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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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十九日目・新しい靴

 朝起きてすぐに、シャールの町へと向かった。今日は朝市で買い物だ。そろそろ食材が不足してきたので、調達する必要があるためだ。のんびり山菜取りをしている時間もないから、朝市で買うしかないのだ。リベルさんたちと会ったのは一昨日なので問題ないと思うが、念の為マスクを着用した。ジュース屋のおばちゃんや野菜の屋台の店主など、顔を覚えてくれてる人たちはマスクを見て色々と聞いてきた。初めて見るものだからと興味深そうだったり、宗教的なものや呪術的なものかと問われたりした。ジュース屋のおばちゃんからは、ペアルックなのかとからかわれた。マスクを知らないと、こういった反応になっても仕方ないのかもしれない。

 買い物を終えて、女神の家に戻る。小休止をしてから、昨日の夕方に設置した転移装置へと転移する。今日も引き続き南の山へと向けて走る。

 昼休憩直前までは何事もなかったが、そろそろ休憩と思った時にリリティアさんが突然止まった。俺にも姿勢を低くするよう合図すると、左前方を指差した。その先には一頭のクマがいた。かなり遠いので大きさはわからない。幸いあちらもこっちには気づいていいないようなので、迂回して距離を取る。視界から消えるほど離れてから、再度走った。ある程度走ってから昼休憩にした。近い場所で設置してしまうと、戻ってきた時に鉢合わせするかもしれない。その心配をしなくていいと思えるくらいの距離を取っておくのは、精神衛生上大事なことだ。でないと、休憩中不安で仕方がなかっただろう。

 昼休憩を終えて、先程設置した転移装置へと転移しようとした時、足元の違和感に気づいた。

 「あー、靴に穴が開いちゃいました」

 靴底のラバーと布地部分のつなぎ目が破れたようだ。こちらの世界に転送されてから、ずっと同じスニーカーを履いていた。大学在学中に買った安物だが、とうとう寿命が来たらしい。

 「森の中をずっと走りっぱなしだからな。マナの力と癒やしの水で体の負担は軽減できても、靴への負担は減らせない。ダメになってしまっても仕方がないな」

 「でも、どうしましょうか。俺は靴、これしか持ってきてないんですよ。これで走るのは厳しいですし」

 この森に転送された際、アイリアさんが服は何着か持ってきてくれた。しかし、靴はこのスニーカーだけだったのだ。元々、運動できる靴はこのスニーカーしか持っていないから、サンダルや他の靴があっても使えなかったけど。

 「そうだな・・・まあ、なければ作ればいいんじゃないか?」

 「作ればって・・・あ、神の門ですか?衣料品もありましたもんね」

 「ああ。既製品でもいいが、折角だからオーダーメイドで作るべきだと思う。今回に限らず、未踏破の場所には徒歩で移動する以外にないからな。足にフィットする靴を履いていた方がいいだろう」

 それもそうだな。転移装置を設置するまでは、歩いて移動するしかない。まあ、実際には走ってるんだけど。

 「オーダーメイドの衣服や靴をポイント交換する際には、先に身体測定器を作成する必要がある。マナポイントで交換もできるが、金属を集めて作成することもできる」

 必要なものは、鉄、ニッケル、硫黄、錫と銅だった。幸い全て揃っているので、作成することにした。マナポイントが心もとないので、できる限り減らしたくないからだ。

 魔法陣を描いて身体測定器を作成した。魔法陣を作るのも、随分久しぶりに感じる。

 魔法陣の中に出現したものは、小さな直方体の機械とケーブルだった。機械の方は、金属でできた黒板消しのような形をしている。

 「身体測定器は、神の門の専用端末に接続して使用する。使い方は、体に向けてかざすだけだ。後は身体測定器の方が勝手に読み取ってくれる」

 「なるほど。簡単ですね」

 「読み込んだ情報は専用端末の方で管理する。オーダーメイドの欄から登録できるからやってみろ」

 専用端末を起動して、オーダーメイドの文字をタップする。設定の中に身体データ登録があった。それをタップすると、全身測定と部分測定の2つが表示された。

 「全身をまとめて測定するか、足や上半身などの一部分だけを測定するかを選べる」

 「じゃあ足だけでいいですね。作るのは靴ですし全身を測定する必要はないですね。服を作りたくなったとしても、その時には体型が変わってるかもしれませんから」

 「そうだな。必要になったらでいいだろう。一応説明しておくと、体型が変わった時のために、再測定して情報を変更することもできる。足の形はそうそう変わらないだろうがな」

 部分測定から足先を選択して、測定を開始する。測定と言っても、身体測定器を足の周りを回るようにかざすだけだ。かざす角度や位置を変えながら何周かすると、身体測定器から完了を告げる音が鳴った。データを登録して、いよいよ次は靴をマナポイントと交換だ。

 「靴選びだが、デザインはあまり派手なのは選ばないようにな。森の中で目立ち過ぎるのは良くない」

 逆にド派手にして警戒色っぽくするのもありだと思ったけど、無難に地味な深い緑色にしておこう。材質は一番安いものにして、オプションで靴全体の強度と靴底のクッション性を追加した。

 いざ交換と思ったところ、マナポイントが不足してしまった。おやつに買ったナッツ類からマナを吸収して、ギリギリ交換ポイントに足りたので交換した。

 午後は新しい靴で出発だ。こういう時は使い慣れたものの方がいいのだが、オーダーメイドなだけあって、新品でも靴ずれなどは起きなかった。

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