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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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二十六日目・猫目石③

 女神の家へと戻った俺は、小休止をした後ホージュの実を収穫した。この前結構な量を収穫したが、まだまだ沢山の実が生っている。以前よりもかなり増えているように感じるので、まだまだ実をつけているのだろう。これなら、当分の間収穫ができそうだ。異常繁茂の影響なのだろうけれど、今の俺には安定収入につながるのでありがたい。

 家に戻り、ジャムとコンポートを作る。今は現金収入が必要なため、多めに作る。手持ちの通貨は、すぐに生活資金が足りなくなるほどではないけれど、これからこの森で暮らしていくのに安心できるような金額ではない。リベルさんの件のように、町へ行けない状況も考えられる。貯蓄の額は十分な余裕が必要だ。だから、今は本来大金を使うべき時ではない。

 ところで、リリティアさんはリベルさんと、ちゃんと仲直りできているだろうか。あのまま気まずい雰囲気を続けるのは、リリティアさんだって嫌だろう。俺だって嫌だし、関係が修復できていたら嬉しい。

 二人の様子を見る限りでは、決して関係修復をお互いに望んでいないようには思えない。リリティアさんは明らかに避けながらも、しっかりリベルさんのことを気にしていた。リベルさんも何度か、話しかけようとしてやめるということをしていた。お互いに言いたいことや思うところを言って、スッキリと元の関係に戻ってほしい。そのために押し付けてきた猫目石が、役に立ってくれるといいけど。

 そんなことを考えていると、リリティアさんが帰ってきた。

 「お帰りなさい」

 「ただいま。・・・まさか2日連続で抜け出すとは思わなかった。するなと、言ったはずだがな」

 「ははは。しないとは言ってませんから」

 「ふ、言ってくれるな」

 少し自分の部屋にいると言って、リリティアさんは上がっていった。その時のリリティアさんの顔は、心なしかスッキリとしたように見えた。

 ジャムとコンポートをある程度の量作ったところで、キッチンを片付ける。昼食の準備をする前に、明日売りに出すには十分な量ができた。さて、昼食は何を作ろうか。

 昼食の献立を考えていると、リリティアさんが降りてきた。

 「今日は私が作ろう」

 そう言ってキッチンに立ったリリティアさんは、いつもどおり料理を始めた。俺も手伝おうとしたが、休んでていいと言われた。お言葉に甘えて、ソファで休憩させてもらう。

 しばらく待っていると、リリティアさんに呼ばれた。ダイニングテーブルには、既に昼食が並んでいた。干し肉を使った主菜にスープ、その他副菜が2つある。一汁三菜の、いつも以上に豪華な昼食だ。そして、どれもとても美味しかった。

 食事が済むと、リリティアさんは再び2階へと上がっていってしまった。リベルさん父娘の件に関して、アイリアさんへ報告書を提出する必要があるのだそうだ。アイリアさんはそれをそのまま上司に提出するらしく、あいつの分までやらなきゃならんと言っていた。それ以外にも父娘の様子について、協力してくれた部署へ経過を報告するそうだ。

 一人になった俺は、山菜採りにでも行くことにした。散策も兼ねて、家の周りを探す。途中、狼たちが遊んでいるのを見つけて、一緒に遊んだ。ただ追いかけっこをしてるだけだが、これが結構面白い。兄妹子鹿もそうだが、動物たちと遊ぶのはやはり楽しい。それに、マナの使い方と立ち回り方次第で、狼たちの動きについていけることもわかった。

 家に帰ると、リリティアさんはキッチンに立っていた。日没はまだ先で、夕食の準備には早すぎる時間だ。

 「何作ってるんですか?」

 「ああ、夕食の仕込みだ。少々凝ったものを作ろうと思ってな。下準備に時間がかかるので、早めにやっているんだ」

 「手伝いますよ」

 「いや、いい。今日は私にやらせてくれ」

 夕食の手伝いも断られてしまったので、掃除を始める。やることがない時の時間つぶしに掃除をするのは、ラーメン屋のバイトの時から変わらないな。

 とはいえ、それほど掃除が必要な場所もなかった。普段からきれいに使っているのもあるだろうけれど、そもそも住み始めて一ヶ月も経っていないからだ。加えて物が少ないこともあり、大して汚れていなかった。

 手持ち無沙汰になった俺は、お風呂を沸かすことにした。ユナさんが泉にいたので、ここ数日起こったことを話した。その際、猿に襲われたことを心配され、新しく癒やしの水をくれた。

 お風呂の準備が済んだのでリリティアさんにそう告げると、先に入ってくれと言われた。夕食の準備をしておくので、その間に入ってて欲しいとのことだ。俺も先に入って欲しいと思っていたのだが、仕方ないのでお風呂に向かう。扉をそっと開けて、中を覗き込む。

 ユナさんはいないようだ。半ばガッカリしながら、もう半分は安堵しながら中に入る。先程会った時に、寝るまでの時間は入れるようにしておくので、好きな時に使ってくださいと言っておいたのだ。その時意図してはいなかったのだが、後から幸運なハプニングが起こり得ることに気づいた。あくまで善意で申し出たものだ。その結果起こってしまった事故ならば、仕方ないだろう。そう思ったのだが、そんなことは起こらなかった。

 4日ぶりのお風呂なので、しっかりと洗ってから湯船に浸かる。ムクコマを手に入れた日から、今までお風呂に入れなかったのだ。一番星が出始めたばかりの空を見上げながら、久しぶりのお風呂を堪能した。

 サッパリした気持ちよさを感じながらお風呂を出ると、玄関にリリティアさんが座っていた。

 「あれ?どうしました?リリティアさんもお風呂入りますか?」

 「いや、そういうわけではないが・・・少しいいか?」

この度、第十回ネット小説大賞に応募することにしました。読んでくださってる方々には、心の中だけでいいので応援していただけると嬉しいです。

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