表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
138/188

十三日目・リベルさんを探せ②

 新型転移装置の子機を持って、ユナさんの泉とホージュの木の果樹林まで行ってきた。泉ではユナさんを呼んでみたけど応答がなかった。ひょっとしたら家の方にいるのかもと思ったが、敢えて探すことはしなかった。転移装置の話は、出会った時でいいだろう。女神の家と泉を往復して、タル2つ分の水を汲んだ。

 果樹林では適度に広い場所で子機を起動した。帰りは転移で一瞬だ。これで水汲みとホージュの実の採集が楽になった。

 水汲みが楽になったので、お風呂のお湯も毎日入れ替えてもいいかもしれない。今までは数日に一度替えるだけだったから、替えた日以外はどうしてもきれいなお湯ではなかった。何度も入浴したからというだけでなく、木の葉や土埃などがどうしても入ってしまうためだ。これからは毎日透明なお湯に浸かることができるだろう。

 そんなことを考えながらリビングに入ると、リリティアさんがソファに座っていた。

 「お帰り。ご苦労だったな」

 「ただいま戻りました。リベルさんの店が開くまでにまだ時間がありますもんね。砂糖がないからジャムやコンポートも作れませんし、山菜取りに行く時間まではないですね。確かにやることというか、やれることがあまりなさそうですね」

 「そうだな。・・・おっと、一つ言い忘れていたことがあった。子機はちゃんと固定してきたか?」

 「あっ、やってません。すっかり忘れてましたね。カタログには書いてあったのに、あまり気にしてませんでした」

 子機はこぶしほどの大きさしかない。きちんと固定しておかないと、移動してしまう恐れがある。そのため、固定するための道具が用意されている。しかし、そのことをすっかり忘れていた。新型転移装置が完成してから考えればいいと思って、先延ばしにしておいたのがいけなかったのだろう。

 「今からやってきます。固定するのはペグでいいですかね」

 「ああ、それでいいと思うぞ。町へ行くまではまだ時間がある。今から固定して帰ってきても、まだ時間的には余裕があるだろう。終わったら自由にしていていいぞ。出発する時間には呼んでやるから」

 「はい。では、行ってきます」

 神の門を用いて、急いで魔法陣を作る。作成する製品は、ペグ5本セットだ。3本余るが、5本セットが最小単位になっている。

 小型の金槌とペグを持って、泉へと走る。

 数歩走って止まり、ゆっくりと引き返す。転移装置があるんだから、それを使えばいい。それに、まだ慌てるような時間じゃない。のんびりやってもまだ時間は余るだろう。

 親機を操作して、泉まで転移する。転移して数秒後、子機が待機モードに戻る。それを確認してから、ペグで固定する。ペグを子機の穴に通して、金槌で地面に打ち付ける。ペグなんて生まれて初めて使ったかもしれない。テントの設営なんてやったことはなかったからだ。漫画で主人公たちがテントを建てているのを読んで、名前くらいは辛うじて知っていた程度だった。

 何度か引っ張ってみて、ペグが容易に抜けないことを確認する。よし、これでいいか。次は果樹林の方だな。

 泉の子機→親機、親機→果樹林の子機と転移を繰り返して、果樹林へとたどり着いた。子機同士の転移ができないから、こういう移動は少々手間だな。それと、固定した子機を起動させるのに、しゃがみこんで操作しなければいけない。疲れてる時や荷物が多い時は、少々億劫に感じそうだ。

 果樹林の子機もペグで固定して、女神の家まで帰ってきた。

 さて、これでひとまずやることは終わったな。後は出発の時間まで、自由にしていいと言われている。特にすることもないから、この時間を利用して剣の素振りをすることにしよう。

 ウォークインクローゼットから長剣を取り出すと、家の外に出た。適当に構えて、まっすぐ縦に振る。

 「うっ・・・やっぱり重い」

 持っているだけでも重いと感じていた長剣だ。実際に振ってみると、やはり重さに自分が振り回された。そもそも、剣道を体育で数回やった程度の素人剣法だ。まともに振れるわけがない。

 それでも、練習しないよりはマシだろう。新型転移装置が完成した以上、今後は家から離れた場所、つまりヌシの縄張りの外に赴くことが多くなるはずだ。先日のクマのように、猛獣に出会う可能性もあるだろう。その時、身を守れる手段が必要だ。最低でも、リリティアさんと自分が生きて帰れるようにしなければならない。この重いだけで切れ味が悪そうな長剣に、二人の生命を託すのは不安だが、頼れるものはこれしかない。少しでもこの長剣を上手に扱えるようにしないとダメだ。

 「だから、まずはきちんと面が打てるようになろう」

 体育の記憶を頭の片隅から引っ張り出して、面打ちの練習を続ける。本当は指導者がいればいいのだが、剣道の先生なんてこの場にはいない。自力で色々やってみるしかないだろう。

 素振りに慣れてきたら、マナの力も連動させて長剣を振ってみる。

 「よし、今までよりはずっとマシになった」

 腕のフリとマナの力を連動させる、そのことに意識して素振りを繰り返す。

 こうして俺は、リリティアさんが呼びに来るまで、剣の素振りを続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ