつけておいてほしい。余分な材料が返却される際、一定量が没収されるようになっている。不要な材料が多ければ多いほど、没収される量は多くなるんだ。今回の樹木や雑草は、元々減らしていかなければならないものだから問題ない。だが今後、量が限られるものを利用する場合もあるだろうから、その点だけは覚えておいてくれ」

 「わかりました・・・ん?」

 余分なものが一定量返却される?なんか悪いことができそうな気がするな。

 「どうかしたのか?」

 思いついたことを、頭の中で整理しながら説明する。

 「ゴミなんかも没収されるんですか?例えば大量に廃棄物があった場合、必要な材料と一緒に出してしまえば多少なりとも削減できるのではないですか?」

 例えば産業廃棄物だ。日本では産業廃棄物の処理には経費がかかる。以前の職場でも業者に頼んで、店舗で出たゴミを廃棄していた。大量のゴミが出れば、そこそこの経費になる。この経費を削減するために、神の門が悪用できるのではないかと思ったのだ。

 「以前にそう考えるやつがいてな、一度問題になったんだ。今は対策されて、そんな真似はできないようになっている」

 「対策ですか」

 俺でもすぐに思いつくようなことだ。むしろ、発売前に対策がされてなかったことのほうがおかしいのかもしれない。

 「ああ。魔法陣に置く置物があっただろう。あれが個人を認識している。悪質な利用者と認められた場合は警告を発し、それでも継続された際は使用が不可能となるんだ。あれを紛失した場合、新品の購入と変わらない金額が必要になる」

 携帯電話でいうところの、SIMカードみたいなものだろうか。あの置物は意外と大事なものだったようだ。間違っても失くさないようにしよう。

 「悪質な利用者と認められる要件は2つ。まず1つが、大型生物を継続して転送させること。危険な猛獣ともなれば一発で警告が出る。危険だからな。2つ目は、先ほど言ったようにゴミを出し続けた場合だ。もっとも、これは滅多には起こらないから安心していい。余程のものでもない限り、再利用ができる仕組みがあるんだ。再利用が不可能なものでも、マナを取り出すことはできる。総エネが利用できるものであれば、警告の対象にはならない。具体的に何が利用できないかと言うと・・・」

 熱のこもった説明を聞きながら、やはり神の門に対してはやたらと饒舌だなと思っていた。とりあえず、今日のような使い方であれば問題ないようだ。後は動物が入ってこないようにさえ気をつけていればいいだろう。

 「・・・これがなぜそうなるのか、技術的にだな・・・」

 説明、まだ終わらないかな。途中から頭に入ってこなかったので、熱心に聞くフリをしていた。これに関しては、前職やバイトの経験から中々のレベルにあると自負している。

 「まあ、ここまで細かい説明はする必要はなかったな。警告が出てからその指示通りにしていれば、使えなくなることはないだろうからな。ところで、やり残したことはまだあるのか?」

 説明が詳細になりすぎたことに気付いたのだろうか。少し早口になっていた。

 「後は木材を少し小屋に運んだら終わりですね」

 「ではそれだけ片付けて終わりにしようか。時間も遅いし、家で休むといい」

 そう言うと、リリティアさんは窓枠に腰を掛けた。

 夕陽が彼女を照らし、真紅の髪が燃えているように見えた。

 髪だけは綺麗だな。愛らしい二頭身の先輩を見ながら、そんな失礼なことを考えていた。

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