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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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二十一日目・山登り開始②

 転移装置を使い、昨日たどり着いた山の麓へと転移する。準備を整え、いよいよ山登りの開始だ。

 「随分と色々な物を持ってきたな・・・昨日マナポイントを使って交換していたようだが、それだったのか」

 「はい。山登り、それも山頂アタックですから。十分に装備を調える必要があります」

 「確かに、備えないよりはいいかもしれないが」

 山登りということで、記憶にある限りの登山グッズを適当に交換した。それと、元々家にあったり交換済みのものなどを、登山用ザックに入れてきた。ストックに十徳ナイフ、水筒やアイリアさんがくれたお菓子、そして傷薬とタオルなどの衛生用品だ。頭にはヘッドランプを着けてある。

 土からマナを吸収する方法に気づいてから、多少のマナポイントは気兼ねなく使えるようになった。それもあって、色々と手当たり次第に交換してしまった。その結果、見た目はかなり登山家に近づいたように思う。その横でリリティアさんは、いつも通りのTシャツにホットパンツだ。

 「リリティアさんはそんな軽装で大丈夫ですか?足や腕も露出してますけど」

 隠されてしまうと、絶対領域が見れなくなるのは残念だけど。

 「動きやすい服装が、これしかないんでな。それに、精霊には虫が寄ってこないんだ。ヒルやムカデなどはいても、私には寄ってこない。何故かはわからないがな。反対に、アイリアはよく虫に刺されたりしているな。もっとも、刺されたところで、すぐに治ってしまうが」

 「まあ神様ですからね。アイリアさんの加護のおかげで、俺も虫除けなしで森の中を生活できてるわけですし」

 加護の効果の一つに、有毒物質への耐性と回復の速さがある。これのおかげで、虫に刺されても痒みすらなくて済んでいる。さすがに、刺された物理的な痛み自体はあるけれど。加護を与えているアイリアさん自身にも、同じ力があって当然だろう。

 「でも、何もしなくても虫が寄ってこないのはいいなぁ。元いた世界でも、夏は特に虫が鬱陶しくて。蚊が一匹飛んでるだけで、眠れなくなっちゃうので」

 「あまり気になるようなら、虫よけを交換しておくといい。ハチやムカデも逃げるような、強力なやつも交換できたはずだ」

 それはすごいな。日本ではスズメバチはかなりの脅威だからなぁ。近寄ってこなくなるのであれば、かなり安全になる。この森に日本のスズメバチくらい危険なハチが存在するのか、それはわからないけれど。

 午前中は、順調に山を登っていくことができた。しかし、さすがに平坦な道を走るのとは違うのか、いつもよりも疲れている。昼休憩の時間になったので、転移装置を設置して女神の家に戻った。

 リリティアさんが昼食の準備をしている間に、装備を考える。気合を入れて色々準備をしてきたけれど、よくよく考えればそれほど要らなかった。何しろ、転移装置で戻ればいいからだ。必要なものがあれば、その時に家まで戻ってくればいい。登山だからと色々と準備をしてきたけれど、転移装置があるから持っていくのは最低限でいい。うっかり、それを忘れていた。

 ストックだけを持って、ザックと中のものは全て女神の家に置いていくことにした。だが、家に置いておけば、必要な時にすぐに使えるだろう。前もって交換しておいたことは、きっと無駄ではないはずだ。ヘッドランプは邪魔にならないので、昼からも着けておこう。

 リリティアさんから昼食を受け取り、リベルさんたちのいる入院小屋へ行く。椅子に座れるくらいには元気そうだから、テーブルで食べてもらうことにした。薬を飲むために、癒やしの水をコップに注いでおいた。わざわざ水筒を持ってきて、水を注いでいるのは二人にとっては不思議だろう。飲用水は生活用水とは別に、タルに用意してある。そこから汲めばいいと思われていそうだ。だが、癒やしの水だと教えるわけにもいかないので、不思議に思ってもらうしかない。

 女神の家に戻って、リリティアさんと一緒に昼食を摂る。

 「二人とも、体調は問題なさそうでしたね。癒やしの水もそろそろ効いてくるでしょうし、危険な状況ではなさそうですね。ただ、リベルさんは少し辛そうにはしていました」

 「そうか。問題ないとは思うが、念の為注意しておいた方がいいかもしれないな」

 「リベルさんは一昨日の夜以外は、薬を飲んでたんですよね?まる一日飲んでいなかったお父さんよりも調子が悪そうだというのが、少し気になります」

 「おそらく、過労もあるのだろう。薬を飲んでいたからだろうが、咳や発熱自体はそれほど酷くはなかったからな。それでも体調が優れないのならば、病気以外の理由である可能性が高い」

 猫目石を経営しながら、お父さんの看護をするのは大変だったはずだ。それに、治らないことへの不安やお金の問題などで心労もあっただろう。その上で、感染症を発症したということだろう。

 「過労が原因なら、とにかく休んでもらうしかないですね。俺たちにできることは、早く特効薬を作ることくらいですし」

 「早く作るのに越したことはないだろうな。症状を抑えられている間は問題ないが、薬で抑えきれなくなる可能性はある。それまでに特効薬を完成させる必要はある」

 いつまで経っても治らないのでは、リベルさんの不安が解消されることはないだろう。それに、猫目石を閉め続けていることもだ。休業明けにお客さんが戻ってきてくれるのか、経営が成り立つのか、そういった不安もある。

 リベルさんのためにも、頑張って早くムクコマを見つけよう。その思いで、昼食後も山登りを続けた。

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