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森林開拓日誌  作者: tanuki
猫目石
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十二日目・神の門活用法②

 「それで、俺たちはなんでホージュの実を収穫してるんですか?」

 プラチナを確実に入手する方法を試すと言われた後、リリティアさんに促されるままホージュの実が生る果樹林に向かった。背負い籠を持っていくように言われ、リリティアさんも担いでいるので大量に採るつもりのようだ。

 「プラチナを確実に入手する方法があると言ったな。それには神の門のポイント交換を利用する必要がある。ホージュの実を収穫するのは、交換に必要なマナを貯めるためだ」

 神の門を利用してプラチナが手に入るというのは、どういうことだろう。マナポイントの説明には、金属との交換ができるとは書いていなかったはずだけど。

 「プラチナは様々な精密機器に利用されている。電子機器をマナポイントで交換し、金属元素分離測定器で分離する。そうすればプラチナを取り出すことができるだろう。そのために、まずマナポイントを貯める必要がある」

 「なるほど。それで、ホージュの実なんですね」

 種子や果実には多くのマナが含まれると、以前にリリティアさんが言っていた。それに、この辺りで豊富に採れる。マナを集めるのであれば、ホージュの実が最適だろう。

 「明日もリベルの店に行くだろう?ジャムやコンポートなら、ジュース屋が買ってくれる。今日あの店に行っていないから、明日行くのは問題ないだろう」

 「そうですね。マナを貯めるから、販売用になりますね」

 ホージュの実からマナを吸収して、マナポイントを貯める。当然、ホージュの実にはマナがなくなる。マナの補充が必要な俺やリリティアさんにとって、食事はできるだけマナが含まれるものが好ましい。

 「気になったんですが、町の人たちは神の門でマナ回収を行った食べ物を食べても問題ないんですか?」

 「この世界の人間たちは、マナを使用していない。だから、食事に含まれているマナは溢れて、日々体外に排出している状態のはずだ。マナの含まれない食事になった所で、この排出が止まるだけで何も問題はないだろう。そもそも、マナ自体は枯渇しても身体に悪影響はないからな」

 「神の門で吸収する過程でも、何も問題はないんですか?」

 異世界に転送して、食材に含まれるものを吸収する。その過程で人体に影響があるものが付着したり、食材が化学変化を起こして有毒化することはないんだろうか。

 「その心配をしているのか。それも問題ない。転送境界面はその性質上、付着物などが発生することはない。マナを吸収する装置に関しても、毎回クリーニングが行われるから、常に清潔な状態が保たれている」

 「吸収する際に、食材が悪くなったりしないんですか?」

 「それに関しては、過去に懸念の声が上がったらしい。原理的にはマナ以外には何の変化ももたらさないと、研究結果で判明しているにも関わらずな。しかし、そういう多数の意見を無視することもできず、1000回以上のサンプル実験を行ったそうだ。その結果、問題は発生せず安全性が実証された。マナポイントに関わるサービスの開始には、そういった経緯がある。だが、それだけやってもまだ、懸念があるという声をあげる者もいるがな」

 科学的な実証や統計データを示した上で安全性を説明しても、それに一切耳を傾けない人たちは一定数いるからなぁ。逆に、何の理論も統計データもないのに、有害だから禁止すべきだと言われる場合もある。神様たちの中にも、そんな人間と同じことを言っている神様がいるというのは驚きだけど。

 「なるほど。それなら大丈夫ですね」

 「安心したか?」

 「はい。口に入れるものを売る以上、安全かどうか気になりまして。そもそも、リリティアさんが勧めたんだから、危険なわけなかったですね」

 食の安全に関わることだとはいえ、リリティアさんを疑うようなことを言ってしまったな。

 「いや、疑問を解消することはいいことだ。それに、私も間違えたり失念したりすることはある。気になったことは、今回のように、その都度確認して欲しい」

 疑問といえばもう一つある。リリティアさんは今、ホージュの実の採集にあたって動きやすい服装をしていいる。シャツとホットパンツ、ニーソックスという格好だ。この服装は、小さな球にして持ち歩くことができるらしい。では、洗濯はどうしているのだろうか。服の状態で洗うのか、小さな球の状態で洗えるのか。

 そう考えると更に疑問が湧いた。下着はどうなんだろうか。服装はセットが3つあると言っていた。セットの中に、下着が含まれているのだろうか。3つのセットの中の、まだ見ていない一つのセットが下着なのだろうか。それとも、ひょっとすると履いていないのかもしれない。

 木の枝に乗っているリリティアさんの、ホットパンツの裾に目が行ってしまう。気付かれないように気を付けながら、チラチラと盗み見る。もちろん、見えるわけはないのだが。

 「あ、すまん」

 ホージュの実が落ちてきて、ひたいに当たった。

 「手が滑って落としてしまった。大丈夫だったか?」

 「大丈夫です。ついでに、ホージュの実も無事です」

 リリティアさんはああ言っていたけれど、この疑問は解消しない方がいいのだろう。世の中には、聞いてはいけない疑問もきっとある。

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