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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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十三日目・リベルさんを探せ①

 「こんなに朝早くからやらなくてもいいと思うが・・・昨日の夜も、夕食後にジャム作りをしていただろう?」

 「ええ、まあ。それで本当に砂糖を使い切ってしまいましたけど」

 「それは別に構わないが・・・夜遅くまで仕事をしていたんだから、朝はもっとのんびりしていてもいいんだぞ?」

 「と言っても、他にやることもありませんしね。別に疲れるようなことでもありませんし。それとやっぱり、早く実際に使ってみたいじゃないですか」

 昨日ようやく完成した新型転移装置、せっかくだからそれを早く使ってみたかった。それで朝食を食べてすぐ、子機の作成に取り掛かったのだ。必要な金属である鉄とスズ、鉛を用意して、親機のすぐ側に魔法陣を作った。親機は前の転移装置と並べて置いてある。

 魔法陣は親機に比べれば随分と簡素で描きやすかった。個数指定ができるため、2つ作ることにした。ユナさんの泉と、ホージュの木の果樹林に設置するためだ。まとめて大量に作ってしまってもよかったのだが、念の為に必要な分だけにしておいた。鉄などの金属が突発的に必要となった時、子機を作ってしまったために不足するという状況を避けるためだ。シャールの町への転移装置も、しばらくはそのまま使うことにした。

 「では、起動しますね。3、2、1、スイッチオン」

 何のスイッチも点けないけど、その場の勢いだ。起動時の発光が眩しいので、起動する時には必ず確認することにしている。

 「この光はいつも思うんですが、すごく眩しいですね。どうにかならないんですかね」

 「ああ、どうにもならないらしいぞ。魔法の粉の特性上、どうしても発光してしまうらしい。実際に眩しすぎる、目に悪いんじゃないか、というクレームもあったようだ。しかし、この光は少々特殊な光線らしく、直視しても視力低下が起こったりはしないという調査結果が出たんだ。それで販売停止等の措置には至らなかったと聞いている」

 目に悪影響がないとはいっても、眩しいことには変わりない。発光自体が止められないなら仕方ないけど、直視しないようにはしよう。

 魔法陣を確認すると、こぶし大の金属塊が2つ転がっていた。これが昨日説明された、待機モード状態なんだろう。

 「よし、子機の作成が終わったな。では早速親機とリンクさせてしまおう。子機を見てみろ、ボタンがついているはずだ」

 金属塊の1つを拾い上げると、ボタンとスイッチのようなものが1つずつあった。そして、端に1つ小さな穴が開いている。特徴的なのはそれくらいで、後は何もないシンプルな作りだ。

 「確認したな?では、次に親機の方だ。ディスプレイを操作して、『子機とリンクする』を選ぶ」

 説明をしながら、リリティアさんは自分で操作した。「設定」から「子機とリンクする」を選ぶだけの操作だから、覚えるというほどのことでもない。

 「このように画面が変わったら子機のボタンを押す・・・そうだ、そうやって押し続けていると・・・お、出たな。このように『リンクが完了しました』というメッセージが表示されたら終了だ。簡単だろう?」

 「そうですね。覚えることが少ないのは助かります。もし忘れてても、ガイドが出るのでそれに従えばできるってのがいいですね」

 子機とリンクする際に、ディスプレイ上に「子機のボタンを押して下さい」という表示が出る。もし操作方法を忘れてしまっても、転移装置が教えてくれるので問題なさそうだ。

 そして、残った1つも同じようにリンクさせた。これで子機2つは使えるようになった。

 「では一度使ってみるか。ボタンの横にあるスイッチを入れてから、ボタンを押してみろ」

 スイッチをスライドさせて、ボタンを押す。すると、子機が変形して広がった。高さは大体180cmくらい、横幅は人が二人が入るにはやや狭いくらいか。表面は鏡のように平面で、俺の体をほんのりと映している。

 試しに子機の中に入ってみると、無事、親機の方から出てきた。わかってはいたことだが、正常に作動することが確認できて嬉しい。子機の方を見てみると、こぶし大の大きさに戻っていた。

 「子機にあるスイッチは安全装置だ。ボタンだけだと何かの弾みで起動してしまう場合があるから、それを防止する役割だ。不慮の事故を防ぐためにも、スイッチを入れるのは使う時だけということを徹底しろ」

 「わかりました。・・・あ、でも、使用した後にスイッチを切るのは不可能ですよね?親機の方に転移しちゃってるんですから」

 「お、よく気がついたな。だが、それは問題ない。待機モードに戻る際に、必ず安全装置がかかった状態になるからだ」

 子機を拾い上げて確認すると、リリティアさんの言う通りスイッチは入っていなかった。

 「次は親機から子機へと転移する場合だな。ディスプレイにある『転移する』という文字をタップすると、リンクされている子機の一覧が表示される。転移したい子機をタップして『決定』を押す。すると、親機と子機が起動する」

 リリティアさんが「決定」を押すと、子機がさっきみたいに変形した。親機の方を確認すると、真ん中が薄く発光していた。光っている範囲は、子機の大きさと同じくらいだ。

 その発光している部分にリリティアさんが入ると、子機から出てきた。その数秒後に子機は再び待機モードに戻り、親機は発光が止んだ。

 「使い方はこれくらいだな。後は子機を必要な場所に設置するだけだが、こればっかりは実際にその場まで持っていかなければいけない」

 「それくらいは問題ないですよ。今までと違ってタルを担いで行かなくていいんですから。子機だけ持って、今からサクッと行ってきますよ」

 この転移装置さえあれば、タルいっぱいに汲んだ水を、20分以上かけて運ぶ必要はなくなる。ユナさんの手を煩わせる必要もない。それを考えれば、手ぶらに近い状態で泉まで行くだけのことを面倒だとは感じない。足取りも軽く、颯爽としゅっぱ―――

 「子機だけじゃなくて地図も持っていけ。迷うと帰ってこれなくなるぞ」

 ・・・出鼻をくじかれてしまった。

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