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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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十二日目・神の門活用法⑥

 「それでは、起動します」

 「ああ。いよいよだな。もう日が暮れてしまったが、今日中に完成できて良かった」

 新型転移装置を作成するための魔法陣を描き上げ、今まさにこの魔法陣を起動させるところだ。リリティアさんの言う通り、すでに日が落ちてしまっている。リリティアさんは明日にしようかと言っていたが、後少しだから完成させたいと伝えた。そして、ひかる君3号で魔法陣の図面を確認しながら、慌てて魔法陣を完成させた。

 置物を置いて起動する。眩しい光に目をやられる前に、すぐに目をつむった。

 薄目を開けて光が収まったことを確認して、魔法陣へと目を向けた。そこには、門のようなものが立っていた。以前の転移装置を、大型かつ豪華にしたような見た目だ。一番特徴的な部分は、右側にディスプレイが付いていることだろうか。

 「これが、最新型の転移装置ですね。以前のものと比べると、随分と立派ですね」

 「そうだな。フレームや背面にも装飾が施されて豪奢になっているのも、一つの特色だろう。転移装置の親機として、多くの者に利用されることが想定されている。一般客だけではなく、店舗が設置することも考えて開発されたらしい。だから、外観にも拘ってデザインされているのだろう」

 「森の中では、ちょっと豪華すぎて違和感がありますけどね」

 そう言うと、リリティアさんも笑って同意した。

 「カタログを読んでわかっているとは思うが、一応確認のために教えておこう。今回作ったのは最新型転移装置の親機だ。この親機に、子機をリンクさせなければ何の役にも立たない」

 これはカタログの説明に書いてあった通りだ。写真に被せて、『子機がなければ一切機能しません』とわざわざ書いてあったのが印象的だった。

 「子機とのリンクはこのディスプレイを使って行う。が、今は子機を作成していないので、やってみせることはできないな。まあ、表示されている文章を読みながら操作すれば、わからないということはないだろう。説明や困った時のヘルプも内蔵されているしな。勿論、私に聞いてもらっても構わないが」

 「カタログにはディスプレイの使い方は書かれてませんでしたね。使用方法の詳細は製品に内蔵されていますってだけでした。でも、こういうのは触って覚えるものですから。まずは自力でやってみますよ」

 「次に子機に関してだが、複数リンクすることができる。複数箇所への転移が可能であることが、昔の製品と大きく異なる点だ。それを考えれば、複数の子機とのリンクは当然のことだがな」

 この転移装置を作成した理由の一つが、複数箇所への転移ができることだ。これができなければ、作成した意味の半分がなくなってしまう。

 「複数の子機が設定されている場合、ディスプレイにて転移先となる子機を指定する。子機には各々に名称を付けることができるので、設置場所がわかるような名称を付けておくといいだろう。そして、ここが一番気を付けなければならないポイントだが、子機と子機との間では―――」

 「転移することができない。子機からは親機への転移のみが可能となる。ですね?」

 「そうだ。やはりきちんと説明を読んでいたようだな」

 「やっぱり新しい転移装置は楽しみだったので。カタログは何度か読み返しました」

 やることなく娯楽もない夜には、カタログを読んで使うことを想像するくらいしか楽しみがない。だから、カタログページは何度か目を通している。記憶に残っているかは別だけど。

 「それならば説明は不要だったかもしれないな。だが、記憶違いや見落としがあるかもしれないから続けよう。それに、私が記憶違いをしてるかもしれないからな。カタログの説明文と違う部分があれば、その時は言ってくれ」

 リリティアさんがこう言うことは時々あるけど、今まで違っていたことってないんだよな。

 「子機は起動すれば、その時点で親機とつながっている。起動するまでは、小さくなり待機モードになっている。重量もそれほどなく、同じ大きさの石くらいだろう」

 この、小さくなっていることが、新型転移装置作成のもう一つの理由だ。握りこぶし程度の大きさになるため、持ち運びが簡単なのだ。シャールの町へと転移装置を運んだ時みたいに、大変な思いをして担がなくてもいい。何しろ、こぶし大の石を持つのと変わらないんだから、持ち運びはとても簡単だ。

 「待機モード中はエネルギー消費が少なくなる。起動中は逆にエネルギーを消費する。これは転移境界面を維持する以上、必要なエネルギー消費だな。しかし、親機と接続している起動中に、エネルギーの充填も同時に行っている。待機モード中に消費するエネルギーは、この時に充填したエネルギーで賄われているんだ」

 「となると、長期間使用しなかった子機は、エネルギー切れを起こして使用不可能になることもあるんですか?」

 「いい所に気がついたな。だが、それにはきちんと対策が取られている。親機側が子機との接続時間を記録しているんだ。一定期間接続がない子機に対して、エネルギーを充填するための接続を自動で行う。この機能は充填接続と呼ばれ、転移境界面がごく僅かなことが特徴だ」

 エネルギー切れを起こさないように、勝手に補給してくれるのは便利だな。メンテナンスに気を付けなくていいんだから。

 「だから、使用者側が気をつけることは、親機のエネルギー切れだけだな。その他の異常も、親機の自己チェック機能で見つけてくれる。修理が必要ならば、神の門から修理の依頼ができるから、それで修理ができる。勿論、修理に必要な金属やマナは必要だが」

 「何でもやってくれて助かりますね。ただでさえ原理のわからない機械なんで、指示に従っていればいいのは助かります」

 「ちなみに、エネルギーはマナだ。付属のマナパックにマナを注入すればいい。だが、最初から入っているマナで当面の間は使用できるから、しばらくの間は気にしなくていいぞ」

 「当面の間というのは、どれくらいですか?」

 「使用頻度にもよるので一概には言えないのだが、150・・・いや、100日程度だろう」

 「わかりました。結構長い期間大丈夫なんですね」

 それはありがたい。マナを注入する方法が、今のところ俺にはない。神の門で作成できるようだが、それを作るまでの猶予が必要だ。100日もあれば、多分大丈夫だろう。それに、一時的に使用不可になったところで、今と同じ状況になるだけだ。

 「これで必要な部分は概ね説明し終わったな。日も暮れたので、今日はもう終わりにしよう。まだ子機の作成が残ってはいるが、明日の朝でいいだろう。夕食は私が作るから、お前はお風呂の用意でもしていてくれ」

 「わかりました。リリティアさんのご飯は美味しいので楽しみです」

 何日もかかったけど、新型転移装置がようやく完成した。瞬きはじめた星達を見上げながら、俺は軽くガッツポーズをした。

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