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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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二十日目・異変①

 今日はリベルさんの家に行って、薬を渡す日だ。きちんと毎回分飲んでいれば、昨日の夕食後で飲みきっているはずだからだ。だが、1つ問題があった。

 薬を交換するマナポイントが足りないのだ。昨日靴を交換した時に既に不足していて、ナッツのマナをポイントにして急場を凌いだ。当然、薬を交換するマナポイントなんて残っているはずがない。さて、足りないマナポイントをどうしようか。

 「リベルさんのところへ薬を届けたいんですが、マナポイントが足りませんね。どうしましょうか」

 「急いでマナを集めて、薬を交換して届けるしかないだろうな。一日分だけ取り急ぎ交換してもいい」

 「できれば一日分だけというのは避けたいですね。非効率ですから」

 必ず3日分ずつ渡さなければならない、というわけではない。一日分だけというのも、確かにありだとは思う。しかし、翌日までにまたマナポイントを貯めて、明日も渡しに行くというのは非効率だ。できれば今日中に3日分かそれ以上の薬を渡しておきたい。

 「間伐作業を進めて必要なポイントを用意する。これは時間がかかり過ぎてダメですね」

 「ダメというわけではないが、確かに時間がかかってしまうな」

 南の山へ向かう時間が短くなるのは避けたいし、何より朝食の時間に間に合わなければ意味がない。最終手段としてはやらざるを得ないかもしれないが、他のもっと短時間でマナを集められる方法がないだろうか。

 「他の手段というと・・・昨日のように食材からマナを回収するくらいですかね」

 ナッツはもう使ってしまったけれど、野菜や山菜ならばまだ残っている。果樹林まで、ホージュの実を今から採りに行ってもいい。

 「それはダメだな。我々が補給するべきマナをマナポイントに使ってしまうことになる。それでは本末転倒だ」

 「それもそうですね。薬はあくまで、特効薬が完成するまでの対症療法に過ぎませんから」

 体内のマナが枯渇すれば、南の山への移動は困難になる。マナの力なしで歩き続けることは困難だからだ。ムクコマの発見が遅れれば、それだけ特効薬の完成が遅れてしまう。それでは逆効果だ。

 「そうなると、他の案を考えるしかありませんね。食べ物ではなく沢山のマナが生み出せそうなもの・・・あ、神の門に使う白い粉はどうですか?あれなら沢山のマナが取れそうですし、ある程度余裕を持って作ってありますから」

 魔法の粉とか言ったっけ。ホージュの実を与えて増やしているわけだから、マナも豊富に含んでいるに違いない。

 「ああ、あれはダメだ。あれが持っているのはマナによく似た、しかし異なるエネルギーであるらしい。だから、魔法の粉からマナを取り出すことはできないんだ」

 「そうなんですね。マナ以外にもマナに似たようなものが存在するんですね」

 この話は一度聞いたかも知れないが、正直よく覚えていない。神の門についての説明は、こちらに来てすぐのことだったから、細部まではさすがに覚えていられない。

 「マナに関する研究はまだ発展段階だからな。未解明の部分も多い。似たようなものだがマナと同じように利用することはできない、ということがわかっているくらいらしい。それと、魔法の粉は生きている微生物だからな。生物を主な素材として使用することは禁止という、神の門の規約に違反する恐れがある」

 動物が送られてきて神の門の工場内で暴れないように、生物の使用に関してはルールが厳しいんだっけ。

 「うーん、色々考えても、これという解決策が思いつきませんね」

 「簡単に採取できるか、あるいは今この家にある物。その上でマナを必要量含んでいる物か・・・」

 「白い粉がダメで、食材もダメ。紙や石像は、作成時にマナがなくなっているし・・・」

 かなり難しいな。家に何があるだろうか。森の中に何があるだろうか。

 「あ、水はどうですか?洗濯や風呂のお湯に使うだけだから、飲水にはしませんし。ある程度マナが回収できるんじゃないですか?」

 「おお、そうだな。飲用水はユナからもらった癒やしの水があるからな。昨日汲んできた水は、全て生活用水だ。マナを回収しても問題ないだろう」

 リリティアさんの同意も得たので、早速タル2杯分の水からマナを回収した。しかし、それでも3日分の薬に十分なマナポイントは貯まらなかった。

 「少し足りませんね。諦めて一日分だけにしましょうか」

 「うーん、仕方ないか・・・いや、待て。泉の水からマナを回収できたんだから、土からも回収できるんじゃないか?」

 「行けるんじゃないでしょうか。これだけの森林を支える土壌なら、栄養は豊富そうですし」

 栄養が高いからといって、マナも豊富であるかはわからない。でも、試してみる価値はあるだろう。逆に、何で今まで思いつかなかったんだろうか。

 「家の周囲の土は整地した際に、マナが吸われてしまっているかもしれない。だから、少し離れた場所から取ってくるといいだろう。

 倉庫からシャベルを取り出して、早速土を掘り集める。集めた土は革袋の中に入れる。革袋が汚れてしまうが、まあいいだろう。魔法陣を起動してマナを回収する。

 「こんなにあるんだ。結構多いですよね」

 「思ったよりも多いな。やはり土壌の良さは影響するのだろうか。マナポイントを貯めるだけならば、土はかなり効率がいいことになるな」

 今後マナポイントを貯める際は、土を集めることも主要な方法になるだろう。しかし、先のことよりも今は、リベルさんの家に薬を届けることが優先だ。3日分の薬を交換すると、リベルさんの家へと向かった。

前回の投稿で、総合評価1,000ポイントを突破しました。読んで下さっている皆様、ブックマークや評価をして頂いた方々、本当にありがとうございます。桁が上がるというのは、1つの節目という感じでとても嬉しいです。

今後も、引き続きお楽しみ頂けると幸いです。

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